現役JICA海外協力隊員によるオンライントークイベントを開催しました

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、活動半ばで一時帰国したJICA海外協力隊員。関西にも約290名の隊員が待機しています。そんな中、2020年6月の週末、全5回に渡って隊員の声を届けるべくオンライン会議システム(Microsoft Teams)を利用して「現役JICA海外協力隊員と共に、これからの国際協力を考える」と題したトークライブを開催しました。

2020年7月9日

「全然へこんでいません、今からが勝負」

第1回のメンバーは背景や小物で派遣国を表現する工夫をしてくれました

第2回森川さん説明スライドではベリーズ事情が分かりやすくまとまっていました

 第1回目の6/20(土)は新卒で協力隊に参加した長谷中志保さん(派遣国:ケニア・職種:小学校教育)から元気よく報告がはじまりました。120名を超える参加者が画面越しに長谷中さんの発表に注目する中、現地での活動の充実ぶりが伝わる写真や長谷中さんの活き活きした笑顔が参加者の心を熱くしてくれました。また、2015年の大地震で被災したネパール・ゴルカ郡の孤児院で活動する田上史也さん(ネパール・青少年活動)、ジャマイカへの強い思い入れのある永村夏美さん(ジャマイカ・環境教育)、2度目のシニア海外協力隊として参加された村瀬正則さん(パプアニューギニア・日本語教育)からもそれぞれのミッションに対する奮闘ぶりや現地での生活の様子、派遣国への強い思いが伝わってきました。
 翌日の第2回目では隊員の中で最も寒い地域の文化を体験した鈴木恵さん(モンゴル・理科教育)、現地の幼児教育に関わった保育士の婦木理沙子さん(ボリビア・青少年活動)、今回の発表者の中で唯一のIT隊員、森川真秀さん(ベリーズ・PCインストラクター)、国立劇場の舞台照明の技術協力に携わった岡本翔伍さん(ナミビア・照明)の4名が登壇しました。活動場所や期間、専門分野がそれぞれ全く違う多様な4名の発表を聞いていると、色々な職業体験をしながら、地球を一周したような気分になりました。イベント後、希望者が参加したオンライン交流会ではそれぞれの国に関心のある参加者、JICA海外協力隊として同じ国に派遣経験のある先輩や、これから派遣予定となっている方とのざっくばらんな情報交換で盛り上がりました。中には、昔、その大学に視聴覚機材を設置した元隊員と、現在その機材を使って日本語教育を行っている現隊員が交流会を通じて知り合うという偶然の出会いもありました。
 この章の見出しの「全然へこんでいません、今からが勝負」は発表者の中のおひとりの言葉ですが、まさに皆さんの発表からは、コロナ禍の大変さを乗り越え、前に向いて突き進もうとするJICA海外協力隊の強さを感じました。

JICA海外協力隊の魅力とは

第3回納谷さんの「私の一枚」は老人の道路横断を介助する通りすがりの若者を写した写真

 翌週に迎えた第3回は6/27(土)に開催しました。第3回は職種を変えて通算6カ国目の参加になる納谷節夫さん(タジキスタン・日本語教育)、アフリカのコミュニティにどっぷりつかった森井英樹さん(タンザニア・コミュニティ開発)、一時帰国中も精力的に派遣国の紹介活動を行っている森裕美さん(ドミニカ共和国・作業療法士)、そして日本でも救命医療に長く携わり現地でもICUで活躍された伊東千尋さん(ボリビア・看護師)がそれぞれの活動発表とともに、「私の一枚」と題した思い出の写真について語っていただきました。弱者への思いやり、人との繋がり、行事等、現地の人々が何を大切にしているかが伝わる一枚でした。
 また、トークテーマで扱われた「JICA海外協力隊の魅力とはどんなことですか?」という問いに対する答えは、“自分で目標を決めて誰かと協力しながら何かを作り上げる醍醐味”や、“異文化と出会い自分を相対化できる経験”に加え、“いい友達”ができる、というものが共通して挙げられました。現地での出会いに加え、本イベントでの出会いでも“いい友達”の輪、すなわち新しい交流の輪になれば素晴らしいと思いました。

