COVID-19医療現場の最前線で活躍する研修員は何を学んだのか?

2019年12月より新型コロナウィルス(COVID-19)の類をみない流行に、世界では大きな混乱が起きています。現在も新たな変異種「オミクロン株」の流行でその対応に紛糾しています。課題別研修「薬剤耐性(AMR)・医療関連感染管理」は、新型コロナウィルスの医療現場で今も奮闘している行政官や医療従事者9名を対象に薬剤耐性(AMR)および医療関連感染対策(新型コロナウィルス対応を含む)について遠隔研修(オンデマンド+オンライン)を実施しました。

2021年12月24日

COVID-19にも負けない強靭な医療関連感染管理システムの構築を目指して 

現地で遠隔研修に参加するベトナムの研修員

現地で遠隔研修に参加するエジプトの研修員

 2019年12月に発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、類をみない感染力により世界中で流行し、多くの死者をもたらしました。流行当初、ワクチンもなく患者数もみるみる世界中で増えていき、人類がこれまで経験したことのない世界規模での脅威となりました。「ロックダウン」「換気」「ソーシャルディスタンス」などといったワードをよく耳にするようになりました。その後、ワクチンも開発され、一時は感染者数も減少傾向がみられましたが、先ごろ、新たな変異種「オミクロン株」が発見され、世界中で新たな流行が見られています。
 開発途上国において、感染症は経済・社会発展の阻害要因となっています。さらに主として貧困層を苦しめていることから、感染症への対策は重要な課題となっています。
 課題別研修「薬剤耐性(AMR)・医療関連感染管理」では、新型コロナウィルスの医療現場で今も奮闘している行政官や医療従事者9名を対象に、国立国際医療研究センター(NCGM)のご協力を得て2021年11月5日から11月26日まで遠隔研修(オンデマンド研修+オンライン研修)を実施しました。
※参加国:ブータン(2名)、エジプト(2名)、モンゴル(2名)、ベトナム(2名)、ザンビア(1名)。
 本研修は、1987年より約34年間実施されており、毎年10名程度の研修員を受け入れてきました。薬剤耐性(AMR)および医療関連感染対策の知識及び技術に加え、病院の組織体制やスタッフ教育に必要なスキルまで医療関連感染管理システムの構築に関して重要である項目が包括的に組み込まれており、自国の病院において医療関連感染対策が適切かつ効果的に実施されることを目標に、ひいては、感染症対策のための強靭な保健システム強化を目指しています。
 今年度は、コロナ感染拡大により本邦研修の実施が難しいため、遠隔研修で実施しました。遠隔研修は、オンデマンド学習とオンライン研修で構成され、オンデマンド学習ではNCGMにおける感染管理、ICNの役割、AMR対策、医療廃棄物等といった講義の動画に加えNCGMの第一外来、手術室、リネンクリーニングといった現場の視察動画を視聴し、学習しました。 

共に学び共に造りあげる —Knowledge Co-Creation Program-  

 オンライン研修は、予めアンケートで収集していたオンデマンド教材に関する質問に対して回答するセッションとともに、2あるいは3グループに分かれて、グループワーク(ディスカッション)を実施しました。

Gantt Chart

研修委託先である国立国際医療研究センター(NCGM)の関係者

オンライン研修の様子

 1回目のグループワークでは、オンデマンド教材で学んだ内容を元に、日本と研修員の国におけるAMR(薬剤耐性)サーベイランス(監視)やIPC(感染予防・管理)訓練、地域連携、検査能力等についての違いを考えつつ、何が自国における課題であるか、何が自国では改善できそうかを議論しました。
 2回目のグループワークでは、日本と研修員の国における医療廃棄物マネージメント、COVID-19の対応等の違いを考えつつ、1回目のグループワークと同様に議論しました。
 研修員自身が主体的にグループワークに参加し、積極的に意見交換をしながら発表して有意義な時間となりました。
 3回目のグループワークは、3つの小グループに別れて、お互いのアクションプランを相互に確認する時間としました。研修期間中に学んだアクションプラン作成のための講義内容も考慮しつつ、互いのアクションプランをより向上させるために、講師と研修員で議論しました。
 最終日の11月26日は、自国に戻ってからのアクションプランを計画し発表しました。アクションプランは、初めに状況分析、関係者分析、プロブレム/オブジェクトツリー分析で整理を行い、分析の結果得られたインプット・アウトプットの中で優先順位が最も高いもので、アクションプランの目標及びゴールを設定し、ロジカルフレームワークやGantt Chartを作成しました。

共に新型コロナウィルスの未曾有の危機を乗り越えよう!

モンゴル(根本原因分析を行っている様子)
奥正面が研修員

エジプト(COVID-19 パンデミック禍の感染予防と管理(IPC)のためのアクションプラン準備
左端が研修員

 今回、参加した研修員は、アジア、アフリカの地域から参加しており、病院の感染専門医、院内感染対策のジェネラルリスクマネジャー、品質管理部責任者、薬剤耐性を取り扱う保健省のプログラムオフィサーなど感染症対策に関わる行政官や実務担当者です。彼らは、自国においてCOVID-19対応で日々、奮闘しています。
 本プログラムでは各国のCOVID-19感染予防や対応についても情報交換を行いました。研修員間の相互学習において各国のCOVID-19の貴重な経験を共有することで、非常に有益な時間となりました。
 モンゴルにおいては、適切な薬剤耐性や院内感染対策がないので、現在、適切なガイドラインを作成することに取り組んでいます。モンゴルからの研修員BATBILEG Bolortuyaさんは、本研修で得た知識を勤務している病院で応用していき、その後に他の病院でも本プログラムの薬剤耐性と院内感染のグットプラクティスを共有し、指導していきたいとのことです。
 ベトナムの病院で感染管理部に勤務しているNGUYEN Duy Xuan Nhat さんは、病院内で発生する感染症を監視・監督し、院内感染を減らすために手引きや感染の原因分析を行っています。
今回、本プログラムで学んだCOVID-19の感染拡大と闘うための実務的な対策を勤務している病院で応用していきたいとのことでした。

 どの研修員も、本プログラムで作成したアクションプランに基づいて計画的に実行し、自国の課題解決に寄与することが期待されています。

 世界に目を向けると、COVID-19の感染拡大は抑えられていません。この未曾有の危機を共に乗り超え、希望に満ちた明るい未来が訪れますように祈っています。

コース名:薬剤耐性(AMR)・医療関連感染管理
参加国: モンゴル(2)、ベトナム(2)、ブータン(2)、エジプト(2)、ザンビア(1) 合計9名
研修期間:2021年11月5日~2021年11月26日
研修委託先:国立国際医療研究センター(NCGM)