ミンダナオ地域の母子保健サービスの改善・提供能力強化に関する技術プロジェクトを開始します。


2025.06.19
国際協力機構(JICA)は6月19日、フィリピン共和国の首都マニラにて、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM:Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao)のバンサモロ暫定自治政府(BTA:Bangsamoro Transition Authority)との間で、BARMMにおける母子保健サービスの改善・提供能力強化に関する技術協力プロジェクト「バンサモロ母子保健サービス・栄養改善プロジェクト」について、討議議事録(Record of Discussion:R/D)に署名しました。
本プロジェクトは、フィリピン南部のミンダナオ島内のBARMMの中心地であるコタバト市並びに北マギンダナオ州と南マギンダナオ州における母子保健サービスの改善を目指します。マニラで行われたR/D署名式には、馬場隆JICAフィリピン事務所長とアブドゥルラオフ・マカクアBTA首相が参加しました。両者は、2028年までの3年間のプロジェクトを開始することを宣言しました。
JICAは長年にわたり、様々な取り組みを通じてバンサモロへの協力を継続しています。例えば、「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト」、「ミンダナオ紛争影響地域道路ネットワーク整備事業」、「バンサモロ地域社会経済インフラ緊急整備計画」、BTAへのJICAアドバイザーの派遣等があります。今回は、BARMMにおける初めての保健分野技術協力プロジェクトを実施します。
このプロジェクトは、特に女性と子供に対する質の高い保健医療の提供とアクセスの向上に貢献し、健康格差に対処することを目指しています。BARMMの多くの医療施設は、限られた資源と人員で運営されています。一部の地域では、妊娠中の検診や産後ケアといった基本的なサービスさえも利用できません。また、訓練を受けた医療従事者の不足、インターネットの弱さ、国民健康保険公社(PhilHealth)への保険金請求の遅れ等の行政的なボトルネックが、サービス提供の障壁となっています。
本プロジェクトを通じて、JICAとBARMM保健省(MOH)は、全国平均を下回り続けるBARMMの健康指標を改善することを目指しています。世界銀行が2020年に発表したデータ
によれば、BARMM地域の5歳未満児の死亡率はフィリピン全土の2倍であり、5歳未満児の約40%が発育不良であると報告しています。妊娠中の女性には4回の妊婦検診を受診することが推奨されていますが、BARMMではその数は妊婦の半数未満となっており、全国平均の86.5%を大きく下回っています。これらのデータはBARMMにおける母子保健分野での包括的な対応の切迫したニーズを示しています。
本プロジェクトの主要な活動には、医療サービス不足が最も顕著な地域での母子保健と栄養サービスの強化が含まれます。また、地域の医療システムの管理方法の改善、日々のケアを提供する医療従事者の能力向上、健康的な習慣を促進するための地域社会の参加促進にも重点を置きます。その中でも妊娠中のケア、安全な出産、緊急手術よび新生児ケア、産後のフォローアップ、栄養サポートなどのサービスの向上を優先して活動を実施します。
JICAは、専門家の派遣、選出された医療施設の設備の更新、技術および行政能力を構築するための研修プログラムの提供を通じてプロジェクトを支援します。一方、BTAはプロジェクトの実施を主導し、地方自治体、州の保健所、PhilHealthの地域事務所と協力して目標達成を目指します。またBTAは、日々のプロジェクトの調整を管理するだけでなく、プロジェクトで導入された改善策をJICAの協力期間終了後も持続できるようにすることも期待されます。
これらの母子保健サービスを強化し、BARMM地域の多くの女性たち、特に母子保健サービスの主要な提供者である女性たちの能力強化を支援することにより、より強靭で包括的なコミュニティの基盤を築くことを目指しています。
本プロジェクトの詳細については、こちら のリンクをご覧ください。
R/D署名式の様子
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