安全な水が暮らしを変える:南スーダン国ジュバ市水供給改善計画・完工式の開催

2023年3月17日

給水開始のバルブを回すキール大統領と安藤理事

浄水施設の外観

南スーダン共和国首都ジュバにおいて、無償資金協力「ジュバ市水供給改善計画」によって建設された浄水施設の完工式が、3月16日に開催されました。南スーダン側からはキール大統領、水資源省大臣に加え、大統領府大臣、内閣担当大臣、外務国際協力大臣など主要な閣僚らが出席、日本側からは堤尚広駐南スーダン大使、安藤直樹JICA理事、相良冬木JICA南スーダン事務所長らが出席しました。

本事業は南スーダン独立以前の2007年に、ジュバ市復興・開発に向けた調査から始まり、独立直後の2013年にジュバ市民からの大きな期待とともに建設が開始されました。その後、二度の国内紛争と新型コロナウイルス感染拡大による国外退避を挟んだ結果、工期は10年に及びましたが、関係者の不断の努力によって度重なる中断を乗り越え、2023年1月に待望の完工を迎えることとなりました。

ジュバでは人口増及び配水管網の老朽化により、既存の浄水場で作られた水はごく一部の住民にしか届いていませんでした。多くの人々は基礎的な社会サービスの欠如のため、浄水されていないナイル川の原水で生活し、健康を害したり、時間と労力をかけて遠い井戸の水を汲みに行ったりと、不便な暮らしを強いられてきました。劣悪な水質による水因性の感染症の発生という問題もありました。

本事業によって、日量10,800立方メートルの浄水能力を持つ新しい浄水施設、8か所の給水車給水所、120か所の公共水栓が建設されました。安価できれいな水を手に入れることができるようになった住民から喜びと感謝の声が上がっています。本事業を通じて安全な水にアクセスできるジュバ市民は、以前の10倍以上となる約40万人になる見込みであり、生活環境と公衆衛生の向上にも寄与することが期待されます。

式典では、安藤理事から本事業のもつ意義として、人間の生命に欠かせないきれいな水の供給、その供給を通じた市民と行政の間の信頼関係構築、社会サービスを提供し続けるための組織・人材の能力強化、そして南スーダンにおける平和と安定の重要性、それがもたらす一層の自由と開発について協調しました。これに対し、キール大統領からは、「本事業は、人々の生活に真の効果のある偉大な開発協力であり、昨年のフリーダムブリッジに続く素晴らしい贈り物を届けてくれた日本政府と国民に対し、改めて心より感謝する。本施設が長く国民のために役立つことを確実にするために、水資源・灌漑省を始めとするすべての関係機関に、本施設を持続的かつ効果的に管理、運営、維持すべく努めるように指示する」と述べました。

JICAは同事業と並行して、水道事業運営能力の強化を目的とした技術協力を2010年から実施しています。その結果、浄水水質の改善、顧客数の増加、料金徴収率の改善等の成果が確認されています。さらに、2022年3月から新しい技術協力「ジュバ市きれいな水供給プロジェクト」を開始し、浄水施設の運営母体である南スーダン都市水道公社が施設の適切な維持管理を行い、自律的な水道事業運営ができるよう、包括的な支援を行っています。

今後、新設された浄水施設により、安全な飲料水の供給を拡大し、ジュバ市民の生活環境と公衆衛生の向上に寄与することが期待されます。JICAは、質の高いインフラ整備を通じて、開発途上国の課題解決に貢献していきます。

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