【JICAボランティア事業】JICA海外協力隊を知る 世界へ一歩踏み出すヒント

2022年6月14日

世界各地の途上国で活動する『JICA海外協力隊』

 青年海外協力隊が初めて海外に派遣されたのは1965年。以来50年以上にわたり、世界98カ国で5万人以上の隊員が開発途上国や中南米地域の日系社会の課題解決に取り組んできました。2018年には新制度が始動。職種を選んで応募できる『一般案件』、より専門性の高い個別案件に応募できる『シニア案件』と2つの応募区分が設けられ、総称は『JICA海外協力隊』へと変わりました。2020年には新型コロナウイルス感染拡大により全隊員が一時帰国しましたが、状況を鑑みながら昨年より募集を再開。今回は、協力隊での活動経験を持ち、現在はJICA東北でボランティア担当を務める2名の体験談を交えながら、JICA海外協力隊についてご紹介します。

遠藤職員(前列右から2番目)とサッカークラブの生徒たち

JICA東北 ボランティア班:遠藤暁
活動期間:2018年6月~2020年3月 ※本来2020年6月までの任期をコロナ禍で短縮
職種:サッカー
派遣国:ボリビア
派遣先:サッカークラブ FUTVALLE(フットバジェ)
活動内容:幼児から青年を対象としたサッカー指導

学校で体育を指導する小林職員(左)

JICA東北ボランティア班:小林美育
活動期間:2019年12月~2021年12月 ※コロナ禍により2020年3月~2020年12月に一時帰国したのち、再赴任
職種:体育
派遣国:カンボジア
派遣先:ネット・ヨン中高等学校
活動内容:体育教育の実践と普及に向けた現地教員への指導

自分に何ができるのか? ヒントはこれまでの人生すべてにある

各地で開催される説明会では、隊員の体験談を直接聞くことができる

 海外協力隊と聞くと「海外でボランティアをする」という漠然としたイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。JICA海外協力隊には9つの分野で計190以上の職種があり、農畜産業や建築土木、医療や教育、行政、観光、マーケティングなどその種類は多岐にわたります。隊員は自らが持つ技術や知識、経験などをもとに適した案件へ派遣されます。例えば遠藤さんの派遣は、プロ選手を目指して大学までサッカーを続けていた経験を生かしたもの。一方小林さんは、大学で体育教育を専攻していたこと、卒業後に教育機関で約1年半の勤務経験があったことが海外で体育を教える派遣につながりました。当初は「体育」関連の実務経験不足から別の職種に応募したそうですが、選考を通して総合的な経験が評価されました。

 特に一般案件では、「自分でも協力隊に応募できるか?」といった相談がよく聞かれます。小林さんは「職歴はもちろん、部活動の経験や趣味などから適した職種が見つかることも。まず、自分がこれまでやってきたこと、知っているもの、得意なものをすべて洗い出し、そこから自分にできることは何か考えてみるとよいと思います」と話します。さらに遠藤さんからは「活動を通して“これからやってみたいこと”に挑戦される方もいます。過去の自分ではなく、目指す未来の姿から逆算して考えるのもひとつの方法。迷ったときにはぜひJICA東北に相談してほしいですね」と助言がありました。

いかに周囲を巻き込めるか。人とのつながりが活動を深化させる

二本松訓練所での派遣前訓練の様子

 活動で大切なのは、技能や知識だけではありません。周囲とのコミュニケーションも非常に重要です。そこで立ちはだかるのは言葉の壁。小林さんも「はじめは言葉一つひとつ質問するような状態」だったそうですが、コミュニケーションを重ねることで現地の人たちとの仲が深まり、自身の存在も認めてもらえるようになったといいます。

 語学については、渡航前に行われる『派遣前訓練』でも派遣先の言語を学ぶことができます。遠藤さんと小林さんもスペイン語、クメール語をそれぞれ学習したとのこと。約70日間かけて、語学のほか危機管理能力や協力隊としての姿勢などを学ぶこの研修は、同期の隊員と顔を合わせる場でもあり、小林さんは「今から一人の隊員として途上国へ行き現地に貢献しよう、という人たちとの出会いから得たものは何より大きかった」と振り返ります。人とのつながりは、現地での支えにもなります。活動は基本的に隊員一人で行いますが、ともに課題解決を目指す現地の人たち、訓練で出会った同期、同様の活動に取り組む他の隊員やNGOなど、さまざまな人と関わり、周囲を巻き込んでいくことで活動はより深く充実したものになります。

※感染症対策のため、派遣前訓練は合宿とオンラインを組み合わせて行う予定です

困難を乗り越えるカギは、受け入れる力・考える力

遠藤さんと一緒に汗を流したサッカークラブの生徒たち

「カンボジアは第二の故郷」と話す小林さん

 活動においてもう一つ欠かせないのは、現地の文化を理解すること。これについて遠藤さんには派遣先ボリビアでのサッカー大会にまつわる思い出が。「開幕に向けて皆でモチベーションをあげて練習してきたのに、一向に大会が始まらず……結局開会式は3週間遅れで行われました。しかし、こうしたことは海外ではよくあります。徐々に『あ、またか』と受け入れられるようになりました。いい意味できっちりしていない、おおらかな生き方はボリビア人の良いところ。現地の文化や空気に馴染むことは、隊員としてとても大切だと思います」

 柔軟性は難局に直面した時の力にも。コロナ禍での活動を経験した小林さんは、自ら考え臨機応変に行動することで逆境を乗り越えました。「学校が閉鎖されて、本来の活動ができなくなってしまったんです。そこで行ったのは、新しい活動を自分でつくること。近所の人たちと体操をしたり、オンラインの活用を検討したり。その時できることを考えて実践する中で、“なんとかなる精神”も身に付いたかなと思います」

自分の目で見て、考え、行動する。その経験がもたらすもの

 困難に向き合い自ら道を切り拓いてきた隊員たちは、その経験を生かし、帰国後も国内外のさまざまな分野で活躍しています。「今後も国際協力に関わっていきたいという将来の道筋を見つけられたのは、活動を通していろいろなものを実際に目にしたからこそ」と話す遠藤さん。小林さんもこう続けます。「以前、途上国に抱いていたのはテレビなどで目にする貧しいイメージでした。でも、生き生きと暮らす現地の人たちと接するうちに『豊かさって何なのだろう』と考えるようになりました。本当にたくさんの出会いがあり、自分の心も豊かになって帰ってきたような気がします」。協力隊での活動から得たものは「五感で感じることを信じて生きていく体験」だという二人。あなたもJICA海外協力隊で一生ものの経験をしてみませんか。

JICA東北では随時応募相談を行っております。お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:JICA東北ボランティア事業担当
TEL:022-223-4772
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