地域に根ざした国際協力の在り方を探して①

今回は、1995年から長きに渡ってJICAの青年研修事業の研修員を受入れている小松市国際交流協会(略称KIA)の中村さん、本田さん、下徳さん、笹原さん、山本さんにお話を伺いました。JICA北陸の青年研修事業をはじめとする、国際協力や国際交流活動を続ける皆さんの想いや熱意を取材しました。

小松市国際交流協会 会長 中村 知恵さん/事務局長 本田 昌代さん/国際理解部会 部会長 下徳 こづえさん/国際理解部会員 笹原 時博さん、山本 義之さん

「仲良くなりたい」が活動の原点

KIA設立当初から活動する笹原さんはある時、初代会長から「小松地域に住む在留外国人の方ともっと仲良くなりたいから力を貸してほしい。」と声をかけられたといいます。会社に勤めていた時は、会社の海外拠点で働いた経験もあるという笹原さん。海外転勤時代、現地で出会ったスタッフと友人のような関係になれたように、小松に住む外国人とも友達になれたらとKIAの設立に携わることを決めたそうです。同じくKIAの活動初期からのメンバーである下徳さんはKIAが開催した英会話教室にお子さんと参加したことをきっかけにKIAの活動に加わったといいます。活動の一環で母校の小学校を訪ねた際に、自身の卒業文集を見る機会があったという下徳さん。当時の下徳さんは将来の夢について「海外に行って世界の不思議を解き明かしたい」と綴っていたそうです。「すっかり忘れていた夢でしたが、当時抱いていた夢がKIAの活動を通して実現したと思います。」と語ります。

一方向から双方向へ

KIAの設立当初から人材育成は物事の基礎だと考え、日本の技術を世界の国々に伝えたいという強い思いを抱いていたメンバーの皆さん。JICA青年研修事業の存在を知り、研修員を受入れることで人材育成に貢献できるのではと事業に取り組み始めたそうです。当初は、「日本の技術を教えてあげたい。」という思いが強かったそうですが、長年研修員を受入れ続ける中で考え方が変化してきたといいます。研修プランを作ったり、研修員と一緒に小松の街を回ったりする中で小松の企業や団体の魅力を知ったという皆さん。研修員を受入れることで自分たちにも学びがあると気付いたそうです。また、研修先の企業・学校・団体の担当者の方々にとっても研修員との交流は自分たちの持つ魅力を知るきっかけ、新たな刺激になるといいます。研修中には、研修員とたくさん話をするというKIA会員の山本さんは、「研修員との交流を通して、インターネットや書籍だけでは分からないことが学べるし、言葉を超えた心のつながりが感じられます。」と話します。「地元の魅力を再認識できること」「新しい世界を知ることが出来ること」「言葉の壁を越えて心が通じ合う感覚を得られること」が研修員を受入れ続ける力となっているそうです。

「Theory」 より「Practice」

2019年度の研修で訪れた小松産業技術学校での研修の様子。研修生は本物のエンジンを使って、エンジンの分解と組み立て方法を学ぶ実習を行いました。

研修プランを作成する際は、理論ではなく方法論を伝えることを心がけているそうです。「研修に訪れる若者たちには本を読んで理論を自力で学ぶ力はありますが、実務経験が足りていません。だから、私たちは研修を通して実習の機会を提供したいのです。」と笹原さん。研修先では、機械の使い方やメンテナンス方法など実務的な事柄を実習形式で学ぶ機会を設けるようにしているといいます。こうした工夫の成果は研修員たちの帰国後の活動に表れています。2002年に受け入れたインドからの研修員を対象とした研修で、ペットボトルを用いたおもちゃの作り方を紹介したところ、福祉関係の研修員が帰国後そのおもちゃ作りをインドで実践してくれたのだといいます。この活動は現地の新聞にも取り上げられたそうです。小松での学びが帰国後の活動に役立っていることがみなさんの何よりの喜びだといいます。

取材
JICA北陸インターン
石黒 歩