jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

災害の教訓を世界へ 東日本大震災15年

#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs

2026.02.26

日本は世界有数の災害多発国です。地震や津波、風水害で多くの命が失われてきた一方で、教訓を引き出し、人々の命や社会、経済を守るための知見や技術を蓄積・発展させてきました。JICAはこうした経験を途上国で役立てる取り組みを進めています。東日本大震災から15年、JICAの活動をレポートします。

日本の技術で耐震化されたトルコの中学校の生徒たち

日本の技術でトルコの中学校を耐震化

「みんなで学校を安全にしよう!」

2025年11月6日、トルコ・イズミル県にあるイスメット・イノヌ中学校で、生徒たちが声を合わせてスローガンを読み上げました。

この日は校舎の耐震化工事の完成を前にしたセレモニーが開かれていました。「2023年2月のトルコ・シリア地震では16万もの建物が倒壊し、多くの人が命を落としました。日本の技術で子どもたちの命を守れることを誇りに思います」。セレモニーに出席したJICAトルコ事務所の山田梨湖さんは感慨深げな様子で話します。

耐震化されたトルコのイスメット・イノヌ中学校

山田さんは2023年から、トルコ政府の地震防災能力を強化するプロジェクトに携わっています。ユネスコやトルコ政府とともに進めているイスメット・イノヌ中学校の耐震化事業もその一環です。

この事業でJICAは診断と設計に係る技術をトルコ政府関係者に紹介し、建物の外側から補強を行う「アウターフレーム工法」と呼ばれる技術がトルコ教育省により採用されました。この工法を用いれば、施設の利用を継続しながら耐震化を図ることができます。阪神・淡路大震災を契機に学校などの公共施設を耐震化するニーズが高まった日本で発展した技術です。

山田さんは話します。「トルコと日本はどちらも地震が多発する地域に位置しています。今回の耐震化の取り組みは非常に重要です。更なる連携を深め、世界の模範となるプロジェクトを共に創り上げていきます」

トルコ政府は今回の耐震化事業の成果を高く評価しています。建物を取り壊して建て直すことに比べ、時間もコストも大幅に削減できたからです。今後は倒壊の危険性が高い全国の学校で順次、耐震化工事を進めていく考えです。

JICAは同様の取り組みを地震多発国であるモンゴルやエルサルバドルでも進めています。

JICAトルコ事務所の山田梨湖さん(左)

数十分かかっていた震度情報の発信を2分に短縮

インドネシアでは2022年から2025年にかけ、インドネシア気象・気候・地球物理庁(BMKG)の地震・津波の観測や警報等の発信を強化するプロジェクトが実施されました。

同国では2018年に地震や火山噴火に伴う津波が相次いで発生。しかし、津波警報が発令されなかったり、その精度が低かったりといった課題が浮かび上がりました。JICAのプロジェクトはこの課題の解決が目的でした。

プロジェクトリーダーを務めた古田明広さんは「現地で調査をすると、地震計が正しく設置されておらず、観測データの活用もうまくできていないことが分かりました。この事業では、観測機器の維持管理から地震情報・津波予警報の発出、情報発信のプロセスの改善に取り組みました」と振り返ります。

過去の観測データを確認するプロジェクトメンバー

文化や習慣の違い、多くの現地機関やBMKG内の部局との調整などプロジェクトは苦難の連続でしたが、3年間にわたる取り組みの結果、これまで地震発生から数十分かかっていた震度情報の発信を2分以内に短縮することができました。また、地方の防災機関の職員や住民を教育・啓発するため、地震・津波情報伝達訓練の実施や津波警報が発令された際の避難行動をまとめた教材も整備されました。

現地職員の指導にあたる日本人専門家   

技術担当を務めた上垣内修さんは話します。

「地震や津波による被害をどう防ぐかは、環太平洋地域に住む人たちにとって共通の課題ですが、その教訓を最も蓄積しているのが日本です。今回のプロジェクトでは、日本の気象庁が開発したのと同等のマグニチュード計算のプログラムや巨大地震対策を導入しましたが、これらは日本における地震観測の反省とフィードバックの積み重ねによって精度を上げてきました。こうした日本の技術によって、多くの人の命を守ることができます」

インドネシアでプロジェクトの活動を報告する古田明広さん=インドネシア・気象・気候・地球物理庁提供

上垣内修さん=インドネシア・気象・気候・地球物理庁提供

東日本大震災の経験を伝える

JICAは2011年3月の東日本大震災の発生に際し、東北に支援チームを送り出したり、二本松青年海外協力隊訓練所を避難所として開放したりしました。また宮城県東松島市には地域復興推進員を派遣するなど、側面的に支援をしてきました。こうした東北地域での経験を踏まえ、震災の教訓を海外に伝える取り組みも展開しています。

インドネシアのバンダ・アチェ市における防災の必要性を理解するための草の根技術協力事業はその一つです。同市は2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波で大きな被害を受けましたが、現地では記憶の風化や防災意識の低下が課題となっていました。

震災の記憶を伝承する団体で、この事業を担った「一般社団法人根浜MIND」(岩手県釜石市)の細江絵梨さんは「津波で大きな被害を受けた根浜地区は、防潮堤の建設などハード面のみならず、記憶の継承などを通じて防災意識の向上を図ることで、将来、起こり得る津波に備えています。こうした経験やノウハウをアチェの人々にシェアできればと考えました」と話します。

2022年にスタートしたこの事業では、現地にある二つの中学校をモデル校に指定。釜石の防災活動や復旧復興の取り組み等について学んでもらった上で、教員による授業計画の作成や生徒を交えたワークショップを通じ津波防災プログラムを考えてもらいました。 ワークショップでは津波からの避難経路の地図を作った生徒たちもいたといいます。

細江さんは「この取り組みを通じ、生徒から『津波は備えれば助かるんだね』との言葉が出たことが印象に残っています。とてもうれしく思いました」と振り返ります。

ワークショップで津波防災の課題を書き出す生徒たち=根浜MIND提供

津波で親族を亡くした佐々木雄治さんは、研修の講師として自身の体験を伝えました。「釜石市や根浜地区が震災から得た教訓は、防災にしろ、被災した後の復旧・復興にせよ、『自分事として考える』ことの大切さです。この事業を通じて、アチェの人々にも住民自らが防災活動を行うという意識を育むことができたのではないかと思います」と話しました。

根浜MINDの細江絵梨さん(左)と佐々木雄治さん

途上国の基盤を固め経済発展に寄与、そして日本にも

JICA地球環境部防災グループの小林謙一課長は、各地で展開されている防災関連のプロジェクトの意義について、次のように話します。

「途上国にとっての防災は、人々の命や暮らしを守るだけではありません。国の基盤を強固にすることで、貧困の悪循環を断ち切り、経済を安定的に発展させることにもつながります。また、昨今の経済活動や製造業のサプライチェーンが国際化しており、例えば2011年のタイの洪水で工場が水没した際は、世界中のパソコンの生産が停滞したり、日本国内の自動車工場も操業停止に追い込まれました。このような現在、他国の災害リスクを削減することは日本にとっても重要だと言えます」。

被災経験を世界へ。
JICAの取り組みは、日本の安心にもつながっています。




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