【実施報告】2025年度 横浜国立大学×JICA横浜 連携講座「現場から考える国際協力」
2026.01.22
JICA横浜は、国立大学法人横浜国立大学(以下「YNU」)との包括連携協定に基づき、日本国内の大学生・大学院生を対象とした連携講座「現場から考える国際開発協力」を2019年度より実施しています。本講座は、JICAの海外事務所の全面的な協力を得て、開発途上国の課題を分析し、その解決に役立つ具体的な事業企画案(プロポーザル)をグループワークにより作成する内容で、全10回で構成されます。講座受講を通じて国際協力への関心を深めた学生は、JICA職員やJICA海外協力隊など、さまざまな形で国際的に活躍しています。
2025年度も、バングラデシュ事務所の全面的な協力に加え、横浜市やYUSA(YOKOHAMA URBAN SOLUTION ALLIANCE)の支援のもと、連携講座が2025年10~12月に実施されました。
講座では、12大学から参加した36名の学生が9チームに分かれ、ODAプロジェクトやバングラデシュの現状と課題についての学びを深めたうえで、バングラデシュの開発課題である「地方行政」「都市交通」「廃棄物」に関する事業企画案を検討し、発表しました。企画案はJICA横浜およびバングラデシュ事務所により審査され、最優秀企画・優秀企画が選ばれました。
講座最終回の12月14日(日)には、JICA横浜の大野所長より受講生に修了証が授与されました。各学生からは、約3か月間の講座を通じて得た学びや気づき、それらを踏まえた今後の展望などのコメントが寄せられました。
ここからは、最優秀・優秀企画の概要、優秀企画を提案した学生メンバーのコメント、そしてYNUおよびJICA関係者のコメントをご紹介します。
「MRT(ダッカ・メトロ)駅周辺における歩行環境の改善による公共交通アクセス向上を目的とした緑化事業」
神奈川大学2年 加藤 大河さん
明治学院大学1年 亀井 智景さん
国際基督教大学3年 島田 侑果さん
横浜国立大学3年 藤田 紗希さん
MRT駅周辺を技術協力により緑化するとともに、市民が参画する形で維持管理システムを構築し、市民のMRT利用促進や環境意識の普及啓発を図ることを目指した事業です。さまざまな観点から事業企画の有効性や実現可能性を検証しており、完成度の高さが評価されました。
都市交通2チームの発表資料(一部)
「税が繋ぐ地方行政」
関東学院大学2年 泉 菜春さん
明治学院大学4年 齊藤 ひなたさん
横浜市立大学1年 髙田 美桜さん
津田塾大学3年 樋口 美玲さん
ドローンで税徴収対象となっていない建物(不動産)を空撮し、既存の土地台帳システムやGISと照合したうえで現地調査を行い、対象を特定して課税対象に加えることで、地方行政の財源となる税収増を目指す事業です。他援助機関の成功事例との連携に加え、ドローンを活用した効率性と新規性が評価されました。
地方行政1チームの発表資料(一部)
① 明治学院大学1年 亀井 智景さん
「国際開発協力」という言葉に惹かれ、応募を決意しました。講座を終えて振り返ると、国際協力や開発学の知識を深められただけでなく、グループで活動する中でコミュニケーションの取り方やチームビルディングの大切さを学ぶことができました。国際協力で世界に貢献したいという同じ志を持った仲間と出会い、協働できたことが、この講座で得た一番の財産でした。
事業案作成において工夫した点は、日本の高い技術力を現地の課題に即して結びつけることでした。講座を通じて、JICAは相手国の課題、実情や文化を考慮し、日本の高い技術を生かしたインフラ整備を行うことで信頼を築いてきたことを学びました。そして、その学びを踏まえ、交通分野における都市緑化を事業案として提案しました。
② 神奈川大学2年 加藤 大河さん
私は大学で国際政治・安全保障を専攻していますが、国際社会における日本への信頼を支えてきたODAが実際にどのように形成されているのかを実践的に学びたいと考え、本講座を受講しました。チーム内では、情報収集、企画立案、資料作成などを中心的に担当しました。
事業企画の立案にあたっては、JICAの報告書や政府・国際機関の政策文書を読み込むとともに、JICAバングラデシュ事務所や企業等へのヒアリングを重ね、現場が直面する課題を丁寧に整理しました。そのうえで、実施体制、民間資金の調達、インセンティブ設計、JICAの付加価値を設計し、机上の空論に終わらない、現実的で「ほどよく野心的な」提案を目指しました。
理論と実践を往復しながら、多様な当事者の視点に立って縦横無尽に考えをめぐらす過程を仲間とともに経験できたことは、大きな学びになったと感じます。本講座での経験を活かし、将来は日本の外交・安全保障政策の展開に貢献していきたいです。
③ 国際基督教大学3年 島田 侑果さん
連携講座を通じて、ODA事業を企画するうえで必要な思考プロセスを体系的に学ぶことができました。講座は全10回という限られた回数でしたが、原因分析から事業設計まで段階的に構成され、理解の深化と、物事を論理的に整理する力が養われたと感じています。事業案を考えるにあたり、講師の先生から「まずは現地の状況を徹底的に調査し、原因を正確に捉えることが重要である」と繰り返しご指導いただいたことが、特に印象に残っています。
事業企画案の作成において特に苦労したのは、新規性と持続性をどのように見出すかという点でした。分析を進める中で、多くの課題に対しJICAがすでに事業を展開していることを知り、広い視野で事業を実施するJICAのすごさを実感したとともに、既存事業を踏まえ、どのような付加価値を提示できるかを考える必要があり、苦労しました。
JICAバングラデシュ事務所の方から、私たちの事業案である都市緑化をMRT事業の補完として位置づけると良い、という助言をいただき、都市交通と環境を横断する視点で事業案を深化させることができました。
