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【JICA・AfCFTA事務局・AUDA-NEPAD連携】AfCFTA実現に向けてOSBPセミナーを実施

掲載日:2025.02.20

イベント |

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JICA、AfCFTA事務局、AUDA-NEPADの参加者(写真提供:AUDA-NEPAD)

概要

イベント名:AfCFTA実現に向けたOSBP実施促進のための3機関連携
開催日:2025年1月22~23日 
共催:JICA、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)事務局、アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)

主な参加者

JICA、AfCFTA事務局、AUDA-NEPAD、東アフリカ共同体(EAC)、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)、ザンビア歳入庁(ZRA)及びカズングラ橋プロジェクトオフィス(KBPO)

内容

2025年1月22日~23日、JICAはAfCFTA事務局、AUDA-NEPADと共に、3機関合同による初めての取組として、ワンストップ・ボーダー・ポスト(OSBP)知見共有セミナーを開催するとともに、カズングラOSBPの運用状況を確認しました。本セミナーには3機関の他、COMESAやEACから計21名が参加し、TICAD9に向けたアフリカにおける貿易円滑化と地域統合の促進に向けた議論が交わされました。

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OSBPセミナーにてJICA、AfCFTA事務局、AUDA-NEPADの間で活発な議論がなされた(写真提供:AUDA-NEPAD)

OSBPセミナー(1月22日)

JICA・AfCFTA事務局・AUDA-NEPADの3機関が初めて実務レベルで意見交換を行った本セミナーでは、貿易円滑化の活動や現場の課題について活発な議論が交わされました。

貿易円滑化の現状と課題の整理

まず、各機関が貿易円滑化における役割、活動、実績を共有し、それぞれの現状と課題(例えばインフラにおけるデジタル化の欠如や回廊管理調整の課題などがAfCFTAやAUDA-NEPADから挙げられた)を整理しました。その中で、地域レベルの成功事例として、EACの「単一関税領域(SCT)」やCOMESAの取り組みが紹介され、AfCFTA事務局やAUDA-NEPADを通じたアフリカ全土への展開可能性について議論が行われました。

評価手法の比較と統一的な基準の必要性

各機関が実施する貿易円滑化の評価手法についても意見が交わされました。回廊開発という共通の目的のもと、以下のような評価の特徴が示されました。

  • AfCFTA事務局:AfCFTA回廊アプローチの下、港から最終目的地における物流インフラ、税関でのプロセス、通関した車両数や渋滞状況など広範な視点から、大陸主要8回廊の評価を実施。
  • AUDA-NEPAD:統合的回廊アプローチの下、JICAと共に、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)の過去10年の実績・インパクトをまとめたPIDA10年実施報告書や、大陸14か所のOSBPの状況・インパクトに関してまとめたOSBPステータス・レポートを作成。
  • JICA:北部回廊、ナカラ回廊、西アフリカ成長リングの重点3回廊を中心に、二国間協力を中心としたさまざまな技術支援、調査、評価を実施。

こうした評価手法の相互補完や、統一的な評価基準の確立が重要であるとの認識が共有されました。

能力開発と研修プログラムの強化

貿易円滑化に関わる関係者の能力開発も議論の焦点となり、税関職員や国境関係者のスキル向上に向けた研修プログラムの強化が議論されました。また、貿易・税関政策の調整、施設の適正な維持管理とそのためのオーナーシップの確保、さらにはOSBPの運用効率を最大限に引き出すための政策整合性の確保の重要性も強調されました。本セミナーを通じ、各機関の貿易円滑化へのアプローチがより明確になり、3機関の連携をさらに強化するための重要な一歩が踏み出されました。

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カズングラOSBP(ザンビア・ボツワナ国境)に設置された貨物スキャナーの活用により通関に要する時間が大幅に短縮(写真提供:JICA)

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広々としたカズングラOSBPの駐車スペースでは、貨物トラックと一般車両がそれぞれ区分けされて駐車され、効率的な交通の流れを確保。渋滞の大幅な緩和に寄与している(写真提供:AUDA-NEPAD)

カズングラOSBP(ザンビア・ボツワナ国境)施設の訪問(1月23日)

