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Together for Ukraine
―全面侵略から4年、ウクライナの「今」を考える
セミナー開催報告:忘れないこと、伝え、つなげること

2026.04.09

ロシアによる全面侵略が5年目に突入し、国際社会の関心が徐々に薄れる中で、改めてウクライナの「今」を知り、私たちができることを考えることを目的として東京と広島でイベントを開催しました。こちらのレポートは東京でのセミナー「Together for Ukraine」について報告します。当日は93名の方にご参加いただき、会場は熱気と真剣なまなざしに包まれました。


第1部 ウクライナの現状と個人の決断

ロシアによるウクライナへの全面侵略開始後、日本での生活を経て、現在はウクライナ経済・環境・農業省に勤務しているマリヤ・ボンダレンコ氏が登壇しました。マリヤ氏は、戦争によってウクライナの誇りが深く傷つけられ、多くの命が奪われてきたこと、さらに海外への避難や出生率の低下により人口が減少しているという、厳しい現状について語りました。
そのような困難な状況の中でも、マリヤ氏は「世界に変化を望むなら、まずは自分から」という信念を胸にウクライナへ帰国し、日本とウクライナの架け橋としての役割を担っています。省庁内外で精力的に活動するその姿は、参加者に強い印象を残しました。

マリヤ氏が活動する「未来のまちプロジェクト」スライド

ウクライナの現状について話す、マリヤ・ボンダレンコ氏

また、マリヤ氏は現在取り組んでいる活動についても紹介しました。その一つが、戦争によって卒業証書を受け取る前に命を落とした仲間一人ひとりの姿や趣味、夢を記し、それぞれの人生を象徴する卒業証書として展示する『発行されなかった卒業証書展』です。この展示は、戦争の犠牲者を単なる数字としてではなく、固有の人生を生きた一人の人間として記憶することの大切さを伝えるものです。
この展示はこれまで神戸や沖縄で開催されてきましたが、今回初めて東京のJICA地球ひろばにも展示されました。

「10年後の未来のまち」に参加した子どもたちの絵画の展示の様子。JICA地球ひろば1階の月間特別展示(2026/3/2-3/28)にて展示。

さらに、ウクライナの子どもたちが10年後の未来を想像し、自分たちの住む町を描いた絵を展示する『未来のまちプロジェクト』での活動についても紹介されました。この活動は一般社団法人あっと未来コミュニティが主催し、マリヤ氏がサポートを行っているものです。戦時下にあっても希望を失わず、未来を描き続ける子どもたちの姿は、多くの参加者の心を打ち続けています。また、『未来のまちプロジェクト』で子どもたちが描いた絵画は、地球ひろばでも展示され、イベント前後の時間を通じて来場者に紹介されました。戦争による深い悲しみと向き合いながらも、未来への希望を次世代へとつなごうとするマリヤ氏の取り組みは、日本とウクライナを結ぶ架け橋しての役割を体現するものであり、私たちに多くの示唆を与えるものとなりました。

「発行されなかった卒業証書展」JICA地球ひろば2階にて展示(2026/3/2-3/28)。

第2部JICAによる復旧・復興支援についての説明

中東・欧州部ウクライナ支援室日比野崇副室長が、JICAのウクライナ復旧・復興支援事業について紹介しました。
ウクライナでの危機に対して、震災からの復興のノウハウ、他国での支援経験など日本ならではの強みを生かした、がれき処理、地雷除去をはじめとした協力を説明しました。また、民間企業とも協力し、戦後いち早く日本企業が進出し、持続的な復興につなげることの重要性が説明されました。

JICAのウクライナ支援事業について話すウクライナ支援室の日比野副室長
写真提供:NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY

第3部 戦時下でも失われない歌とダンスの力

ニュースでは戦闘や破壊の場面が注目されがちですが、人々はそのような状況でも“日常の暮らし”を守り続けています。
そこで、第3部では、NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY・アートスタジオ「ドゥカチ」の皆さまがステージパフォーマンスを披露し、来場者と一緒にフォークダンスを体験する時間も設けました。
「ヘイ!はやぶさ(Гей, соколи)」という楽曲では、日本語とウクライナ語の歌声が美しく響き、参加者も自然と掛け声で応え、会場全体がひとつのリズムを共有していました。続く日本語でじゃがいもという意味のフォークダンス「カルトプリャ(Картопля)」では、参加者が輪になって踊り、笑顔と温かな一体感が広がりました。参加者からは、「厳しい状況の中で明るい日常を保つ努力」「辛いことが続きながらも小さな幸せを感じている」「日本でパワフルに活躍されている姿を見て彼らの強さを感じた」とのコメントが寄せられました。

ウクライナコーラスを披露するアートスタジオDuKaChiの皆様  写真提供:NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY

閉会 登壇者・参加者からのメッセージ

「ウクライナのために日本にいる私たちに何ができるのか。」その問いに対して、登壇者たちは一人ひとりの“関わり続ける姿勢”の重要性を語りました。

マリヤ・ボンダレンコ氏 からのメッセージ

まず「このイベントに参加してくれたこと自体がウクライナのためになる」こと、そして、ウクライナの文化や歴史、そして戦争の背景について知り、学び、それを周囲へ伝えていくことは、誰もができる支援であるとも強調しました。
さらに、復興においては民間の連携が欠かせず、「一人ひとりの理解と関与が大きな力になる」と語り、継続的な関心の重要性を訴えました。

イーゴル・イェブトゥシュク氏(KRAIANY副理事長)のメッセージ

全面侵略から1488日目、ウクライナは闘い続けています。戦争が長く続く中で日本の支援の重要性を強調しつつ、わたしたちにできる支援の形としてまず、寄付があること、それと同時に大切なのは 「忘れないこと」 だと述べました。今日学んだことを家族や友人、周囲の人々へ伝えていくこと、声を上げることがウクライナというキーワードが世論から消えないためにとても重要な支援である、と支援者に呼びかけました。

参加者にメッセージを届けるマリヤ・ボンダレンコ氏
写真提供:NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY

参加者にメッセージを届けるイーゴル・イェブトゥシュク氏(KRAIANY副理事長)写真提供:NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY

参加者からのメッセージ

参加者からは、「最近報道が少なく、事態は落ち着いていると思い込んでいましたが、現実はそうではないと気づかされました。」「厳しい現状がある一方で、未来に向けた復興の取り組みが少しずつでも確かに進んでおり、決して絶望だけではないと感じました」「今回のイベントを通じて得た学びや、ウクライナの文化・現状を周囲の人々に伝えていくことこそが、日本にいる自分にできる支援だと思いました」といった感想が寄せられました。

まとめ 遠くて近いウクライナ

インターンとして支援現場の話を伺う中で、多くの方が口をそろえて語る言葉がありました。「ウクライナの日常は9割、その中に1割の戦争がある」
戦争が当たり前になってしまうほど長引く中で、昼間は働き、学校に通い、夜には空襲警報が鳴り響く、そんな「日常」が続いているといいます。
それでも、人々は力強く「日常」を守ろうとしています。その姿に触れると、遠い国の出来事だと思っていたものが、急に身近な現実として感じられる瞬間があります。
今回のセミナーが、参加者にとってウクライナの「今」を知り、自分たちにできることを考えるきっかけになりましたら幸いです。
JICAは今後も、ウクライナの人々が真の「日常」を取り戻せる日まで、復旧・復興支援に取り組んでまいります。

中東・欧州部ウクライナ支援室職員、インターン、登壇いただいたマリヤ氏との集合写真

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