「多文化共生防災セミナー」—地域防災と平時・発災時の在住外国人対応について—

2023年3月2日

背景・目的

近年、海外から日本へ就労・就学で来日する外国人が増えてきており、今後、地域防災に在住外国人が関わることが大切になってくることから、「多文化共生防災セミナー」—地域防災と平時・発災時の在住外国人対応について—を開催しました。
今回のセミナーでは、3人の講師の方に多文化共生と防災に関する事例や経験をお話ししていただき、地域に住む外国人住民との関わり方や外国人を含めた地域防災活動に繋がるヒントを得ることができました。セミナーの終盤には、参加者との質疑応答により議論を深めました。
現在、市民参加協力課でインターンをしている谷口諒平さんによるセミナー報告です。

セミナーの内容

セミナーの様子:室崎先生のご講演

本セミナーには多文化共生防災の取り組みに興味のある方、また、今後その活動に関わっていきたいという思いを持った、地域防災に関心のある方、防災士、自治体、国際化協会、地域ボランティア等、計約80人の方々にご参加頂きました。

冒頭、木村出JICA関西所長が、最新の社会情勢と近年の多文化共生への意識の高まりについて話し、その後、山本聖也JICA関西国際協力推進員(外国人材・共生)が、「近年の在住外国人と多文化共生」についての概要として、多文化を包括する社会には同化と社会的統合という2通りの考え方があり、日本は後者の社会的統合に向かっていること、関西に住む外国人の人数は増加傾向にあり、在住外国人との関わりは避けては通れないこと、また、言葉や制度・こころの壁が存在しており、現段階ではサポートが必要であることなどを話しました。

最初に講演された室崎益輝先生(NPO法人日本防災士会)は、「多文化共生における防災士の役割」について紹介されました。災害が頻発化する時代を迎え、被害も多様化するとともに、在留外国人や外国人労働者も年々増加するなど、社会環境の多様化も進んでいます。こうした情勢に対応し、誰一人取り残さない防災を実現するためにも「減災の進化」が求められています。その実現のため、地域の人同士の国籍の違いや文化の壁を乗り越えた関係性が必要であり、防災士の取り組みの中に多文化共生の視点を組み入れることが望まれるとお話しされました。

次に講演された山口まどか氏(NPO法人多言語センターFACIL)は「外国住民への平時の防災知識普及と防災における関わりについて」と題してお話しされました。日本に住む外国人は、有事の際、言葉や制度の壁により、災害弱者や要支援者となりがちですが、若年層が多く、地域への帰属意識が強い人も多いため、災害時には支援者となりうる可能性があります。今ある様々な壁に対して、日本社会も歩み寄り、いずれ外国人も地域の一員として活躍し支援する側になる可能性を視野に入れ、平時からの知識の共有や相互理解促進を図る必要があります。このようにして日本人住民と外国人住民の関係性を構築し、要支援者になりがちな外国人を支援者側に巻き込むことで地域全体の防災力向上につながるというお話でした。山口氏はJICA海外協力隊としてエルサルバドルで防災の活動に従事された経験があり、現地ではいざという時はお互いに助け合う共助が当たり前だったと紹介されました。


最後に講演された大久保雅由氏(城陽市国際交流協会)は、「国際交流協会の災害時外国人支援」について紹介されました。大久保氏の話によると、日本人は、災害が起これば避難することなど、防災に関する情報を日頃からテレビや自治体の広報紙から得ており、ストック情報として持っているため有事の際はすぐに行動に移すことができますが、外国人は言葉の壁のなどの要因により、そのストック情報を持っていないことが多く、そのため、災害時には日本人に比べて困ることが多いとのことでした。そこで、地域の国際交流協会の役割として、災害時の多言語センターの設置や災害時の外国人支援の活動だけでなく、平時から地域社会が外国人住民を地域住民として認識するように促す必要があるとお話しされました。

私自身、セミナーを通して、関西の外国人を取り巻く状況を学ぶとともに、今後の地域防災に外国人が関わっていく意義について理解できました。特に印象に残ったのは、山口氏が協力隊としてエルサルバドルで活動されていた時に、現地の方から「日本が地震に見舞われるのは信仰心がないからだ」と言われたというエピソードです。日本とは違い、地震発生の仕組みなど、災害に対する正しい知識がない地域があることに衝撃を受けました。世界でも特に災害が多い日本に住む外国人には正しい知識のインプットが必要だと強く思うと同時に、日本社会も彼らの背景や置かれた状況を理解しようとする姿勢が求められていると思いました。また、3人の講師の方のお話から、日本人も外国人も、地域の一員として共に認め合い、互いに力を合わせながら社会を発展させなければならないことも再認識できました。

市民参加協力課 谷口 諒平(インターン)