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地方から世界へ「ワールドリーダーズセミナー」~長岡市の若者育成にJICAが協力~

2024.08.19

 7月25日、(公財)長岡市国際交流協会が主催する2024年度「ワールド・リーダーズ・セミナー」(全3回)の第1回セミナーがJICAとの連携のもと実施されました。(第2回は8月21日、第3回は8月22日に開催)
 今年度は男女共同参画を推進する「ウィルながおか」とのコラボ企画で、「ジェンダー」がテーマです。参加対象は長岡市に在住または通学する中高生で、世界を舞台に活躍する新潟・長岡市に所縁のある講師達の経験談や東京への日帰り研修を通して、将来の夢や職業について考えるきっかけづくりを提供します。
 第1回セミナーには、JICA東京の湯浅あゆ美次長が登壇しました。内閣府男女共同参画局での業務経験もあり、直近はOECD局次長として世界で活躍し、現在はJICAで管理職を務める湯浅次長に、国際交流協会から熱い依頼があり実現しました。第2回に登壇の田中彩恵さんは、JICA海外協力隊として現在メキシコでジェンダー開発支援に従事しています。田中さんは高校時代に、このワールド・リーダーズ・セミナーに参加したOGです。

イベントチラシ

7月25日の「ワールド・リーダーズ・セミナー」

 第1回セミナー当日は、中高生12名がミライエ長岡のスタジオに集まりました。
 登壇者の長岡市国際交流センター地球広場センター長の羽賀友信さんは、JICAと長岡市のつながりについて語り、「日本の常識は世界では全く通用しないため、まずはどの国でも良いので他国を体験し、論拠を立てて話せるようになろう」と学生達を鼓舞しました。
 湯浅次長は、「今はOECDやJICAなど国際協力機関で働いてはいるが、決して特別な家庭に育ったわけではなく、19才まで飛行機に乗ったこともない。誰でも思いがあれば世界で働ける」と話し、JICAやOECDがどのような組織なのか、中学生でも分かるように丁寧に説明されました。今回のテーマであるジェンダーについては、世界の国々での考え方、日本のジェンダーとの違い、特徴などについて語りました。羽賀さん同様、日本の常識が世界と違うことについて触れ、「海外に出ても良いし、国内にいる外国人との交流でも良いので、なるべく早く世界に触れてほしい。若い皆さんの力で日本をより良いものに変えてほしい」と締めくくりました。

JICA東京 湯浅あゆ美次長の講演

長岡市国際交流センター地球広場 センター長 羽賀 友信さんの講演

質問タイムの様子

国際交流センター「地球広場」と「地球ひろば」

 長岡市とJICAの関係は長く、2001年に長岡市民センターに設立された国際交流センター「地球広場」は、JICA「地球ひろば」が開設(2006年)される際に参考とされた施設です。
 当時から「長岡発地球行き」という言葉が使われています。長岡市という一地方が直接世界とつながろうという意味で、グローカルという言葉が流行る前の話です。長岡市は当時から、少子高齢化による高度人材獲得競争を予測し、外国人材を受け入れるまちづくりを進めてきました。20年以上前に撒いてきた種が、今になって芽吹き始めたと感じています。

国際交流センター「地球広場」で開催された昨年度のワールドリーダーズセミナー(2023年11月23日)

長岡市の草の根技術協力事業

 長岡市の地方創生の鍵は世界とつながることです。自治体だけで世界とつながるのは難しいですが、JICAの海外ネットワークを活用すれば、そのハードルはかなり下がります。
 例えば、長岡市ではこの5月から3年間、JICAの草の根技術協力事業で、モンゴル高専の高度技能人材を新潟県内の企業でインターンシップとして受け入れるプロジェクトを開始しました。プロジェクト実施の対象となるのは、1998年に長岡技術科学大学(以下、長岡技科大) を卒業したモンゴル人留学生のロブサンニャム・ガントゥムル氏が、帰国後にモンゴル教育科学大臣となり、2013年に日本の高専システムを取り入れて創設した3つの高専です。高専の学生達は日本語ができるエンジニアとして育ち、日本とモンゴルをつなぐ人材として来日することになりました。
 長岡市がJICAと協力することで、長岡がモンゴルという国とつながることができたのです。

モンゴル高専訪問時の様子(2022年10月8日)

モンゴル高専生インターンシップ受け入れのオープニングレセプション(2023年3月2日)

長岡市の防災と地方創生の取り組み

 長岡市は戊辰戦争、第二次世界大戦、中越地震と、140年ほどの間に3度の戦災・災害から復興しました。とりわけ2004年の中越地震をきっかけに、「中越防災安全推進機構」を創り、防災インフラを整え市民主体で防災に取り組んでいる、世界的にも珍しい地方都市です。戦災や自然災害で苦しんでいる国は多く、JICAの研修生達も防災を学ぶために、よく長岡市を訪れています。
 また、中越地震時に活躍した「地域復興支援員」が地域おこし協力隊のモデルとなっており、現在の地方創生に一役買っています。最近では地方創生に向け、地域おこし協力隊とJICA海外協力隊をつなげる取り組みも試験的に始まっており、ここでもJICAと長岡市が協働することになりそうです。
 今後も、これまで以上に長岡市とJICAが協力して地方創生を実現できることを期待しています。今回のワールド・リーダーズ・セミナーに参加した中高生が、将来の「長岡発地球行き」の担い手となり、長岡の地方創生に貢献する日が来ることを願っています。
報告者: JICA長岡デスク 国際協力推進員 原 洋介

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