④ 横浜国立大学3年 藤田 紗希さん
本講座には、当時JICAが頻繁にニュースで取り上げられていたことをきっかけに、JICAの実態を自らの目で確かめ、理解を深めたいと考えて参加しました。講座を通して、JICAの事業は単に他国を支援するという一方向的な取り組みではなく、日本の技術や知見を生かしながら、共により良い社会の実現を目指す協働の取り組みであることを学びました。その過程で、日本が国際社会の中で果たしている役割を実感し、日本への誇りを感じると同時に、国際協力の奥深さを理解する貴重な時間となりました。
課題を突き詰める中で、仲間と意見が分かれる場面もありましたが、互いに譲歩しつつも安易に妥協せず、より良い事業案を目指して同じ目標と問題意識を共有しながら議論を重ねることができました。この経験を通して、本当の意味での協働とは何かを実感できたことは大きな収穫です。本講座で得た学びと姿勢は、今後の学びや将来の進路において必ず生かしていきたいと考えております。
① 横浜国立大学1年 髙田 美桜さん
大学入学後、将来の進路に迷いが生じる中、高校時代からの国際協力への関心を見つめ直すために本講座へ参加しました。
事業企画では、バングラデシュの地方自治体が抱える税収不足の課題に対し、ドローンを活用する提案を行いました。最終発表まで残り1週間というタイミングでのメンターセッションで、「ボトルネックは何なのか、理想と現状の分析が不十分」との指摘を受け、事業案を考える以前の土台が固まっていないことに気づかされました。問題の原因を特定し、全体構造を明らかにするため、ロジックツリーで分析を一からやり直すことになり、チームで何度もミーティングを重ねながら必死に取り組み、なんとか最終発表を迎えたことがとても印象に残っています。
とても大変でしたが、今ではかけがえのない経験であり、この講座で得たものはこれからの大きな糧になると確信しています。
② 津田塾大学3年 樋口 美玲さん
本講座を通して、地方行政や国際協力の現場では、制度や理論だけでなく、多様な立場の人との対話や信頼関係づくりが不可欠であると実感しました。チームビルディングを重ねる中で、雰囲気づくりが発言量や議論の質に直結すること、また、団結力が強く良い企画を作り出せるチームほど意識的な役割分担や互いへの配慮が重要であると学びました。事業企画では、課題の原因を丁寧に掘り下げ、ファクトベースで考える点に特に苦労しました。先を急ぐあまり解決策から考えてしまいがちでしたが、「原因設定を誤れば全体が崩れる」という指摘は大きな学びとなりました。
一方で、専門性や価値観の異なるメンバーが意見を出し合うことで、自分一人では思いつかない視点が生まれ、企画が立体的になる面白さも感じました。このようなたくさんの学びのある貴重な機会をいただけたことに、非常に感謝しております。この学びを活かし、将来、国際協力の現場で貢献できるよう、いっそう精進していきたいと思います。
③ 明治学院大学4年 齊藤 ひなたさん
チームとしてこれほど規模の大きなプロジェクトに取り組むのは、初めての経験でした。メンバー全員で創意工夫を重ねる中で、一人では得られない新しい発見やアイデアを得ることができました。事業企画で特に苦労したのは、地方行政の税収が低いという課題の中で、何がボトルネックなのかを見極めることでした。工夫した点は、未登録建物を検出するためにドローン技術を活用することで、新規性があることに加え、日本の技術を活用できる仕組みを提案したことです。また、世界銀行などが既に実施している案件に上乗せする形とすることで、より効率性の高いプロジェクト設計を目指しました。
本講座を通して、大変なこともありましたが、それ以上に講座に関わる全ての方からたくさんの学びを得ることができました。本講座で得たつながりと経験を大切に、これからも国際協力分野に関わり続けたいです。
今年度は、全体として完成度の高い事業案が多く発表されました。しかし、特筆すべきは、そこに至る過程です。どのチームも、試行錯誤を繰り返しながら、課題に対応したODAの姿を模索してきました。せっかく創り上げたと思った案が行き詰まり、振り出しに戻ってしまう悔しさを経験しても、諦めずに、チームのメンバーで互いに助け合い、協力しながら最後まで走りきりました。全チームとも、最終コーナーでの追い上げは目を見張るものがありました。
小林 誉明准教授
事業企画案はいずれも甲乙つけがたく、全てレベルが高かった。審査の際、特に考慮した点は、①具体的な根拠に基づいているか、②プロジェクト実施にあたり検討すべきさまざまな側面(財源、体制、効果、リスクなど)を想定し分析しているか、③そのプロジェクトに関係者がインセンティブを持って取り組めるか、である。この講座を通じて、学生の皆さんには国際協力の知的刺激、楽しさ、面白さ、やりがいを実感してほしい。そして、将来、何らかの形で国際協力に関わってもらえれば、とても嬉しい。
講義を行うJICAバングラデシュ事務所 市口知英所長(左端)
現地に足を運んだ経験のある学生がほとんどいない中、さまざまな方法で現地の課題を見出し、原因を掘り下げ、解決するための具体的な提案がされました。学生の皆さんは、この講座受講を通じ「課題を見出し、それにどう対応するかを考える」ことを学びました。この学びは、国際協力だけでなくさまざまな場面でも役立つと思います。学生の皆さんの今後の活躍を期待しています。
JICA横浜 大野裕枝所長(JICA横浜 海外移住資料館の展示前にて)
JICA横浜は、日本の将来を担う大学生をはじめとする若い世代に向け、国際協力や途上国への理解や関心をより一層深める取り組みを推進してまいります。
都市交通2チームの発表の様子
地方行政1チームの発表の様子
全体ワークショップの様子
最終発表会集合写真
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