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西アフリカの大動脈・テマの立体交差点が竣工~国を挙げた開通式を開催~

掲載日:2025.02.20

イベント |

2025年2月、第二次テマ交差点改良計画(以下、フェーズ2)がついに竣工。フェーズ1開始から足掛け10年を経て、地域最大の交通難所が立体交差という形で生まれ変わった。住民からは「通勤時間が半分になった」「事故の心配が減った」と歓喜の声が上がる。

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テマ交差点竣工後の様子

事業概要:数字で見るプロジェクトの全容

フェーズ1:全長190mの掘削道路(ボックスカルバート)を含む東西方向2.1km、南北方向1.9km及び連結側道・サービス道路等の計14.5kmの道路整備
工期:2018年2月~2020年6月
総事業費:60億円
効果予測

  • 旅客輸送量 81%増
  • 貨物輸送量 68%増
  • 走行時間 最大76%短縮

フェーズ2:全長142mの高架橋(3径間連続鋼鈑桁橋)を含む南北方向1.8kmの道路整備
総事業費: 36億円
工期: 2022年7月~2025年2月
効果予測

  • 旅客輸送量 214%増
  • 貨物輸送量 206%増
  • 走行時間 最大87%短縮

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なぜ必要だった? プロジェクトの核心的意義

テマ交差点は、アビジャン―ラゴス回廊と東部回廊が交差する「西アフリカの大動脈」。テマ港の貨物取扱高は2000年以降、年平均10%程度で増加しており、ガーナにとって最大の海の玄関口であるとともに、ブルキナファソやマリなど内陸国への貨物輸送においても重要な機能を果たしている。しかし、1日12万台の交通量に対してラウンドアバウト式の5差路が平面交差していたため、朝・タは慢性的な渋滞が発生し、走行速度は時速10km以下、1km超の渋滞が日常化するなど、円滑な交通の阻害要因となっていた。
当初、ガーナ政府の要請は、平面交差点をインターチェンジ形式の跨道橋2層で完全立体化するものだった。しかし、事業規模、用地取得、障害物撤去、家屋・店舗移転などを考慮し、東西方向を地下化するフェーズ1と、南北方向を高架化するフェーズ2に分割して実施することとした。
このプロジェクトは、2018年にJICAが作成した「西アフリカ成長リング回廊整備戦略的マスタープラン」を具現化するものであり、西アフリカ地域全体の発展に寄与する。深刻な渋滞を解消させ、迅速なモノと人の移動を支えることで、投資促進と市場拡大の好循環をもたらし、持続的で強靭な経済成長が生み出されることが期待される。

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赤の実線が西アフリカ成長リングとして優先整備される回廊。左からアビジャン―ワガドゥグ回廊、アクラ―ワガドゥグ回廊、ロメ―ワガドゥグ回廊、下がアビジャン―ラゴス回廊。

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フェーズ1開始前のテマ交差点。交差点を先頭に渋滞が伸び、最大で約1km以上となる路線もあった。

現地のニーズに寄り添った日本の技術

ガーナでは、不安定な財政により、インフラ建設後のメンテナンス不足が社会課題となっている。特に、道路・橋梁においては事後保全の考え方が主流であり、実際に破損が発生・拡大してから補修するため、修復にかかる工費の増大や工期の長期化に繋がっている。こうした状況を踏まえ、本事業では高架道路の鋼橋に塗装寿命延長鋼板を採用し、塗装の塗り替え期間を普通鋼の倍以上に延長するなど、現地のニーズに応える質の高いインフラを実現させた。ガーナ政府の技術者も「経済性と施工性を両立させ、維持管理コストを低減させる優れたインフラだ」と喜びながら語る。

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地元に貢献したボランティア活動

着工以来、近隣地域との絆を創り、また職員全員の環境意識向上を目指し、毎週金曜日の昼休み後には現場関係者全員で地域の清掃活動を続けてきた。国籍も立場も関係なく、全員がゴミ袋を手に現場周辺の清掃に取り組んだ。「最後までごみが絶えることはなかったが、この活動を通じて創り上げた環境美化への意識は、一人一人に着実に根付いていきました。清掃の時間になると、全員が心をひとつにして活動を担う姿は、私たちプロジェクトの大きな誇りになりました。」(JFEエンジニアリング 現場所長談)

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日本企業も協力会社も共に、全員で清掃活動にあたった。

国を挙げた開通式

竣工に先立ち、2024年12月に高架道路の開通式が行われた。
アクフォ=アド大統領(当時)をはじめとして、道路大臣、外務大臣、グレーター・アクラ州知事など、多数の政府高官が出席し、ガーナ国営放送局で生中継されるなど、多くの国民や報道機関から高い注目を集めた。アクフォ=アド大統領は日本に対する深い謝意を表明するとともに、「この交差点は私たち全員への贈り物であり、責任を持って永続的に使用しなければならない」と国民に呼びかけ、この交差点を礎に、力強く国内の経済発展を推し進めるという決意が新たにされた。また、ガーナ政府は橋台に日本・ガーナ国旗のペイントを施し、両国の友好を象徴する架け橋となった。

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開通式での一幕

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橋台には日本とガーナの国旗が描かれた