JICA沖縄【大学生×草の根】シリーズ第6弾 -名桜大学生が「微生物を活用した養鶏産業育成事業」を取材-

2019年12月9日

【大学生×草の根】シリーズ(沖縄県内の大学生に、草の根技術協力事業の現場で活躍する方をインタビューする企画)第6弾。今回は、「微生物を活用した養鶏産業育成事業」のプロジェクトマネージャーである石田 俊輔さんに、名桜大学の学生がインタビューしました。
インタビュアーは、今回も名桜大学の国際ボランティア研究会のメンバーが行いました。

プロジェクト概要

本事業は沖縄県の提案団体、株式会社みやぎ農園が実施団体となり、2019年1月から地域活性化特別枠の草の根技術協力事業として実施されています。ブータンの養鶏は生産性が上がっておらず、適正な収入を得られていません。本事業で、微生物を活用した養鶏技術を導入することで、生産性を上げるとともに、生産コストを下げ、農家の所得向上につなげていくことを目的として、養鶏農家が最も多いツィラン県を対象に、事業を実施しています。

人物紹介

【画像】
【取材対象者】
  • (株)みやぎ農園 石田 俊輔 さん
【インタビュアー】
  • 名桜大学国際学群1年 飛田 ほのかさん
  • 名桜大学国際学群 国際文化専攻三年 森田 望雅(みのり) さん

(注)みやぎ農園 石田 俊輔さんは県外在住のため、スカイプにてインタビューを行いました。

インタビュー

インタビュアー
このプロジェクトの目標を教えてください。
石田
プロジェクトの目標は、ブータンツィラン県の養鶏農家さんの収益を上げることですね。
インタビュアー
このプロジェクトを始めるきっかけは何ですか?
石田
30年以上養鶏をやっているみやぎ農園が、自分たちの技術をどのように他に移転できるか?ということを考えていました。ブータンの現状をみると、みやぎ農園の技術を活かすことができるかと思いました。
インタビュアー
なぜ養鶏に焦点を当てたのですか?
石田
統計に関しては行政が出している数字として、1週間に一人当たり3個の卵を供給しているようですが、フィールドの感覚としてはそれ以下であろうと思っています。
インタビュアー
現時点で、プロジェクトの達成度というのはどれくらいでしょうか?
石田
現時点でのパーセンテージはわかりませんが、進捗可能なペースで進んでいるとは思っています。
インタビュアー
プロジェクトをやってよかったなと思うことはどんなことですか?
石田
人と同じ目標をもってチームとして活動を行うというのはよかったなと思いますね。ただ、「このプロジェクトでよかったこと」というのは、正直、そういう分け方をして考えたことはないですね。
インタビュアー
改善しておけばよかったと思うことはありますか?
石田
うーん、その都度問題点があったら改善してきているので、今振り返って「ここを改善しておけば…」という点は特にないですね。問題が起きたとき、問題が起きそうなとき、どう対処するかということをマネジメントするのが自分の仕事だと思っています。
インタビュアー
現地の人たちは養鶏を学ぶことに対して意欲的でした?
石田
ブータンの農業の中では養鶏は盛んなんですが、ブータンの若者はホワイトカラーを好む傾向があるんです。「農業って実はかっこいいんだ」というところを見せてあげたいと思います。そうしないと、継続的な仕事にはなっていかないかなと思っています。そのアプローチの仕方を探しているところです。
インタビュアー
ブータンの今の養鶏の現状はどんな感じですか?
石田
事業を開始する前の調査では、ブータンでは、雛100羽のうち60羽の鶏が卵を産む、つまり60%ほどの割合でしか卵を産まないという状態です。これを、みやぎ農園の技術指導によって80%にあげることを目標にしています。それから、養鶏農家周辺の匂いについても、EMを利用することで改善することができたらと思っています。
経済面からの現状としては、インドから大量に卵が入ってくるため、ブータンで卵が飽和状態になってきていて、価格が下がってしまっているという状況があります。鶏の飼料の価格は上がってきているので、養鶏農家の収入が減ってきているというのが現状ですね。それから、大通りから奥に入ったところにある養鶏農家では、卵を生産してもそこから物流に載せることが難しいという問題があります。
インタビュアー
「食の見える化」っていうのはどういうことですか?
石田
商品としての卵を作ることができる、「オーガニック」の認証なんかがその「見える化」なんですけど、ブータンでは、「どうやって卵を作っているの?」ということを見える化していくことで、商品に価値をつけることをしたいと考えています。
インタビュアー
なるほど、生産過程をみえるようにしてもらえると、食べるほうも安心して食べられますもんね。
石田
そうなんです、それをいま行政に働きかけて、一緒に作っていこうとしているところなんです。
インタビュアー
将来国際協力をしたいと思っている学生たちにメッセージをいただけますでしょうか。
石田
キャリアとして考えているのなら、現場を見ておいたほうがいいと思います。学生であれば、インターンを行っていろいろ知っていくといいと思いますよ。
あと、国際協力の中でいろいろ道があるので、自分の進みたい道をより具体的に見据えていくほうがよいと思います。
インタビュアー
石田さんはもともと大学では何を学ばれていたのですか?
石田
美術史を学んでいました。映像制作の仕事についていたんですが、その後アフリカで協力隊として映像技術協力を行っていき、そこからですね、国際協力の道に進んだのは。自分がどこのエリアで国際協力を行っていくかというのは、考えていましたね。
インタビュアー
私は高校でデザインの勉強をしていたんですけど、大学から国際協力に興味をもって勉強しています。自分が学んできたことでも国際協力の道に繋がることがあればと思っていたので、石田さんのお話を聞いて、自分の今までの学びも生かせることができるんだと自信が持てました。
石田
デザインの勉強をしているって、すごくいいアドバンテージだと思いますよ。デザインって360度からの切り口で見ていくから、いろんな視点をもってみるということは強みだと思います。
インタビュアー
自分の切り口は何だろうともやもやしていましたが、自分は食品や農業も学んできたので、自分なりに、経験や考え方を見直して、自分ならではの切り口を見つけていきたいと思いました。
今日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

インタビューを行った感想

森田
石田さんのお話を聞いて、プロジェクトに特化した部分だけでなくて、これから生きていく上で共通すること、例えば、「自分なりの切り口を持つ」っていうことだったり、「問題が起こりうる前にアプローチしていく」ことだったりを聞いて、自分に何ができるのかということを改めて見直したいなと思いました。
飛田
すごく広い視野からプロジェクトを見ておられて、一つ一つの課題を明らかにしてそれに対応しておられるなと思いました。私も、今まで学んできたことに国際協力をプラスすることで、自分の切り口での国際協力を見つけようと思います。