日本の最先端技術を自国のエネルギー政策立案に活かす!「エネルギー政策研修」
2024.11.25
開発途上国では、人口増や経済の急成長に伴うエネルギー需要の増大が見込まれており、エネルギーの安定供給が重要な課題となっています。また同時に、地球環境にも配慮し、低・脱炭素化の視点を取り入れたエネルギー政策の立案も求められています。JICAでは、開発途上国がこれらを両立し、持続可能な成長を実現するためのエネルギー政策を立案・実行することを支援しています。
同支援の一環として、今般、13の開発途上国から、14名のエネルギー政策の立案を担う研修員を日本に招聘し、一般財団法人日本エネルギー経済研究所のご協力のもと、約1カ月の「エネルギー政策」に関する研修を実施しました。
この研修では、脱炭素化実現のカギを握る技術として注目される水素・燃料電池関連技術についても取り上げました。同技術については、座学だけではなく、講義で学んだ知識をより深く理解するために、この分野における日本最先端の研究拠点がある山梨県を訪問し、研修員に日本の脱炭素化社会に向けた取組みや最先端技術に触れてもらいましたので、本記事では、その様子を詳しくご紹介したいと思います。
研修員が滞在するJICA東京センターから山梨県へは、早朝からバスで向かいました。日帰りで水素を作る技術とその水素を使った燃料電池の技術の視察を行ったため、忙しい1日となりました。
最初の視察地である電力貯蔵技術研究サイトが立地する米倉山が近づくと、車窓から見える自然豊かな風景の中に太陽光パネル群が現れ、研修員の期待も高まりました。電力貯蔵技術研究サイトでは、南アルプスで採水された美味しい天然水をごちそうになりながら、その豊かな水資源がいかに活用されているのか、思いを巡らせました。
同サイトでは、山梨県企業局の吉田さんから、まずはじめに太陽光パネルで作られた再生可能エネルギー電力を使って水素を製造する水電解装置、その水素を貯蔵・利用するシステム(P2Gシステム)、さらには同システムの導入事例などについて説明いただきました。その後、実際に水電解装置(水を電気分解して水素を作る装置)を見学しながらその仕組みについて説明を受けました。当日は天気にも恵まれ気温が36℃を超えるなか、研修員は汗をふきながら熱心に見学していました。
吉田さんの説明に熱心に耳を傾ける研修員。「3日くらい滞在し、もっと勉強したかった!」との声もありました。
ご対応いただいた吉田さんと!:前列左端が吉田さん。
◆関連リンク
・山梨県企業局
・やまなしハイドロジェンカンパニー(同社は、山梨県企業局、東京電力ホールディングス(株)、東レ(株)のP2G事業の合弁会社)
米倉山での視察を終えた研修員一行は、近くのイオンモールのフードコートで各自昼食を取り(初めて見る「たこ焼き」に挑戦した研修員も!)、次の訪問先である山梨大学水素・燃料電池ナノ材料研究センターへ向かいました。同センターでは、暑い中、飯山センター長、吉積特任教授をはじめとした職員の皆様が温かく出迎えてくださいました。
燃料電池分野の最先端の研究を行っている水素・燃料電池ナノ材料研究センターでは、センターの燃料電池研究の歴史、電池の発電効率を上げるために開発されたナノ材料や、巨大な電子顕微鏡などの最新設備について説明を受けるとともに、実際に研究施設を見学させていただきました。研究者の皆さんが作業をされている所にお邪魔して、燃料電池を手に取って間近に眺めてみたり、重さに驚いたりと、研修員も学生に戻ったような気持ちで先生から説明を受けていました。
研究施設見学時の様子。「触っても良いんですか?!」と興奮気味の研修員。
ご対応いただいた飯山先生、吉積先生と!:後列左から7人目が飯山先生、3人目が吉積先生。
◆関連リンク…山梨大学水素・燃料電池ナノ材料研究センター
視察の終了後には、研修員同士でのディスカッションを行い、視察によって得られた知識、自国での活用の可否、導入にあたって考慮すべき事項などについて振り返りました。研修員からは以下のような感想がありました。
〇最新技術を実際に見る事ができ勉強になった。すぐに自国で取り入れられるものばかりではないが、知識を得られたことが大変重要である。(パプアニューギニア研修員)
〇新しい技術の研究開発の重要性、また、政府がそれらの活動を金銭的投資などを通じて支援することの必要性を認識した。(ヨルダン、ラオス、タンザニア研修員)
〇政府だけで取り組むのではなく、民間セクターを巻き込んでいく事も必要であると感じた。(タンザニア研修員)
〇エネルギー源の多様化、またそれらをバランスよく組み合わせるエネルギーミックスの実現が重要であると認識した。(南アフリカ研修員)
〇これまで書籍や記事でしか読んだことが無かった技術について、実際に見る事ができたのが大変勉強になった。(ブラジル研修員)
研修員は帰国後、各自が抱えるエネルギー分野の課題に取り組むこととなっています。日本で得た知見を活かして、素晴らしいエネルギー政策を立案してくれることを期待しています!
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