「ウクライナ等避難民・難民支援 こころのケア」セミナーを開催しました

2023年2月22日

2月16日に、JICA関西と兵庫県こころのケアセンター共催で「ウクライナ等からの避難民・難民支援こころのケア」セミナーを実施しました。国内のウクライナをはじめとする避難民・難民支援関係者・団体を対象とし、オンライン・対面合わせて85人が参加しました。

ウクライナってどんな国?どんな人々?  

花村 カテリーナ関西看護医療大学看護学部看護学科助教からは、避難民に対するウクライナ語による心理カウンセリング支援やウクライナ人と付き合う上での背景情報となる国民性や文化、産業等の紹介が行われました。国民性については、ウクライナ人は勉学に励み、職人気質で「手に職」を持つことに誇りを持っており、自らの専門性を活かし、自立をしたいという気持ちが強い人が多いので、社会的な役割を持つことをウクライナ人は重視するということでした。そのため「避難民」として扱うのではなく、社会的に役割をもって生活を営むための環境を整えていくことが今後の中長期化が見込まれる避難生活においては特に重要になってくると話されました。

自治体3市によるパネルディスカッション

【画像】京都市、大阪市、神戸市のウクライナ避難民支援担当者によるパネルディスカッションでは、こころの安定に重要な「教育と就労」に着目して、各市から「ウクライナ避難民支援受け入れの現状と課題」の発表を行っていただき、それぞれの好事例・課題の共有を行いました。ウクライナ避難民の生活再建支援において、阪神・淡路大震災や東日本大震災の避難者支援の経験や知見が活用されたこと、日本での滞在期間が長引くにつれ、支援ニーズが多様化してきており、支援団体であるNGO/NPO等パートナーとの連携や、今後の生活支援のための財源確保、教育における言語や教育制度についての課題などの共有がありました。こころのケアの基盤となる教育、特に学校に関する支援と、継続的な課題である就労については地域を超えた全国レベルでの取り組みも重要だとの意見も出ていました。

JICAの経験を今後の避難民・難民支援に生かしていくために

【画像】オンラインで参加したヨルダン派遣中の田中英三郎専門家からは、シリア難民の問題について、時間の経過とともに国際社会から関心が薄れているのと同時に支援が減少し、現場の課題が置き去りになっている状況の共有や、滞在が長期化するシリア難民を受け入れているヨルダンにおける支援の紹介が行われました。
兵庫県こころのケアセンターの大澤智子上席研究主幹からは、JICA関西が2005年から実施している「こころのケア」に関する本邦研修の紹介と、その研修でも取りあげている、北米版PFA(Psychological First Aid/サイコロジカル・ファースト・エイド)の手法の概要を紹介いただきました。PFAの要点として、被災者の回復力を引き出すためには特に安全・安心な環境で「生活基盤を整える」こと、支援者をはじめとする関係者や地域コミュニティが、避難民に自立を促すような支援、また「お客様」ではなく「地域コミュニティの構成員」として接していくことの重要性を紹介していただきました。