JICA関西センター物語(1) -さらなるパートナーシップ発展のために- 「兵庫県国際交流協会とJICA関西は兄弟」

2022年9月20日

今から20年前の2002年。神戸市の東部新都心「HAT神戸(注1)」にJICAの研修センターである兵庫国際センター(JICA兵庫)、現在の関西センター(JICA関西)が移設されました。

1973年に設立されたJICA兵庫は、神戸市須磨区一ノ谷にありました。「源平合戦」の戦場の一つとして有名な地です。なぜ山の上から海に面したHAT神戸にやってきたのでしょうか?また、JICA「関西」が関西地域最大の都市である大阪ではなく、神戸にあるのはどうしてでしょうか?

その過程では、兵庫県の関係者をはじめとして、JICAを支えて下さった方々による大きな共感とご協力がありました。JICA関西の歩んできた道については、当方のウェブサイト、「JICA関西の沿革」に記載されていますが、現在に至るまで、多くの知られざるドラマがあります。

JICAがこれまでに築かせて頂いた多様な関係者とのパートナーシップを、今後さらに深め、広げるためには、これまでの歴史の事実関係とその意義を共有することが重要と考えております。

そこで、JICA関西では、過去の資料や節目に関わられた方々の証言などを通じて、これまでの歩みを関係者の思いとともにホームページ上で共有します。最初はJICA兵庫の設立当時の名称である「OTCA(注2)兵庫インターナショナルセンター」に焦点を当て、その背景や当時の様子を紹介します。更に、2002年のHAT神戸への移設、さらにJICA「関西」が生まれた時の状況などをお伝えしていく予定です。

第一回目の今回は、神戸市須磨区一ノ谷にあった「兵庫インターナショナルセンター」についてお伝えします。このセンターが作られたのは1973年(昭和48年)のことでした。

(注1)神戸市の東部新都心として開発された地区の愛称。「Happy Active Town」の略。摩耶山の南、ウォーターフロントに開けるこの地域が、ハッと変貌し、誰もが幸福で、活気あふれる街となるように願いを込めて、公募を経て命名された。

(注2)特殊法人 海外技術協力事業団:「Overseas Technical Cooperation Agency」の略。

【画像】

神戸市須磨区一ノ谷にあった兵庫インターナショナルセンター。現在は解体され更地になっている。

『兵庫県国際交流協会』と『JICA関西』は兄弟

これは、公益財団法人 ひょうご震災記念21世紀研究機構の緒方孝昭理事の言葉です。緒方氏は兵庫県の国際交流課長などを歴任されるなど、長年に亘ってJICA事業に関わって頂き、兵庫県とJICA双方の歴史に大変お詳しい方です。以下、緒方氏のお話です。

「移民船の笠戸丸出港(1908年)など、海外移住者の主要な出発地であった神戸に国の施設として神戸移住センター(当時の国立移民収容所)が開設されたのは1928年。そこでは出発前の講義、健康診断、予防接種などが行われていました。JR/阪神「元町」駅から鯉川筋を北へ歩いて15分ほど上がったところに、今も「海外移住と文化の交流センター」として残るこの施設で事業を実施していたのが当時の海外移住事業団。のちに海外技術協力事業団と統合してJICAとなる組織です。

その後、海外移住者の減少を受けて1971年にはこの神戸移住センターは廃止されますが、その海外雄飛と国際協力の志を神戸に残そうと、海外からの研修員を受け入れる人材育成施設として新たに整備されたのが「兵庫インターナショナルセンター」です。国・海外技術協力事業団・兵庫県・神戸市が連携して整備されました。その施設運営管理を担ったのが、それまで移住事業に協力してきた「兵庫県海外協会(1952年設立)」で、現在の(公財)兵庫県国際交流協会の前身となります。つまり、移住事業を契機に育った二つの組織は、その事業が終了した後も、国際人材の育成や国際協力という新たな事業にも共同して実施してきた兄弟のような間柄と言えるのです。」

この兵庫インターナショナルセンターが設立されることとなった背景には、途上国からの研修員の増加に対応することが大きな理由ですが、それ以外に兵庫県側にもどうしても研修センターを県内に建設したい理由がありました。またセンターの運営管理を兵庫県の組織が担っているというのは、JICAの他のセンターにはないユニークな形態です。なぜでしょうか?

次回はそのあたりについて、お伝えさせていただきます。

今後の予定

第2回:建設費を負担した兵庫県と神戸市
第3回:『観光ホテル』になる予定だった研修所
第4回:阪神淡路大震災が発生した日
(以降、続きます。テーマを変更する可能性もあります。)

なお、JICA関西では当センターにまつわるエピソードなどを随時募集しております。過去の思い出や写真など、ぜひ当方までお寄せ願います。お待ちしています。

窓口(メール):jicaksic-koho@jica.go.jp

JICA関西 地域連携アドバイザー
徳橋和彦