PNGでの経験を、再び教育の現場へ -元JICA海外協力隊員・多田康記さんが10年ぶりにPNGを訪問-
2026.08.07
約10年前、JICA海外協力隊員としてPNGで理科教育に携わった多田康記さん。現在は香川県の高校教員として教壇に立ちながら大学院で研究に取り組んでいます。その経験を原点として教育実践と研究を重ねてきた多田さんが、このたび再びPNGを訪れました。現在取り組む「学びのユニバーサルデザイン」の成果を現地の教育現場に還元するためです。
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協力隊として過ごしたマヌスでの日々
多田さんは2015年から2017年まで、JICA海外協力隊員としてマヌス州ロレンガウのパピタライ高校に派遣され、理科教育や生徒の学力向上に向けた活動に取り組みました。
当時は生徒の学力向上を目指しながら、日々授業を行っていました。
「授業後に生徒たちから『もっと教えてほしい』と言われ、時間の許す範囲で補習をすることもありました。学ぼうとする生徒たちの姿は今でも印象に残っています。」
協力隊活動当時の多田さんとパピタライ高校の生徒たち。この経験が、現在の教育実践や研究活動の原点となっています。
一方で、活動を通じて教材不足という課題も感じていました。教科書や学習教材が十分に行き渡らない学校もある中、多田さんは「何か形に残るものを作りたい」と考え、他の理科教育隊員と協力して高校生向けの理科問題集を作成しました。
「活動中は、自分のしていることが本当に役立っているのだろうかと悩むこともありました。そんな中で、問題集という形で一つの成果を残せたことは、自分にとって大きな達成感につながりました。」
この問題集は現地の学校へ共有され、現在も一部の学校で活用されているといいます。自ら作成した教材が今も使われていることは、多田さんにとって大きな喜びとなっています。
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「みんなが学べる環境」を目指して
帰国後、多田さんは高校教員として教壇に立つ中で、「誰もが学びやすい教育環境づくり」への関心を深めていきました。
現在、多田さんが研究している「学びのユニバーサルデザイン」は、生徒一人ひとりの特性や学び方の違いに応じて、誰もが学びに参加しやすい環境づくりを目指す教育アプローチです。学習内容の伝え方や学習成果の表現方法に多様な選択肢を設けることで、より多くの生徒が学びやすい環境を目指します。
昨年度、日本の高校で実践研究を進めた結果、一定の成果が得られたことから、今回、その知見をPNGの教育現場にも還元するために再びPNGを訪れました。訪問先のソゲリ国立高校では、事前・事後アンケートを実施し、生徒たちがどのような環境で学びやすさを感じるのかを調査しながら、実際の授業実践に取り組んでいます。
多田さんは今回の訪問について、次のように語ります。
「研究を通じて得られた学びを
PNG
の教育現場に生かしたいと思い、今回訪問させていただきました。」
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年ぶりに戻った
PNG
久しぶりにPNGを訪れた感想を尋ねると、多田さんは笑顔でこう振り返ります。
「空港に着いたらお願いしていた迎えのバスが来なかったり、移動しようと思ったら燃料が入っていなかったりして、『やっぱり
PNG
だな』と思いました。」
思わず笑みがこぼれるようなエピソードですが、多田さんにとっては懐かしさを感じる瞬間でもあったようです。
多田さんと一緒に、当時のココポ隊員(笹瀬さん)も一緒に事務所を訪問いただきました。
一方で、人々の温かさは当時と変わっていないといいます。
「
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の人たちは本当にフレンドリーでオープンマインドです。そのことを皆さん自身も誇りに思っているように感じます。いろいろな意味で、『
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に帰ってきたな』という感覚になりました。」
また、今回訪問したソゲリ国立高校の生徒たちにも良い印象を受けたそうです。
「落ち着いていて、自分の考えをしっかり持っている生徒が多いと感じました。」
10年という年月が経っても、人々とのつながりや温かさは変わらず、多田さんにとってPNGは改めてその魅力を実感する場所となりました。
ソゲリ国立高校で「学びのユニバーサルデザイン」を取り入れた授業を実践する多田さん
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協力隊経験が広げてくれた世界
多田さんは、協力隊での経験が現在の研究や教育観にも大きな影響を与えていると話します。
「帰国直後はあまり意識していませんでしたが、振り返ってみると、協力隊での経験がその後の挑戦の土台になっていました。」
協力隊での活動を通じて語学への抵抗感が薄れ、その後、海外の大学院で学ぶことにも挑戦しました。また、現在取り組んでいる「学びのユニバーサルデザイン」の研究にも、PNGでの経験が深く関わっているといいます。
「日本だけではなく、世界にはさまざまな人たちがいることを知ることができました。その経験が今の研究にもつながっています。」
多様な文化や価値観に触れた協力隊での経験は、多田さんに新たな視点を与えただけでなく、「誰もが学びやすい環境をつくりたい」という現在の教育実践や研究活動の原点にもなっています。
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多田さんにとって
PNG
とは
最後に、多田さんにとってPNGがどのような存在なのかを尋ねました。少し考えた後、多田さんはこう語ってくれました。
「
PNG
は忘れられない国です。帰国するときは、もう来ることはないかもしれないと思っていました。」
「でも、振り返ると『あの時
PNG
に行って良かった』と思える国なんです。物資が豊かなわけではありませんし、不便なことも少なくありません。それでも、人とのつながりや経験が強く心に残っています。」
協力隊としてPNGで過ごした日々は、多田さんの現在の教育実践や研究活動の原点となっています。当時の経験がその後の学びや研究へとつながり、今回の訪問では、その成果を再びPNGへ届けることとなりました。
PNGでの活動を支えてくれたボランティア担当スタッフとの再会
約10年ぶりにPNGを訪れた多田さん(右側)。同じ時期に活動した協力隊OVとの再会が実現しました。
約10年の時を経て実現した今回の再訪問は、多田さんにとって原点との再会であると同時に、PNGと日本を結ぶ新たな交流の一歩にもなりました。
JICA PNG事務所は、これからも人と人とのつながりを大切に育みながら、両国の友好と発展に貢献していきたいと考えています。
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