JICA留学生(長期研修員)向け地域理解プログラム「神戸港を中心とした地域の歴史と産業発展」を実施しました!

2021年10月20日

JICA関西は、JICA開発大学院連携構想の下、地域の近現代の発展と開発の経験を伝えるプログラム(地域理解プログラム)として関西の大学院で学ぶJICA留学生(長期研修員)に、関西の歴史・発展・開発経験事例を年数回にわたって紹介しています。本プログラムを始めて3年目となる今年度の第1回目は、「神戸港を中心とした地域の歴史と産業発展」をテーマにし、関西の人々にとって重要な物流・貿易の拠点である神戸港の歴史と、その長い歴史の中で担ってきた役割、周辺地域の産業発展について学びました。

聞いて学ぶ、神戸港と日本の歴史

講義風景

10月6日(水)に関西地域の大学院に通う16カ国22名のJICA留学生(長期研修員)がJICA関西に集まり、午前中は歴史街道推進協議会による講義を受けました。神戸港は、古くは奈良時代に「大輪田泊」と呼ばれ中国や朝鮮半島との交易の玄関口となったことから始まります。時代の移り変わりとともに国内外の物流の拠点として、日本の近代化・産業発展を下支えしたことについて、細かな時代背景と共に学びました。特に明治維新以降は、神戸港周辺に輸送会社や金融機関、造船業者等が集まり産業化が進んで、江戸時代から盛んに行われた酒造りの機械化や、居留地への西洋菓子メーカーの進出により、神戸独自の文化が醸成されていきました。第二次世界大戦後には、手狭になった土地を増やすために完成当時世界最大の人工島「ポートアイランド」ができ、その後阪神・淡路大震災の大被害を受けながらも復興を遂げ、今の神戸港の姿が形作られました。約2時間半の講義はとても充実した内容で、JICA留学生は、皆、終始講師の話に聞き入っていました。質疑応答では「明治維新以降、どのように西洋から知識を得つつ、日本文化も守りながら現在の日本へと発展を遂げたのか」「外国人は居留地にしか住めなかったのか」「阪神・淡路大震災前後の建物の構造について」等、多くの質問がされました。

行って学ぶ、神戸港にまつわる産業の発展

カワサキワールド

菊正宗酒造記念館

神戸港震災メモリアルパーク

 午後は3グループに分かれて、講義内で触れられた様々な場所を巡りました。神戸海洋博物館、カワサキワールドでは、神戸の物流・造船業・重工業について、展示品やゲーム体験を通して学びました。神戸港震災メモリアルパークでは、震災の恐ろしさと、そこから復興を遂げた神戸の力強さを肌で感じることができました。菊正宗酒造記念館では、国から重要有形民俗文化財に指定されている、実際使用されていた道具を見ながら館員の説明を聞き、複雑かつ繊細な日本の酒造りを知ることができました。最後には試飲もさせていただきました。ブータンの留学生は、自国にある「アラ」というお酒と製法が似ていると驚いていました。
 来日以降、コロナ禍でなかなか観光や旅行ができず、大学以外で日本について知る機会が少ない中、このプログラムで留学生たちは日本と神戸について深く知り、さらに興味が湧いたようでした。私たち日本人でもまだまだ知らないことが多い関西の発展の歴史・知見を得て、留学生たちが自身の研究やその先にある自国の発展につなげていくことを期待し、今後も地域理解プログラムを実施していきます。