JICA留学生合宿プログラムの実施 —JICA関西で学ぶ防災と神戸の歴史—

2023年3月24日

3月15日から17日の3日間、関西の大学院で学ぶJICA留学生(以下、留学生)を対象に合宿プログラムを実施しました。合宿の主な目的は留学生間の交流の促進、関西地域の発展や文化についての理解促進、留学生のニーズを踏まえた次年度以降のプログラム作成の3つであり、3日間を通して総勢70人が参加しました。

【1日目】漫才で覚える日本語講座

漫才イベントの様子

3月15日(水)、吉本興業所属の国際夫婦漫才のフランポネさんと、吉本興業所属の芸人でもありJICA佐賀デスク国際協力推進員の石川洸さんを講師にお招きし、留学生同士が2人1組となってコンビを組み、作成した漫才の披露まで行いました。
前半は基本的な漫才の構造についての説明を受け、コンビ名を含めた日本語での自己紹介の練習に取組みました。漫才お決まりのあいさつ「どーもー!」の声とともに、出身と名前、そしてコンビ名を練習し、準備は万端!
後半のネタ作りでは簡単な日本語の言い間違いなどをテーマに、それぞれのコンビが作成した漫才を発表し、全31組の中から漫才が最も面白かったコンビ上位3組をJICA関西漫才グランプリとして表彰しました。留学生たちは最初こそ苦戦しているように見えたものの、徐々に会場からはリズミカルなツッコミが聞こえるようになり、完成したネタを発表する際には堂々と笑いをさらっていくコンビも出現するなど、大きな盛り上がりを見せました。

【2日目】阪神・淡路大震災を学ぶ

齋藤富雄教授との1枚

人と防災未来センター見学

3/16(木)は、留学生が「人と防災未来センター」を訪問しました。同センターは、阪神・淡路大震災の経験や教訓を、展示や映像等で後世に伝え、これからの備えを学ぶ防災学習施設です。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、関連死を含め6434人の命を奪った戦後初の都市直下型地震です。留学生にとっても、地震は決して無関係ということはなく、日本の滞在中や自国での「もしも」に備える重要性を考える機会となりました。
震災追体験フロアでは、地震のすさまじさを大型映像と音響で体験しました。建物が倒壊する音、人々の悲鳴など地震の恐怖をリアルに感じられる空間で、留学生が息を呑む様子も伺えました。
センター見学後、留学生は元兵庫県副知事の齋藤富雄・関西国際大学特命教授から、阪神・淡路大震災から得た教訓について講義を受けました。防災・減災のための国・都道府県・市町村・市民の役割や、なぜ自助・共助・公助が必要かなど説明されました。
特に「防災は、人である。」、つまりインフラの補強など「まちづくり」だけでは防災は機能せず、「人づくり」がより重要であるというメッセージは、防災監や副知事として尽力されたということもあり、心に響くものでした。「人づくり」のためには、防災教育を充実させることも必要だと説明されていました。留学生らからも、震災後の人づくりの手法や市町村の防災能力のいかに強化したのかなど、活発な質疑応答がされました。
地震の恐怖や神戸の復興の歴史をリアルに伝えることで、留学生は防災・減災の必要性をより実感を持って理解できました。将来、母国の発展を担う若きリーダーたちの、まさに「人づくり」となる研修でした。

【3日目】次年度のプログラム充実へ向けたグループデスカッション

デスカッション終了後の様子

17日(金)午前は現在JICAが行っている様々な留学生向けプログラムについて説明を受けた後、次年度以降の留学生向けプログラムの内容について、留学生同士が案を出し合いました。
留学生から最も多く出た意見としては「日本語を学習して実際に話す機会を増やしてほしい。」でした。もっと日本語を使って日本の学生たちと交流したい、日本人の友人を作りたいなど、留学生たちの日本語習得への高いモチベーションがうかがえました。また、防災についてもっと知りたい、関西地域の戦争からの復興についての歴史を知りたいなど、関西地域の歴史に対する関心が高かったのが印象的でした。日本の伝統芸能や文化、衣装、食についても関心が高く、お茶や生け花体験だけではなく、着物や浴衣などを実際に着てみたいという声もあがりました。
これらの意見は全て次年度以降のプログラム作成にとって非常に貴重なものであり、JICA職員にとっても留学生たちの声を直接聞くことができた有意義な時間となりました。

【3日目】インターン生企画神戸ツアー

博物館見学の様子

港での集合写真

初めてのケーブルカー

掬星台から神戸を一望

17日(金)午後はインターン生が企画した神戸について学ぶツアーを実施しました。このツアーは神戸市が掲げる「神戸2025ビジョン」のテーマである「海と山が育むグローバル貢献都市」に倣い、海コースと山コースの2コースを準備し、それぞれ神戸を案内しました。
海コースには、留学生44名が参加し、神戸市海洋博物館・カワサキワールド、神戸港震災メモリアルパークを見学しました。神戸市海洋博物館・カワサキワールドでは、神戸港の成り立ちや発展、役割などについて神戸市の歴史とともにその変遷を辿り、今もなお日本の重要な貿易港として活躍する神戸港について見識を深めました。カワサキワールドでは、そんな神戸港の発展を支えた川崎重工のこれまでの歩みについて学び、様々な体験型の展示を十分に楽しみました。神戸震災メモリアルパークでは、ひび割れた地面や大きく曲がった街灯など、震災直後の様子をそのまま見学することができました。留学生にとって、阪神・淡路大震災がもたらした甚大な被害を自分の目で確認する貴重な機会になりました。
博物館見学の後は遊覧船に乗り込み、海上から神戸港周辺を見渡しました。船から見る景色に留学生たちも興味津々の様子でたくさん写真を撮っていました。ベトナム留学生のヒエンさんは、「なかなか船に乗る機会がないからこんな風に乗ることができて嬉しい。他大学に通う留学生とも知り合うことができて良かった」と話してくれました。留学生同士の交流も深まり、神戸港についても知ることができた充実した一日となったようです。

山コースには、計21名の留学生が参加しました。前半は神戸市立博物館を見学し、神戸の発展の歴史を学習しました。「ハイカラ文化」として知られるように神戸は異文化との融合で発展してきた歴史があります。留学生にとっても多文化共生は1つのキーワードであり、学びあるものでした。また、3/16に学習した阪神・淡路大震災からの復興についても復習できる良い機会となりました。
後半は、日本三大夜景として有名な「掬星台」に、ケーブルカーで行きました。ケーブルカーに初めて挑戦する留学生も多く、山の斜面を上がる列車に興奮する姿が見られました。掬星台からは、神戸の街並みを一望できました。一度は地震で半壊した神戸も、今ではこれほどまでに復興することができたというメッセージに、感動している留学生の姿も見られました。
人の強さ、人の大切さを学習できる研修でした。



(開発大学院連携課 インターン 高木冬太 仁部屋みらい)