エジプトの文化財を守る!日本人専門家が活躍する舞台のウラ側

2022年2月28日

 エジプトで建設されている大エジプト博物館(The Grand Egyptian Museum、以下GEM)では、建設から展示や保管される文化財の修復や調査まで日本によって協力が行われています。

 今回の国際協力入門セミナー「行こう!大エジプト博物館のウラ側へ!」では、GEMで行われている技術協力プロジェクト「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト」の専門家やプロジェクト総括、またJICA職員の話を通じて、国際協力の現場とそのウラ側を覗くことができました。

 プロジェクトの専門家からは、時間とともに変わっていく日本人とエジプト人の関係性、またその背後にある日本人専門家の苦労と日本が持つ技術力の高さについて、お話いただきました。エジプトの遺物に緊張感を持って向き合う姿や、エジプト人と信頼関係を築きながら取り組んできたことなど、普段聞けない国際協力の現場を伝えていただきました。

 300名以上の方々に参加いただいた今回のセミナー。皆様に、普段聞けないウラ側の話まで楽しんでいただけたならば、大変うれしく思います。
 今回、ぜひ今後のイベントにも多くの方にご参加いただけたらと思います。

 参加者からは、次のようなお声をいただきました。
・なかなか聞けない博物館での修復作業の話を聞けてとても面白かった。
・日本の国際協力が、日本にとっても有益であることも、新たにわかった。
・子ども達がエジプトに興味を持ちました。これから一緒に子ども達と学んでいきたいと思います。」
・「こんなセミナーが無料でいいんですか!?」という驚きがあった。

【イベント・ダイジェスト】

【画像】 セミナーに先立ち、駐日エジプト大使館のモハメド・アブバクル特命全権大使にご挨拶いただきました。その挨拶で大使は、エジプトと日本の深い関係を象徴する建物である大エジプト博物館(GEM)の開館を待ち望んでいることに加え、日本がODAを通じてエジプトの文化・社会・経済の発展に大きく貢献していることへの感謝の気持ちを述べられました。


 第1部は、セミナーの導入編。現地生中継でエジプトの魅力をお届けしました。ナイル川、ギザのピラミッド、スフィンクス、そんな映像を臨場感たっぷりで配信。また、砂漠だけではなく、美しい地中海や紅海があることや、意外にも冬には雪が降ることなど、普段私たちが思い描くイメージとは違う、エジプトの一面が紹介されました。

【画像】 第2部はいよいよ国際協力のお話へ!単一文明を扱うものとしては世界最大となる大エジプト博物館(GEM)とGEMの開館へ向けて実施されている国際協力「大エジプト博物館合同保存修復プロジェクト(GEM-JC)」の舞台裏に迫りました。

 JICAエジプト事務所の羽岡職員とJICA社会基盤部の北松職員から、GEMで行われている協力の全体像やプロジェクトを取り巻く状況を説明した後、プロジェクトの現場へ。

【信頼関係なくして、プロジェクトなし】

 まずは、プロジェクトで木製品保存修復を担当する岡田先生。エジプト人とは文化も価値観も違う、だけど科学的な視点は万国共通と考え、現地の若手スタッフに研修を行いました。しかし相手もプロとしてのプライドを持つエジプト人。

 分からないことを分からないといえない相手に、研修を進めることには苦労がありました。しかし丁寧に、考えを押し付けずに接することで信頼関係が生まれてきます。そして、この関係性が基盤となりプロジェクトが発展していきました。

 専門家の方々の地道な努力と文化財に対する真摯な態度がエジプト人との信頼関係を築き、今では、実物を使った修復作業を担うまでに至っています(その中にはツタンカーメン王の儀礼用ベッドも!)。

【パピルスを持たない日本人ができること】

 続いて、壁画保存修復部門担当の谷口先生からは、世界の文化財を取り巻く状況を紹介いただきつつ、エジプトにおける文化財保護の特徴を現地の法律、経済、歴史などから分かりやすく説明いただきました。

 「パピルスを持たない日本人」には、なかなか本物の文化財に触らせてもらえなかった中ですが、多くの国で得た知識を相対化し、応用できる日本人専門家の強み。実際に、壁画の修復では日本人専門家のトルコでの経験を生かすなど、応用力を発揮し、エジプト人をあっと言わせました。

 また日本の文化財を取り巻く状況についても紹介いただき、私たちは自国の文化財について、自分事として見つめなおすことができました。「今やエジプト人と日本人は対等な関係、この国際協力を通じて日本人が学ぶことが多い」。その言葉は、国際協力のあるべき姿なのだと感じました。

【最後は関東一本締め】

【画像】 最後は、中村プロジェクト総括の「ヨーッ!」という掛け声とともに、「関東一本締め」で閉会となりました。中村総括はエジプト人と日本人でお互いの気持ちを合わせてきれいな関東一本締めを見たとき、「このプロジェクトは成功する」と感じたそうです。

 本セミナーも参加者の皆様、そして登壇いただいた先生方、プロジェクト関係者の皆様のご協力で無事に終了いたしました。

 ぜひ、今後もJICA関西のイベントにご参加ください。