所長あいさつ

2023年4月より、ドミニ共和国事務所とハイチ支所の両拠点長をしております、坂口 幸太(さかぐち こうた)と申します。JICAでこれまでブラジル駐在を含む中南米、ポルトガル語圏アフリカ(特にモザンビーク)、東南アジア(農業開発を中心に)などの仕事を経て、着任いたしました。

コロンブスが黄金や香辛料を求めてアジアを目指す中で到着した地であるカリブ海に浮かぶ北海道よりも少し小さな島、イスパニョーラ島。
ドミニカ共和国が東側約3分の2、ハイチが西側約3分の1を占めており、人口は両国ともに約1,000~1,100万人です。歴史上両国の関係は複雑に絡み合ってきましたが、ここ数十年を見てみますとスペイン語圏のドミニカ共和国とフランス語圏のハイチとの間で、大きな成長の進度の違いが出ております。

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ドミニカ共和国は、鮮やかなコバルトブルーの海と白い砂浜のビーチリゾートを有し、欧米を中心に年間800万人ほどの観光客が訪れます。また、自由貿易地域(フリーゾーン)からの繊維等軽工業品の輸出にも支えられ、コロナ禍からも早期に経済が回復し近年は5%超の高い経済成長率を記録し、中南米地域の中では直近10年間で最も安定的な高成長を遂げている国、と評されております。一方でハイチは1804年に仏語圏で最も早く独立を勝ち取った国ですが、その後の開発・成長の過程は順風満帆ではなく、特に近年はガバナンスの弱体化、治安の悪化が顕著であり、コロナ禍のダメージから立ち直ることが出来ず、3年連続のマイナス成長を記録するなど、非常に厳しい状況であり、中南米・
カリブ地域の中でも最も貧しい国、となっております。

JICAは、ドミニカ共和国において1964年より技術協力を開始し、現在では日本政府が定めた2つの重点分野「持続的な経済開発」、「格差是正」に基づき、有償資金協力、技術協力、ボランティア事業など様々な協力事業を展開しており、これまでに1,000名を超える海外協力隊を派遣し、2,000名を超えるドミニカ共和国の人々を日本に研修で受け入れて来ました。また、日本人移住の歴史も胸に刻まれますが、ドミニカ共和国と日本の懸け橋となる日系社会支援も重要な事業となっています。

ハイチでは、2010年のハイチ地震を契機に協力活動を本格化し、無償資金協力、技術協力を中心に事業を実施・推進し、その間保健医療、教育、農業開発、経済インフラ整備、人材育成などの分野で顕著な成果を出してまいりました。また、2022年に策定された国別分析ペーパーによって、強靭な社会の構築、持続可能な経済開発及び小島嶼国特有の課題への対応、という3つの重点分野に基づく協力が展開できるようなっております。他方、現在はその治安の状況から、専門家や調査団が現地に入ることが出来ないことから、人材育成に特化した事業をおこなっております。

2023年度からはこのエスパニョーラ島の2か国に加え、カリブ地域の大国であるジャマイカ支所及び、東カリブ地域10か国を所掌するセントルシア事務所との連携を強化し、カリブ地域全体として事業を推進してまいります。さらにJICAの事業に革新を起こす新規事業として、音楽、舞踊、映像、ファッション、香り、演劇、建築、映画などの分野で活躍するアーティストと連携して国際協力の伝え方に革新を起こす「Artist in Project」及び子供たちを育成しながら、その斬新な創造力をもって環境セクターの改善に取り組む「環境KIDS Expert」事業もドミニカ共和国事務所が中心となって実施してまいります。

日本と同じ島国の仲間との間で学びあい、協力関係を強化しながら、また多様なバックグランドを持つ方々に参加いただき、新たな価値の創出に取り組んでいきたいと考えております。皆様のJICAの活動への積極的なご参加、応援をどうぞよろしくお願いします!

参考