「熱意があれば行動につながる」

第4回宮越さんの同僚との一コマ。現地料理のインジェラを一緒に食べたというエピソードを披露してくれました

 第4回は6/28(日)の午前、第5回は同日の午後に開催しました。いずれも発表者は三名ずつで、第4回は事務職からJICA海外協力隊の“小学校教師”に転身した西山美里さん(ホンジュラス・小学校教育)、多様な生物好きがきっかけとなりアフリカに出向いた宮越望さん(エチオピア・理科教育)、障がい者の自立支援に携わった岡優樹さん(セントビンセント・マーケティング)、午後に開催した第5回は、現地での日本語教育に手ごたえを感じて来られた高村有紀さん(マダガスカル・日本語教育)、青少年との教育、ZUMBAグループ活動に携わった畑中遥さん(パラグアイ・青少年活動)、そして最後に登壇されたのは自治体での経験を活かしさらには今後も地元と派遣国の架け橋としての活動が期待されるシニア海外協力隊の高島伸哉さん(カンボジア・道路)で締めくくりました。
 全回を通じて発表者から伝えられたことは、コロナ禍での一時帰国という未曽有の状況に対し隊員としてのモチベーションをどのように維持するか悩みながらも、一歩ずつできることを見極め、準備し、同時期に派遣された隊員仲間や、同じ職種で活動している先輩や後輩、そして現地で同じ時間を過ごした同僚や友達と共に現地で使われているSNSやYoutubeを使って活動を継続している様子や、連絡を取り会う様子でした。またその活動の根源にあるのは、派遣された国に対する思いや、これまでの経験、出会いを無駄にしないという意志の強さと情熱だと感じました。

これからの国際協力

第5回では派遣国と日本の違いや良い所をそれぞれ紹介しました

 発表者の中には、将来JICA海外協力隊に参加することを目標にしている大学生や高校生からの質問を受け、これまでの経験や思いを共有する場面がありました。教育や医療に関する資格や経験に加え、JICA海外協力隊として派遣されるまでの国際交流や国際協力の経験、災害ボランティアや学習指導ボランティアに始まり、ダイエットの体験までもが活かされたという発表者の言葉から、みなさんの経験してきた国際協力では自らの持つすべての経験を総動員して対応していたと感じました。
 また実施後の参加者アンケートでは、「一時帰国を強いられたにもかかわらず明るく前向きな一時帰国隊員と接することができ、自分自身にとっても何事にも前向きに取り組む元気をいただいたように思った。」(一般参加者)や、「協力隊同士で力を合わせれば大きなことを深くできる・解決に結びつけられると思いました。また、帰国後も現地の方々と交流をされており、さらに日本社会にも還元しようとされている姿勢に刺激を受けました。」(一時帰国中のJICA海外協力隊員)という、発表者に励まされたというお声を多くいただきました。
 また、「現地で住み、現地の方と働くことで、良いことも悪いことも初めて気づくことが多いことが分かりました。ハプニングも楽しみながら前向きに日々活動されている様子が想像でき改めて自分も将来挑戦したいと思いました。」(学生)という感想もいただきました。
コロナ禍で海外に出向いて直接的な交流が制限される中においても、一つ一つの出会いを大切にし、情熱を伝える姿勢をあきらめず、連携を模索していくこと。それこそこれまでも、そしてこれからも国際協力にとって不可欠なことだと感じるイベントになりました。本イベントに参加してくださった発表者を始め、“JICA海外協力隊の情熱”が派遣された国と、日本と、そして未来を担う人々にも伝わったなら幸いです。

オンラインでの取り組みにおいて一部の方には、画像の乱れや接続の不良などでご迷惑をおかけいたしました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。