研修の現場から:安定的な電力供給の技術を伝えるオンライン研修を実施しました

2021年3月19日

誰もが電気を使えるように

 途上国には、せっかく電力が発電されても送配電設備が不十分なため、全ての人々に安定的に電力を届けることができていない国がたくさんあります。JICA関西はそのような国々に対し、送配電設備の計画や運用、維持管理に関する技術を伝える研修を行っています*。通常は途上国の電力公社や送配電会社から技術者が来日して研修に参加していますが、コロナ禍のため今年度は来日が叶わず、オンラインにて研修を実施しました。 

JICA関西内のオンライン研修の配信現場

電力技術者の共通言語、回路図
オンライン研修でも図解説明で理解促進できました

 今回の研修には、アフガニスタン、ナイジェリア、ホンジュラス、ラオスなど世界中17か国・地域から31名の電力関係機関の幹部や電力技術者が参加しました。通常であれば出国制限の厳しいパレスチナのガザ地区からも2名が参加できました。各国の電力事情は様々ですが、共通している課題は、送配電網の設計の不備、機器の老朽化や設備の維持管理不足による停電など。研修員からはそれぞれが抱える様々な問題が共有されました。実際、オンライン質疑応答セッションの途中で停電した国の研修員が、パソコンのバッテリーと明かりだけを頼りに研修に参加し続けた場面もあり、停電の切実さが伝わってきました。

最近は大規模な台風が増えて大規模・長時間の停電も経験していますが、それでも日本は世界的に停電の少ない国。停電後の復旧の速さにも定評があります。研修では、そのような安定した電力供給を可能にする技術を紹介しました。配電自動化システム、電柱や変圧器を管理するシステム、一部が停電しても別のルートから送配電できるような送配電網の設計、定期的な予防的維持管理などです。特に多くの国では「壊れてから」修理するものだと考えられているので、日本で実施されている「壊れないように」定期的な機器の検査を行うといった維持管理方法を学び、自国で適用したいと言う研修員が複数いました。どの研修員もオンライン質疑応答セッションでは熱心に質問していました。

研修員は終盤に、学んだことを自国の問題解決にどのように活かしていくのかを示す行動計画「アクションプラン」を作成しました。こういったアクションプランを作成する体験を通して「まず何をすべきか確認し、常に進歩するのにとても良い方法を学んだ」と言う研修員もいました。「でもやっぱり日本で実物を見たかったよね」とは全員一致の意見。コロナ禍が過ぎれば来日できるといいですね。今回の研修での学びが各国の送配電事情の改善につながることを願っています。研修実施にあたっては、海外電力調査会、関西電力株式会社、関西電力送配電株式会社の皆様にご尽力いただきました。ご協力に感謝申し上げます。


系統運用事業者幹部職員研修A/B 2021年1月14日~2月5日
配電網整備B 2021年1月18日~2月12日