絵本の力で子ども達の未来を切り拓こう~シャンティ国際ボランティア会によるラオス少数民族児童への学習支援事業~
2024.12.11
本事業の対象地・ラオス北部のルアンパバーン県中心部からの風景
国土の約40%が山岳地域のラオス。そんなラオスでは、実に50以上の少数民族が暮らしており、人口の約半分を構成しています。ラオスの公用語は「ラオス語」ですが、少数民族の人々は彼ら独自の言語を持ち、家庭ではほとんどラオス語を使用しない生活を送っています。一方で、学校での教育は一律ラオス語で行われることから、初めてラオス語に触れる少数民族の子ども達にとって、いきなりラオス語の授業で学ばなければいけない環境は非常に困難と言えます。その結果、期待される学習達成度には到達できず、留年や退学をしてしまうケースが後を絶ちません。このように、少数民族が特に多く住む山岳地域の学校では、少数民族の子ども達の将来に影響を及ぼす深刻な問題に直面しています。
へき地山岳地域における学校教室での子ども達の様子
山岳地域の山あいの村
このようなラオス山岳地域における少数民族の子ども達を取り巻く学習課題を解決するため、2024年6月から、シャンティ国際ボランティア会(以下、シャンティ)による草の根事業が開始されました。本事業の対象地は、ラオス北部のルアンパバーン県ムンゴイ郡とポンサイ郡。この2つの郡にある合計22の小学校を対象に、ラオス語が苦手な少数民族の子ども達が学校で楽しく学び、学習を継続出来る環境整備に取り組みます。少数民族の子ども達がラオス語を習得し、小学校、そしてその先にある中学校などへ進学することが出来るようになることで、将来の職業選択の幅が広がり、より多くの活躍の機会を持つことが出来るようなるのです。そしてこのことは同時に、貧困から抜け出すきっかけにも繋がります。
経済成長とともに初等教育へのアクセスも改善されてきたラオス。本事業では、まさにそんなラオス国内で取り残されている少数民族の子ども達にフォーカスし、彼らを取り巻く「教育の質」を高める活動を展開します。
少数民族の子ども達の様子
児童数が少ないへき地山岳地域の学校では、教室や教員不足により、 複式学級も取り入れられています。
◆シャンティ国際ボランティア会:公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA) | アジアの子どもに教育を。本を通じて世界が拓ける
◆ラオスでの活動レポートはこちらから:ラオス | 公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA)
◆本事業の案件概要はこちらから: lao_31_p_re.pdf
、 lao_31_p.pdf
本事業では、子ども達が楽しみながらラオス語に触れることが出来るよう、「絵本」を通じた読書推進活動が計画されています。事業開始から約半年ほどが経過した2024年11月中旬、シャンティは各小学校に図書館を設置するためのワークショップを実施しました。本事業対象地となる村の村長さんと学校の先生たちに集まってもらい、図書室を設置することの大切さを理解し、図書室運営に必要なノウハウ・知識を学ぶ機会となりました。
参加者同士で絵本の読み聞かせを練習している様子
そして、今回のワークショップでは、本事業のカウンターパートである郡教育スポーツ局職員にもトレーナーを担って頂きました。彼らは、事前にシャンティの職員からトレーニングを受け、着々と準備を進めてきてくれていました。ワークショップ当日は、資料をそのまま読むのではなく、自らの経験やその村の事情をうまく取り入れ、ジェスチャー等を用いながら伝えてくれたことで、当日は熱のこもった講義が展開されました。
今回のワークショップのトレーナーを務めてくれた郡教育スポーツ局の職員
今回のワークショップのトレーナーを務めてくれた郡教育スポーツ局の職員
もちろん、ワークショップに参加した村長や学校の先生たちも皆、一生懸命取り組みました。学校の図書室や図書コーナーの設置に必要な作業を、実際に手を動かしながら学んでくれました。その中では、図書の整理・管理方法や図書貸出カードの作り方といった実践に加え、絵本の読み聞かせトレーニングにも挑戦。抑揚をつけて読んだり、登場人物になりきって読むなど、先生たちの豊かな表現力で会場は大盛り上がり。児童役を務めた参加者からも笑いが溢れるワークショップとなりました。ワークショップ後には、参加した先生と村長が「村に戻ったら、絵本の読み聞かせに取り組んでいきたい」と話してくれ、充実したワークショップとなったことが伝わってきました。
図書管理台帳の作成方法なども学びました。
絵本の読み聞かせを披露してくれた先生
絵本の読み聞かせを披露してくれた先生
本事業のプロジェクトマネージャー・喜納 昌貴(きな まさたか)さんは次のように話します。
『今回のワークショップは、郡教育スポーツ局の職員や先生の皆さん、村長、そしてシャンティの職員の頑張りと積極的な参加により大変実りのあるものとなったと感じます。今後は、各学校において先生方と村長を中心に、図書室または図書コーナーを設置・運営しながら、読書推進活動を実施していく予定です。このワークショップでの学びを活かして、各学校でそれぞれどのような活動が展開されていくのか今からとても楽しみです。』
プロジェクトマネージャー・喜納さんとラオスの子ども達
学校の先生とコミュニティが一体となり、少数民族の子ども達のラオス語学習をサポートしていけるよう、シャンティは本事業に取り組んでいきます。今後の展開に是非ご注目ください!
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