セミナー翌日、参加者はザンビアとボツワナを繋ぐカズングラOSBPの実際の運用状況を確認しました。ボツワナとザンビアを通る南北回廊は、南部アフリカ地域で重要な運輸回廊の一つですが、ボツワナ・ザンビアの国境を流れるザンベジ川で隔てられており、南部アフリカ地域の経済開発上のボトルネックとなっていました。

2021年、ザンビア、ボツワナ、ジンバブエ、ナミビアの4か国の国境が交わるこの地域にカズングラ橋が完成。南北回廊上のボツワナとザンビアを円滑に繋ぎ、同地域の貿易促進に大きく貢献しています。JICAは円借款によりカズングラ橋に隣接しているOSBP設立支援に加えて、ソフト面でも技術協力を行っています。4か国の国境が近接している場所は世界でも極めて珍しく、今回の事例は他のアフリカの3か国国境等での活用の参考になる旨参加者から言及がありました。 

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2021年に完成したカズングラ橋を背景にした集合写真。同橋が架かるザンベジ川はザンビア、ボツワナ、ジンバブエ、ナミビアの4か国の国境が交わっている世界でも珍しい場所(写真提供:AUDA-NEPAD)

カズングラOSBPでは、参加者はザンビア歳入庁(ZRA)及びカズングラ橋プロジェクトオフィス(KBPO)からの説明後、カズングラOSBP内の各施設にて、貨物ターミナルや税関手続きエリア、貨物スキャナーなどが整備されている様子を確認しました。また、参加者は旧国境施設と2021年に新しく設立されたOSBPとの比較を行い、施設の機能性や効率性の向上について理解を深めました。

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カズングラOSBP内会議室での議論の様子。ZRA及びKBPOによる南北回廊におけるザンビア・ボツワナ間の貿易、交通、歳入の改善の説明を受け、意見交換を実施(写真提供:AUDA-NEPAD)

かつてのボトルネックから南北回廊の生命線へ:カズングラ国境の変遷

かつて渡河に数日を要したカズングラ国境は、橋とOSBPの整備により劇的に変貌を遂げました。現在では、南北回廊を支える重要な物流拠点として機能し、域内貿易の加速化に大きく貢献しています。以下では、カズングラ国境の変遷を「ビフォーアフター」とともにご紹介します。

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【ビフォー】旧カズングラ国境施設

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【アフター】入国管理と税関手続きを一元化したOSBP施設。ボツワナからザンビアへの入口として、南北回廊上の貿易円滑化に貢献しています(写真提供:AUDA-NEPAD)

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【ビフォー】カズングラ橋の建設以前、ザンベジ川を渡るためにはフェリーを利用する必要があり、貨物トラックによる長時間の滞留と渋滞が発生。南北回廊の円滑な移動を妨げるボトルネックとなっていました。

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【アフター】ザンベジ川に架かるカズングラ橋。南北回廊上のボツワナとザンビアを円滑に繋ぎ、2021年に開通(写真提供:AUDA-NEPAD)

今後の展望と協力強化

AfCFTA事務局及びAUDA-NEPADの多くの参加者は、カズングラ橋及び同OSBPの訪問は初めてであり、本セミナーは各機関の活動理解に留まらず、実際に現場訪問をすることでOSBPが与えるインパクトについて深い学びを得ることができ、本セミナー開催を主導したJICAに対する高い評価が示されました。

本セミナー及びカズングラOSBPの運用状況を確認することで、JICA、AfCFTA事務局、AUDA-NEPADの協力関係は一層強化され、さらにCOMESAやEACなどの地域経済共同体との相互理解の深化にも大きく貢献しました。これにより、アフリカ全体での貿易円滑化や地域統合の推進に向けた連携が一層強固なものとなりました。

各機関から、本セミナーの成功をモデルケースとし、今後もセミナー及びOSBP運用状況の確認をセットとした知見共有の場を継続していくことの期待が述べられ、2日間のセミナー及び現場訪問が締めくくられました。JICAは引き続き、アフリカの地域統合と貿易円滑化を支援し、持続可能な発展に向けて重要な役割を果たしていきます。