jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

”医療を届ける”その道のりの中で

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

2025.12.08

こんにちは。JICA看護師隊員の岡田です。
現在、私は外来で妊婦健診や新生児健診のサポートを行うかたわら、小学校や村を巡回して集団予防接種活動に同行しています。

皆さんはポリオという病気を聞いたことがありますか?
ポリオ(急性灰白髄炎)は日本でも予防接種が行われている感染症ですが、私自身、日本で看護師として働いていたときに「ポリオ」という感染症は海外の感染症のイメージがあり、身近なものではないと感じていました。

日本は世界の中でも特に清潔な国の一つであり、感染経路となる汚染水や糞便への接触が起こりにくい環境です。また、幼いころから手洗いの習慣も根付いています。

ポリオは本来、感染者の糞便などで汚染された手指、水、食品を介して広がる病気です。発熱や頭痛といった軽い症状から始まり、重症化すると手足の麻痺や、場合によっては命を落とすこともある恐ろしい感染症です。


私が活動しているパプアニューギニア(PNG)では、定期予防接種率が低く、2018年に一度根絶したと言われていたポリオが2025年に再び出現しました。 そのため、PNG全体で「ポリオキャンペーン」が実施され、各保健所や病院が学校・村を巡回し、集団接種や啓発活動を行っています。私が所属している病院のMCH(産科・新生児外来)チームは、このキャンペーンでココポ市内の32校と周辺の村々を担当しています。

ポリオワクチンは追加接種することでより高い免疫効果が得られます。対象は、生後3か月から10歳までのすべての子どもたちです。

日本では病院で当たり前のように様々なワクチン接種が受けられますが、PNGではそうはいきません。交通手段がなく病院に行けない家庭や、医療費を払えない家庭も多く存在します。また、ここでは暑い気候のため、多くの人がサンダルや裸足で生活しています。そのため、肌が露出しやすいことから、日常生活の中で容易に皮膚を傷つけてしまうこともあります。こうした小さな傷口から感染症が入り、重症化してしまうケースも少なくありません。

そのため、私が同行している活動は、子どもたちを感染症から守るうえで非常に重要な役割を担っています。ワクチンを打つだけではなく、子どもや保護者の健康チェック、病気の早期発見なども同時に行い、「病院に行けない人に病院の機能を届ける」ことを目指しています。それは、村の人たちにとって“命を守る手段”であり、医療者自身にとっても大きなやりがいとなっています。活動のあとには、学校の先生や地域の方々が差し入れを用意してくださることもあり、PNGの優しさや温かさを感じます。また、日本人が珍しいこともあり、私にとって活動中はお互いの文化や言語について教え合う楽しい交流の時間にもなっています。

こうした取り組みを通じて、多くの子どもたちにワクチンを届けることができていますが、PNG全体で同様のキャンペーンが行われているとはいえ、すべての子どもたちに確実にワクチンが行き届いているかどうかは分かりません。

今後、より多くの子どもたちが予防接種を受けられるよう、医療体制の整備とともに、道路や交通インフラの発展も進んでほしいと願っています。

世界には、いまだに医療やワクチンに十分にアクセスできない子どもたちが数多く存在します。病院が遠いこと、交通手段がないこと、医療従事者が不足していること。そのどれもが、必要な医療が行き届かない原因となっています。一方で、私たちがこうして村々を訪れ、ワクチンを届け、子どもたちの健康を見守ることは、「確実な医療を届ける仕組み」を少しずつ形にしていく活動だと思います。 

日本では当たり前すぎて気づけなかった医療の現実に、PNGでの生活で何度も出会います。「もっと良くできるのでは」と感じたり、「こんな工夫もあるのか」と驚かされたり。
気づきや学びの連続の中で、看護師として少しずつ成長させてくれているように感じ、自分自身を見つめなおすきっかけになっています。

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