より良い工事をめざして:「KAIZEN PROJECT」活動日記vol.4
2025.12.04
JICA海外協力隊の中西と申します。現在、ミルンベイ州アロタウ市(以下、任地)にある同州政府工事監督局(以下、当局)に勤務しています。 さて、この日記では任地での活動、地域の自然などを紹介しており、前回、道路施設の予防保全による維持管理を当局スタッフへ説明する様子を掲載しました。その際、モデルケースとした橋梁について、この度、当局スタッフと共に現地で日本の橋梁定期点検要領1)に準じた点検を実施しましたので、その様子を報告します。
点検対象の橋梁は州都アロタウ郊外の州道ノース・コースト線キバ橋です(写真1)。以前は円形コルゲート管3連の盛土構造物でしたが、河川の増水により被災したため、現在のコンクリート床版の単純I桁鋼橋へ2023年に架け替えられました。一般的に、日本での新設橋梁の初回点検は概ね2年後に実施しますので良いタイミングでした。
(写真1)全景写真
(写真2)起点側より路面
まず、最初は遠目で見て、橋梁の全体像を大きく捉えることから始めます。写真奥側の道路勾配が橋に向かって長い下りであり、路面には水たまり(写真2)が発生しています。目立った凹凸はありませんが、水が集まりやすいことが分ります。
次に、近接しての目視ですが、コンクリート床版と橋壁(パラペット)のジョイント(遊間)付近に段差や異常が発生していないかを確認します(写真3)。段差や異常が有れば、床版を支える支承又は橋台の不具合が考えられます。また、この付近から桁下へと水が侵入して、様々な不具合が橋梁に生じます。
(写真3)ジョイント部
(写真4)床版からの遊離石灰
桁下へと入りますと、コンクリート床版から何か白く漏れ出した跡が確認されました(写真4)。
これらは遊離石灰と呼ばれ、コンクリート中のカルシウムが侵入した水分によって溶け出し、表面に生じた析出物です。この遊離石灰の影響は主に橋の美観に関するものですが、遊離石灰がコンクリート床版に生じた貫通ひび割れへ水が侵入して生じた場合、コンクリート内の鉄筋を腐食させる恐れがあります。そのひび割れですが、建設時に残置された型枠のため観察できず、次回に撤去して内部の状態を把握したいと思います。
最後に下部工の橋台ですが、両岸とも基礎が大きく洗堀されています(写真1、5)。特に、起点側の橋台では幅1.5mmのひび割れが縦に生じています。これは、基礎が洗堀された下流側と残っている上流側との境界に生じたことから、下流側の一部が沈下した際、せん断によりひび割れが発生したと考えられます。なお、今後の対策の判断材料とするため、ひび割れ幅の計測位置と日付をマーキング(写真6)する経過観察の手法を紹介しました。
(写真5)被災した橋台
(写真6)橋台ひび割れ
この度の点検には、本橋梁の設計、施工監督を担当したプロジェクトマネージャーも同行頂きましたが、改めて橋梁点検の必要性について、当局スタッフの理解促進が図られたと思います。これらの点検結果を踏まえて、健全性を診断し、今後の対策を同僚と共に考えていきたいと思います。
【参考文献】
国土交通省(2024)道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準)令和6年3月 https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/tenken/yobo7_6.pdf
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