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JICA技術研修の特長、日本での現場視察や実習が徐々に再開 ーウィズ・コロナ禍下の研修員来日、都市の固形廃棄物管理の実務(B)コースー

2022年12月16日

国際協力機構関西センター(JICA関西)では、途上国の中央・地方行政官を対象に、大阪市を中心とした関西の自治体・民間企業等の固形廃棄物管理のノウハウや技術を学ぶ研修コースを公益財団法人地球環境センター(GEC)のご協力を得て、約30年にわたり実施してきました。
しかしコロナ禍のため、2020年度以降、研修員が来日できず、オンライン研修で代替せざるを得ない状況が続いていました。

オンラインと来日を組合わせた「ハイブリッド」研修で効率アップ

一方、途上国側からは、研修で学んだことを各国で活用するには、日本で現場に足を運び、人々と交流し、その実体験に基づいて周囲に伝える方法が最も効果が高く、それがJICA技術研修の大きな魅力の一つでもあるため、来日の再開を望むという声も多く寄せられていました。
このような背景から、「都市の固形廃棄物管理の実務(収集、運搬、最終処分に重点を置いた)(B)」コースはオンラインと来日を組み合わせた「ハイブリッド」型にチャレンジしました。
本コースは、10月3日にまずオンラインで開講、その後約1か月間、研修員は、基本情報をオンデマンド形式の教材で、それぞれの仕事や家庭の状況に応じたペースで学習、加えて週1~2回程度、ウェブ会議を通じて日本側講師との質疑応答や意見交換に参加しました。
そして、関係機関のご理解とご協力を得て、来日研修が実現。アフリカ5か国(コートジボワール、ジブチ、ニジェール、マダガスカル、マリ)からの5名が、11月24日から12月17日まで関西入りし、ごみ処理やリサイクルの現場を、厳密なコロナ感染予防対策を講じつつ、視察しました。
なお、コロナ禍前の本コースの日本滞在期間は約2か月間でしたが、オンライン研修との組合せの結果、半分以下となりました。国や自治体のごみ処理行政の責任者である研修員が、職場を離れる期間を短縮でき、より参加しやすくなったという反響もありました。

以下に、一部の実習や視察の様子をピックアップしてご紹介します。

ごみ収集改善のための「タイム・アンド・モーション・スタディ」ワークショップ

ひとつの街に見立てて机を配置

収集車オペレーター役の研修員への説明の様子

集まったデータの処理方法を説明する平賀さん

ごみ収集の改善を支援するJICA技術協力で、定番の調査と言っても過言ではない「タイム・アンド・モーション・スタディ(ごみ収集業務の現状調査と改善策の策定のための調査技法)」を、本コースの平賀良コースリーダー(エックス都市研究所技術顧問)が紹介しました。ロールプレイを取入れ、和気あいあいとした雰囲気のなかで、ワークショップ形式で学びました。より低いコストで実践的なデータ収集や分析を行う方法、更に調査活動を通じ現場作業員のモチベーションや責任感を向上させる効果などについても、多くの気づきや学びが得られた模様です。

家庭ごみによるバイオガス発電の見学-京都市南部クリーンセンター「さすてな京都」-

バイオガス発電施設に見入る研修員達

間近で安全に見学できる、迫力のごみ処理ピット

市民がひと目で理解できるように工夫された展示

12月8日(木)には、関西で最新の設備を誇る京都市南部クリーンセンターを視察しました。
研修員の国・自治体では、生ごみが、家庭から排出されるごみの大部分を占めていますが、経済発展とともに増え続けるごみ量に処理が追い付かず、街なかに放置されて悪臭や病害虫の発生源となり大きな問題となっています。また、地球温暖化が進むなか、生ごみから発生するメタンガス(温室効果ガス)の削減にも取り組まなければなりません。このような背景から、京都市の取組に対して、研修員の関心は非常に高く、「破砕したごみはどこに行って何に使われるのか?」「バイオガス発電のメリットは?」「コストはどのくらい掛かるのか?」など多くの質問が出、それぞれに丁寧に回答頂きました。また、市民や児童生徒の啓発を計画段階から意識したセンターの設計、効果的な見学ルートと職員の方の案内の仕方にも深い感銘を受けたようで、「やはり市民の意識の啓発が重要だ」との感想も多く聞かれました。

市民参加の資源再生処理施設-吹田市資源リサイクルセンター「くるくるプラザ」-

布のリサイクル工房

ごみ分別表を見ながらリサイクル工場を視察

整然と置かれたガラス瓶にカメラを向ける研修員

12月13日(火)に訪問した、吹田市資源リサイクルセンター『くるくるプラザ』は破砕選別工場と環境啓発の機能を備えた複合施設として日本で最初に設立された、関西を代表する資源再生処理施設の一つです。すべての種類のごみを一緒に集めて、そのまま露天に掘った穴に投棄するという「オープン・ダンプ」方法がまだまだ大勢を占めている、研修員の国や自治体の現状から見ると、吹田市民が、家庭でごみを12種に分別しているというところから、すでに驚きの声が上がりました。更に、運び込まれたごみが、適切かつ迅速に資源化処理されている現場を身近に視察することができ、興味が尽きない様子でした。
見学後「ごみ処理からリサイクル工房まで、すべてがそろった施設は初めて見た。『ブラボー』と言いたい。」「作業している方の安全衛生対策はどのようなものがあるのか?」「民間企業とのパートナーシップは?」など活発な質疑や意見交換が行われました。
吹田市資源リサイクルセンターは、オンライン研修部分のオンデマンド動画の作成にもご協力いただいており、研修員それぞれが特に興味を惹かれる部分を見学後に再確認することもできました。現場で接することができる情報には、匂い、温度、音など、オンラインではなかなか扱えない重要な情報も多く、研修員の満足度は大変高かった模様です。

研修員は、各国・自治体に戻り、日本で受け取った情報やノウハウを活用して、改善につなげてくれることと期待しています。実習や見学を受け入れて下さった皆様に心よりお礼申し上げます。