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ジャパンクオリティーで世界の人々の健康に貢献

2025.01.27

みなさんの 二の腕にあるぽつぽつは何の予防接種の痕だったか 覚えていますか?
正解はBCGワクチンの痕です。日本では、生後1歳になるまでに結核予防のためのBCGワクチンを接種することが推奨されています。

東京都清瀬市には、世界へ向けてBCGワクチンを輸出し、結核制圧に大きく貢献している日本BCG研究所 日本ビーシージー製造株式会社 清瀬工場(以下、日本BCG研究所)があります。

JICA は日本の持つ優位性と経験を活かし、世界各国で検査・研究拠点の整備や専門人材の育成に取り組んでいます。その一つとして、課題別研修「健康危機における結核制圧と薬剤耐性のための最新診断」で5名が来日し、結核対策を学んでいます。研修の一部として、 日本BCG研究所 を訪問しました。

健康危機への備えを学ぶため、2024年度の来日研修実施

この研修は、新型コロナウイルス感染症による世界的な健康危機の経験を踏まえ、結核菌検査に習熟するだけでなく、検査室のマネジメント能力を強化することで、より強靭な保健システムの構築に貢献することを目指しています。患者発生時の接触者調査や、耐性結核をはじめとする薬剤耐性(AMR)、遺伝子によるAMRにも応用できる次世代シークエンサーについても学びます。

今年度は7週間の日程で5名が来日し、公益財団法人結核予防会結核研究所で研修を受けました。参加者はエリトリア、マリ、タイ、マーシャル諸島で結核対策に従事する医師、看護師、臨床検査技師等です。

開講式には清瀬市副市長もご出席され、研修員へ歓迎のお言葉を頂きました。

なぜ世界と日本ではBCG接種のタイミングや方法が違うの?

赤ちゃんが結核にかかると重症化しやすいため、日本では生後1歳になるまでに結核予防のためのBCGワクチンを受けることになっており、生後5ヵ月から8ヵ月になるまでに1回接種することが推奨されています。

一方、研修員の国々を含む結核高蔓延国では、生後すぐに接種するケースが多く、スタンプ方式ではなく、皮内注射をするなど、接種方法も異なります。

なぜ接種のタイミングや方法が違うのでしょうか?
ワクチンで病気に対する免疫を高めるためには、赤ちゃん自身の免疫システムができあがりはじめる生後6か月以降に接種することが理想です。しかし、医療施設までのアクセスが難しい開発途上国の農村部では、産後自宅へ戻った後、再度医療施設まで来るのが大変なこともあり、生まれた日に接種するのが一番効率的であることが1つの理由と考えられます。

WHOは新生児にできるだけ早い時期にBCG接種を行うよう勧告しており、多くの国はこれに基づいてBCG接種ポリシーを策定しています。

写真提供:高橋智史 /JICA

初めてみるBCGワクチンの製造現場

ほどんどの研修員の国では、海外で製造されたワクチンを輸入しており、自国での製造は行っていません。BCGワクチンがどのように製造されているのか、精度管理がどのようになされているのか、また、研修員は結核菌の培養方法についても学ぶため、菌の性質を保持したまま継代培養する方法を学ぶことも目的として、日本BCG研究所を訪問しました。

日本BCG研究所は、1962年からユニセフ等の国際機関を通じて世界50ヶ国以上にBCGワクチンを届け、世界の人々の健康に寄与してきた会社です。どのようにワクチンを製造しているのかを写真と共にご説明頂いた後、工場の見学をしました。

研修員からは「EQA(外部精度評価)をどのように行っているのか」や、「自国には日本のBCGワクチンが届いていないが、UNICEFを通じて輸出される国はどのように決まるのか?」といった質問がありました。

本研修の中では、日本がかつて達成してきた年10%の結核罹患率の減少経験や、栄研化学株式社のLAMP法を使った迅速診断についてなどについても学びました。研修員が日本の結核対策の経験や技術から多くの学び、各国の結核対策に役立てることを期待しています。

日本BCG研究所 日本ビーシージー製造株式会社 清瀬工場の前で記念撮影。研修員にとって学び多き訪問でした。

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