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- 【実践授業レポート】堀谷沙貴先生 from 横浜市立みなと総合高等学校
実践授業とは…
実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。
堀谷先生のレポート
授業を行うにあたって
本校は、横浜市立の単位制・総合学科高校で、「『主体性を磨く』「自律・共創・挑戦」の精神を育み、自ら考え、判断し、行動する力で未来を切り拓く」を学校教育目標に掲げている。 留学生の受け入れ、ハワイ・マレーシア・上海等の姉妹校交流や有志の海外研修など国際交流活動が盛んである。これらの活動が生徒の中でイベント的に終わることなく、学校や地域の中で、異なる価値観を前提として差異を生かし作用しあう「共生社会」実現の担い手として成長することを目指している。
実践授業
タイトル:「私の願い」~移民ってどんな人?相手を知ろうとすると、面白い~
実施科目と単元は以下。
- 地理総合 「第2部 国際理解と国際協力 第1章 生活文化の多様性と国際理解」
- 歴史総合 「3部 国際秩序の変化や大衆化と私たち」
地理総合では、「移民の歴史と人々の生活の関わり」というタイトルでラテンアメリカが紹介され、日系人に関する記述がある。また、歴史総合では「大衆社会の出現とアメリカの繁栄」というタイトルでアメリカが紹介され、日本人移民や排日移民法についての記述がある。
(1)本時の目標
① 移民の存在を知る
② 移民のストーリーを想像する
③ 移民のもたらすものを考える
④ 自身が他国に移住することを想像する
(2)揺さぶりたい価値観
「移民」に対するネガティブな報道が多い。しかし、どのくらい私たちは「移民」や「日系人」について知っているだろうか。実は身近で、私たちの生活に関係が深い移民とその歴史について考えたい。また、移民の背景を想像することで、多文化共生の姿勢を育む足がかりとしたい。
(3)本時の展開
【導入】
短冊「日本に行きたい」の写真を見て、海さんのストーリーを自由に想像する
➡グループやクラスで共有する
➡「日系人」(日本から外国に移住した日本人の子孫)を紹介する
【展開】
「移民」に関連する言葉や出来事を教科書の該当ページから探し書き出す
➡出てきた言葉をもとに「移民は○○○をもたらしている」の空欄に当てはまる言葉を考える
➡そう考えた理由とともにクラスで共有する
【まとめ】
4月から他国に移住することになったら?を想像する
➡率直な感想、楽しみなこと、不安なこと、気になること、持っていくもの…
本当に移住する気持ちで考え、ワークシートに書き込む
➡グループやクラスで共有する
※次回の展開
- 1 . 日本人移民の歴史を簡潔に紹介する
-
2
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筆者が撮影した写真から、気になる写真を1枚選び、グループごとにフォトランゲージ
(日本人学校の風景、多様な日系人ファミリー、ハワイ日系の442部隊兵士…色々と代用可) - 3 . 「移民政策指数」を紹介し、日本の現状、多文化共生のために自分ができるアクションについて考える
- 4 . 海さんの短冊をもう一度みて、今授業の振り返りをする
(4)生徒の様子・生徒の振り返り
Q.他国に移住することになったら?できるだけリアルに想像してみよう。
「友達できるかな」「言語の不安」「部活を辞めなきゃいけない」「大学はどうすればいいのだろう」「新しい自分が見つかりそう」「日本食(味噌、醤油、米、お菓子、寿司)を持っていきたい」「行きたくない…」
Q.「移民政策指数」をみて、日本の現状をどう思う?/授業の振り返り
「(スコアが低い)反差別、教育、政治参加は、全部自分にも関係している」「交流の場が必要」「差別は、移民に対する知識の少なさも原因の一つ」「外国のいろんな文化が混ざって日本文化も作られているんだな」「日本語が分からないと低賃金や生活に影響が出るのでは」「私が幼いときは(外国出身の)父も私も人目をすごく浴びていた。」「誰もが不満なく過ごせることが必要」「私たちも英語を頑張ったほうがいい」「留学生は日本語すごく上手だなって思うけど、たまに意思疎通が難しい時があるから、もっと寄り添ったほうがいいと思った」「別の地域から来る人に慣れない気持ちもあるかもしれないが、1番不安を感じるのは移民ではないか」
(5)授業を振り返って
生徒の感想に、「差別は、移民に対する知識の少なさも原因の一つ」とあった。これまで、日々の授業の中で意識的に移民や日系人を扱ったことはなく、私自身も学校で学んだ記憶があまりない。イメージだけで他者を語ることは容易に差別に結びつく。学校や授業で異なる立場や価値観について考えることの大切さ、「まずは知ることから」の言葉の重みを感じた。
(6)授業観察者のコメント、広がり
学校内の同じ科目を担当する教員2名に実践していただいた。2人からは「日本よりも日本らしい生活をしているんだね」「ちょうど昨日、『映像の世紀』で日系人について扱っていたよ」「もっと知りたい」との声があった。私たちにとっても、移民や日系人が、身近でありながらも遠い存在になっていたことに気づかされた。
また、授業観察者からは「知識は自分事にしないと活用できない」「授業で教えていても、教員も自分事になっていないことがあるのではないか」という指摘があった。今回の研修を通して、私自身が多文化共生について自分事として考えることができた。また、生徒も移民や日系人の背景について想像をすることで、共感を示したり、自分の身の回りの例を挙げたりするなど、身近に捉えた様子であった。今後も多くの教員が様々な場面で教材を活用し、生徒が共生社会の一員として当事者意識をもつ一助となれば幸いである。