現地に残る農業技術を目指して―東ハイランド州で取り組んだ2年間
2026.08.17
2024年8月から2026年8月まで、パプアニューギニアの東ハイランド州農業畜産局に配属され、野菜栽培隊員として活動した原 大(はら まさる)隊員が、2年間の任期を終えるにあたり帰国報告会を行いました。報告会では、配属先の職員や農家リーダーとともに進めてきた活動について英語で発表。また、農業分野のJICA海外協力隊員などを対象とした分科会では、現場での試行錯誤や、活動を現地に残すために大切にしてきたことを紹介しました。
東ハイランド州では、多くの小規模農家が限られた収入の中で農業を営んでいます。
原隊員は農家への聞き取りや土壌調査を通じ、土壌の養分不足や病害虫などの課題を確認しました。しかし、農家にとって、高価な肥料や農薬を継続して購入することは簡単ではありません。
そこで考えたのが、「できるだけお金をかけず、農家自身が続けられる方法はないか」ということでした。
原隊員が着目したのは「緑肥」です。植物を育てて土に還し、土壌の状態を改善する農法で、現地で種子を増やすことができれば、新たな資材を購入し続ける必要も少なくなります。複数の植物を小さな試験区で育てたところ、「クロタラリア」は現地でも順調に生育し、種子を採取できることを確認しました。
まず小さく試し、結果を確認してから広げていく。
現地の条件に合った方法を探すことが、原隊員の活動の基本となりました。
原隊員が活動で特に大切にしたのは、農業技術そのものだけではありません。配属当初から自分の考えを押し付けるのではなく、まずカウンターパートとの信頼関係を築き、「配属先が必要としていること」と「自分にできること」を一緒に考えました。また、隊員自身が農家一人ひとりに技術を教え続ける方法では、帰国後に活動が止まってしまいます。
そこで、農業畜産局の職員や、地域で信頼されている農家リーダーと連携し、彼らを通じて技術を地域へ広げる仕組みづくりを進めました。活動を始めた頃、農家リーダーの前に立って緑肥について説明していたのは原隊員でした。しかし、活動後半になると、その役割を農業畜産局の職員が担うようになりました。
原隊員ではなく、現地の職員が農家リーダーに説明する――。この変化は、2年間の活動の大きな成果の一つです。
活動を通じて原隊員が気付いたことがあります。農家リーダーは、単に農業技術を持っている人ではありませんでした。地域の人を農作業に雇い、現金を得る機会をつくったり、収穫した作物を地域の人たちと分けたりするなど、地域社会を支える存在でもありました。そうした人たちとともに活動することで、技術を一人の農家だけで終わらせず、地域へ広げることができます。
現在では、農業畜産局が管理する展示圃場だけでなく、農家リーダーの圃場でも緑肥の栽培が進められています。
JICA海外協力隊の任期は限られています。
そのため原隊員は、常に、「自分がいなくなった後、この活動を誰が続けるのか」を考えてきました。
試験栽培や土壌調査の結果を資料として残すこと、活動内容を関係者と共有すること、そして研修ではできるだけ現地の職員自身に説明してもらうこと。こうした一つひとつの工夫によって、「隊員の活動」から「現地の人たちの活動」へと少しずつ変えていきました。
原隊員が東ハイランド州に残したのは、クロタラリアの種や農業技術だけではありません。現場を知り、地域の人と一緒に考え、小さく試し、そして現地の人たち自身が続けられる形へつなげていく――。
帰国報告会からは、2年間をかけて築かれた人と人とのつながりと、原隊員の帰国後も続いていく活動の姿が見えてきました。技術や知識だけでなく、地域の人々が主体となって取り組む仕組みを残していくこと。それは、JICA海外協力隊が目指す国際協力の大切な形の一つです。
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