感染症対策分野でJICAの技術協力を支える本邦企業

臨床検査に不可欠な「洗浄・滅菌」の分野における技術と経験を社長自らJICA研修員に伝えようとする背景にあった企業理念に迫りました。

2022年1月25日

新型コロナウイルスをはじめ世界の感染症対策への貢献      

サクラ精機の教育研修センター(長野県千曲市)

約2年前からの新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の世界的な感染拡大と共に、各国での迅速で的確な病原体の診断技術の重要性が改めて認識されている昨今ですが、開発途上国における医療情報ネットワークの強化と信頼できる検査技術を確立する必要に迫られる中、このような課題の解決を目指してJICA東京が実施している課題別研修「臨床検査技術-新興・再興感染症にも対応できる臨床微生物学)」にも大きな期待が寄せられています。
同研修には1988年度に始まって以降、90か国近い開発途上国から300名以上の医療従事者が研修員として参加してきました。
2021年度も2022年1月12日から2月4日にかけて7か国(東ティモール、スリランカ、サモア、イラン、ケニア、ナイジェリア、ガボン)11名の医療従事者を対象に「臨床検査技術」の遠隔研修を実施していますが、本研修実施は日本国内で医療検査機器の製造と技術・知識の普及に携わる数多くの企業の貢献の上に成り立っております。
例えば医療施設における感染症対策には、施設内で行われる各種機器材の洗浄・滅菌が、細菌やウイルス等微生物の特性を正しく理解され、適正に実施されることが不可欠です。
今回は当該分野で2016年度から「臨床検査技術」課題別研修の他にもJICA東北が実施する課題別研修「医療器材管理・保守」コースへの協力を行うなど開発途上国における公衆衛生の向上と医療機材の適正なメンテナンスの普及に努めていただいているサクラ精機株式会社(東京本社:東京都中央区、長野本社:長野県千曲市、代表取締役会長: 松本 謙一、代表取締役社長:東 竜一郎)をご紹介します。

企業理念「世界規模で医療の質の向上に貢献」の実践へ

サクラ精機は主に感染制御や病理・免疫診断分野で北米、ヨーロッパ、東南アジアをはじめ中東やアフリカ諸国へ機材を提供する等、グローバルに展開している企業です。
同社は、1978(昭和53)年に長野本社のある長野県千曲市に医療機器メーカとして日本で初めて「研修センター(現:教育センター)」を開設し、以来延べ45,000名以上の国内外からの研修生を対象に、病院内での感染対策上、重要な洗浄・滅菌に関する研修を40年以上に渡り継続的に実施してきました。これら研修は、微生物に関する基礎知識や洗浄・滅菌の原理の習得や、機器の正しい使い方、修理、保守・メンテナンスと多岐に亘ります。

「臨床検査技術」研修員への教育研修センター内での講義風景(来日研修)

同社は、外国人技能実習生をはじめ開発途上国の医療人材を数多く指導してきた経験を活かして、開発途上国の公衆衛生の向上に不可欠な洗浄・滅菌という側面でJICAの研修員への実習や技術指導に取り組んでいただいてきました。
これまでに参加した研修員からは同社の機器を使用した実習で目の当たりにした最高水準の技術を賞賛する声だけでなく「機器を扱う際のマスク着用をはじめ安全対策、規律正しさや組織力など技術を支える日常の取り組みに感銘を受けた」との声も寄せられていました。
今年度も、昨年度に引き続き遠隔でのオンライン研修実施となるため同社での訪問実習は叶いませんでしたが、遠隔研修では同社の東社長自らの声で同社の持つ洗浄・滅菌の技術やノウハウを研修員に伝えていただいています。
東社長は「現地における洗浄・滅菌の重要性、知識・教育レベルがまだ日本と大きく異なることを実感しています。開発途上国の洗浄・滅菌の環境を改善するために、まずは洗浄・滅菌業務に携わる人材の知識に加え、再生処理の品質を高めるために例えば、被滅菌物の分解、組み立て、検査、包装方法などの技術レベルも上げる必要性があると考えています。」と語られていました。

継続したサポートで国際協力を支える 

「臨床検査技術」研修員への実機を前にした実技講習(来日研修)

また、これまで研修に参加したザンビア、ウガンダ、ケニア、セネガル、カザフスタン、東ティモール等の国々に対しては保健医療分野における技術協力の一環でJICAより検査機材が供与されていますが、供与されてきた機材には同社製品が含まれることもあります。これらの国々より時には同社の現地代理店を通して部品の購入方法、取り扱いマニュアル等について問い合わせや依頼を受けることもあり、機材を適正に且つ継続的に使用できるよう日々対応いただいています。
課題別研修後あるいは機材供与後も開発途上国に対して同社がサポートを継続しながらJICAの国際協力分野、とりわけ開発途上国の衛生環境の改善と医療機材の適正管理に対し、医療機器メーカとしてJICAの技術協力を支えてくださっていることを忘れないようにしたいと考えています。