環境保全へのあくなき挑戦~協力隊から始まったパラオ19年の軌跡~

【画像】パラオ共和国コロール州政府廃棄物 コンサルタント兼知事付きの経済開発部門特別アドバイザー
藤 勝雄
JICA海外協力隊2004年度派遣
任国:パラオ共和国
職種:環境教育

【画像】藤 勝雄さんは、2004年度にJICA海外協力隊としてパラオに派遣され、コロール州政府廃棄物管理事務所で総合的廃棄物管理の指導とコンポスト施設の開発に従事されました。当時の協力隊の活動が高く評価され、活動終了後は配属先であるコロール州政府に雇用されてパラオに残る事になりました。配属先の中にある「ベラウ・エコ・グラス・センター」では、現在JICAの草の根技術協力事業「リサイクルセンターにおけるベラウ・エコ・グラス(廃ガラスを活用したガラス工房)の事業軌道化(地域活性化特別枠)」が2022年2月から2025年2月までの予定で実施されています。藤さんは、同事業のパラオ側の立場から、国際協力に取り組んで来られました。
今年3月17日には、JICA関西が兵庫県国際交流協会と共催した「国際協力入門セミナー」で、その興味深い経歴を語って頂きました。

藤さんがJICA海外協力隊に応募したのは、技術者として、また一経営者として、長年に渡り積み上げてきた「環境保全技術関係及び経営」の知見を活用し、開発途上国の発展に役立てたいという思いからでした。当時は、環境保全分野での協力隊の派遣要請が少ない状況でしたが、2004年3月にJICA海外協力隊に応募し、選考を経て、パラオ共和国のコロール州廃棄物管理事務所(リサイクルセンター)に派遣され、総合的廃棄物管理の指導とコンポスト施設の開発に関わる事になりました。パラオとの縁はその時から始まりました。
藤さんが派遣された当時はリサイクルセンターは設立されておらず、職員が藤さんとパラオ側のカウンタパートの2人だけでした。それが現在は約80人の職員が関わるまでに拡大成長しています。藤さんにとって、リサイクルセンターは、成長を見守る子供のような存在でした。

藤さんの活動もあり、リサイクルセンターは、「コンポストプロセスの実験」を経て「コミュニティー規模コンポスト施設」が完工したと同時に、飲料容器回収プログラム(CDL)もスタートするなど、大洋州リサイクル活動の中での「グッドプラクティス」と言われ、大成功を収めました。更に、コンポスト及びCDLによるリサイクル活動が「廃プラスチック油化発電」の大きな原動力となり、島内に蓄積される「廃プラスチック」の解決に貢献する事業となっています。これらの活動の経験と成功を踏まえて、リサイクルセンターは徐々に「持続可能な資源循環型社会の構築」の方向性とコンセプトに向けて歩み始めました。また、「廃プラスチック油化発電」によるエネルギーを手にする事により、循環型自立産業の育成に向け大きく舵を切ったのです。

【画像】リサイクルセンターの事業により、2021年にベラウ・エコ・グラス・センターが誕生しました。ベラウ・エコ・グラス・センターはエコ・システムのガラス工房です。島で排出される廃ビンの廃ガラスを原料とし、またペットボトル等の廃プラスチックを溶かして作った再生油を燃料とした発電により溶解炉を稼働することでガラス工芸品を生み出しています。それらの、ガラス工芸品は、魚やクラゲの形の置物やカラフルなピアスなどに生まれ変わり、「Made in Palau」のお土産として販売されています。
このように、ベラウ・エコ・グラス・センターへの支援活動を通して、兵庫県三田市とパラオは、絆を深めてきました。藤さんも、ガラス制作技術及び工芸館の運営体制の支援を行い、販売事業やガラス工芸体験ツアー事業もできるガラススタジオをパラオ人の手で運営することを目指して、ベラウ・エコ・グラス・センターの一員として活動を続けてきました。

【画像】藤さんは、このような活動が評価されたことと、パラオ日本語補習学校校長としても活躍されるなど、長年にわたる功績から、2021年4月29日に、日本政府から令和3年春の叙勲受章者として、旭日単光章を受章されました。

2022年2月18日に在パラオ日本国大使館にて、旭日単光章の受章式が、コロール州政府関係者、日本語補習校関係者の出席のもとに執り行われました。