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現場で見つけた課題に向き合う―JICA海外協力隊4名が中間活動報告を実施

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs

2026.08.11

 パプアニューギニア(PNG)各地で活動するJICA海外協力隊員4名による中間活動報告会を開催しました。今回報告した隊員は、ICT、保健医療、教育、土木という異なる分野で活動しています。それぞれが任地で生活し、同僚や地域の人々と一緒に働く中で見えてきた課題に対し、現地の状況に合った方法を考えながら活動を進めています。報告会では、これまでの取り組みや成果に加え、現場で直面している課題、そして任期後半に向けた活動について発表しました。

●約200台のパソコンを支えるICT環境の改善

 ゴロカ工業短期大学でPCインストラクターとして活動する田島 和昭隊員は、同僚のITスタッフとともに、校内のパソコンやネットワークなどICT環境の維持・改善に取り組んでいます。同校には約1,000人の学生がおり、6つのコンピューター室に約200台のパソコンがあります。着任当初は約100台がWindows 7を使用していたほか、インターネット回線の遅さや、ネットワーク構成図、トラブル対応記録が整備されていないことなど、さまざまな課題がありました。

 そこで田島隊員は、まず校内のネットワークを調査し、機器や建物の接続状況を示すネットワーク構成図を作成。また、インターネットに接続されていないパソコンでも更新できるよう、USBを利用したWindowsのアップデートにも取り組みました。交換部品が簡単に手に入らない環境では、故障した古いパソコンから使用可能な部品を取り出し、別のパソコンの修理に活用するなど、限られた資源を有効に利用しています。こうした取り組みにより、ソフトウェアや設定に関する41件の問題のうち35件、ハードウェアについても12件中9件を解決し、当初設定した目標を上回りました。

 任期後半では、これまで蓄積したトラブル対応記録や技術資料を同僚と共有し、隊員の任期終了後も現地スタッフ自身がICT環境を維持・改善できる体制づくりを目指します。

●病院の一員として働きながら、より良い医療環境を考え

 東ニューブリテン州ココポにあるセントメリー病院で看護師として活動する岡田 冴大郎隊員は、日本での看護師経験を生かしながら、現地の医療スタッフとともに活動しています。着任後は、まずPNGの医療現場や仕事の進め方を理解することを重視し、実際の看護業務に加わりながら、現場が抱える課題を探ってきました。

 活動で大切にしているのは、外部から「こうするべき」と指導するのではなく、自らも病院スタッフの一員として働き、同僚と一緒に改善方法を考えることです。例えば、以前から必要性が認識されながら実施できていなかった病棟のベッドシーツへの名称表示について、岡田隊員が文字をデザインして印刷し、実際の運用につなげました。一見すると小さな改善ですが、現場で長く課題となっていたことを一つずつ実行に移していくことも、協力隊活動の大切な役割です。
 
 任期後半は、病院で定期的に行われている勉強会なども活用しながら、自身の知識や経験をスタッフと共有し、より良い医療環境づくりにつなげていく予定です。

●「答え」だけでなく「考える力」を育てる算数教育

 ソゲリ小学校で活動する金本 隼太隊員(小学校教育)は、日本での教員経験を生かし、児童への算数指導と教員への授業改善支援に取り組んでいます。着任後に授業を観察すると、教師が黒板に書いた内容を児童が書き写すことに多くの時間が使われ、児童自身が考えたり、話し合ったり、自分の考えを説明したりする機会が少ないことに気づきました。また、計算問題には答えられても、文章問題から「何を計算すればよいのか」を考えたり、答えに適切な単位を付けたりすることが難しい児童も少なくありませんでした。そこで、「I do(教師が示す)」「We do(教師と児童が一緒に取り組む)」「You do(児童自身が取り組む)」という段階的な指導を取り入れています。また、九九の歌やフラッシュカードなどを活用し、児童が楽しみながら繰り返し学習できるよう工夫しています。

 活動は児童への授業だけではありません。ソゲリ小学校をはじめ、他の教育機関でも教員研修を実施し、授業方法の改善にも取り組んでいます。さらに、学校の活動を地域に知ってもらうためFacebookページを開設。机と椅子が不足している状況を発信したところ、その情報が新聞にも取り上げられ、政府から50セット、さらに支援者から20セットの机と椅子が寄贈されました。
 
任期後半は、研修で指導方法を伝えるだけでなく、教師同士で実際の授業を観察し、改善点を話し合う「授業研究」の考え方も取り入れ、現地の先生たち自身による継続的な授業改善につなげていくことを目指します。

●「壊れてから直す」から「壊れる前に守る」へ

 ミルンベイ州政府で土木分野の活動を行う中西 康二隊員は、日本の地方自治体で長年、道路や橋梁などのインフラ整備に携わってきた経験を生かして活動しています。

 PNGでは、豪雨や高潮などによって道路、橋梁、護岸などのインフラが大きな影響を受けます。ミルンベイ州でも、橋の基礎部分が水流によって削られたり、海岸の護岸施設が損傷したりするなど、厳しい自然環境の中でインフラを維持していく必要があります。

 そこで中西隊員が重視しているのが、「壊れてから修理する」事後対応型の維持管理から、「定期的に点検し、小さな損傷の段階で対応する」予防保全型の維持管理への転換です。橋梁点検マニュアルの作成、道路・橋梁台帳の整備、点検記録の蓄積など、将来的な道路資産管理(Road Asset Management)の基礎となる仕組みづくりに取り組んでいます。また、技術を一方的に伝えるのではなく、若手技術者などの同僚と一緒に現場を確認し、「なぜ壊れたのか」「どうすれば被害を小さくできるのか」を考えることを大切にしています。

●任期後半へ―現地の人々とともに考え、持続する活動を

 今回の4名の報告は、ICT、保健医療、教育、土木と分野は異なります。しかし、それぞれの活動には共通する点がありました。それは、現場をよく観察し、現地の人々と一緒に課題を見つけ、その地域で実行できる方法を考えながら、一つずつ改善していく姿勢です。
 故障したパソコンの部品を再利用すること、病院で長年実現できなかった改善を一つ形にすること、児童が自ら考える授業を積み重ねること、橋が大きく損傷する前に点検する仕組みをつくること。一つひとつは小さな取り組みに見えるかもしれません。しかし、現地の同僚とともに取り組み、その経験や知識が隊員の帰国後も現場に残り、活用されていくことは、JICA海外協力隊の活動における大切な成果の一つです。

4名の隊員は、これまでの経験を生かしながら、任期後半の活動をさらに発展させていきます。
JICAパプアニューギニア事務所では、今後も各地で活動するJICA海外協力隊員の取り組みを紹介していきます。

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