人生の先輩から学ぶ経営学!~民間企業のSDGsへの貢献~

共栄大学の学生が、さいたま市にある株式会社ICSTを訪問。起業~現在に至るまでのビジネス展開、厳しくも楽しくもある道のりについてお話しを聞きました。

2021年8月3日

生命の循環と経済の循環をつなぐ企業

 「血液の循環など生命にかかわる循環は放っておいても自然と行われますが、経済の循環は自ら起こさなければなりません。」そう話すのは株式会社ICST(埼玉県)代表取締役の横井博之さん。
社名であるICST(Institute of Circulation System Technology)のとおり、循環器系に関わる様々な医療機器や健康機器を通して、健康な生活の実現に貢献する企業です。
 2020年度第一回のJICA中小企業・SDGsビジネス支援事業に採択された同社は、「インド国乳がん早期発見のための自己検診補助手袋に係る基礎調査」の実施をします。

 横井さんから
「今回の事業では、SDGsの17の目標のうち「3:健康 4:教育 10:格差是正」への貢献を目指しています。 インドは乳がん死亡率が世界最多となっており、この原因として、知識不足、自己検診率が低く、早期発見が難しいことが考えられます。ICSTの製品である「ブレストケアグラブ*」を普及させ、自己検診、早期発見の重要性を感じてもらいたい。また、インドでは女性の仕事が少ないことにより、男女間で地位の格差が生まれています。農村部の女性達が提案製品の販売員として、乳がんの早期検診の啓発活動を行いながら製品の販売を行い、手数料収入を得て自活の道を切り開くことで、貧困格差是正に貢献したいと考えています。」
と熱い想いを語ってくれました。

【画像】 同社のビジネスは、日本・台湾・ロシアの三国間貿易から始まったということもあり、意図せず起業当時からSDGsの目標達成17:「パートナーシップで目標達成しよう」と関わりがありました。また、同社では、働く方々も多国籍で、社内ではいろいろな言語が飛び交っています。
 現在では1:「貧困をなくそう」、3:「すべての人に健康と福祉を」、8:「働きがいも経済成長も」、9:「産業と技術革新の基盤をつくろう」、12:「つくる責任つかう責任」の目標達成にも貢献しています。

 *ブレストケアグラブ:
肌に密着性の良い複合 EVA(合成樹脂)シート製グラブを使用した「乳がん検診手袋」。自己触診の際に指先の敏感度を高める工夫がしてあるため、指先の感覚が敏感になり、素手で直接触った場合には知覚できない小さな物も感じ取ることができ、しこりなどがん発生要因と思われる異物感が分かり易くなる。

縁を大切に

【画像】 今回、企業見学に参加したのは「開発途上国の貧困・格差の問題と開発協力の可能性」をテーマに学ぶ、共栄大学 国際経営学部 国際経営学科 小林尚之教授のゼミ生8名。
 参加した学生からは「ロシア、台湾の事業パートナーとは、どこで出会ったのですか?」「起業をする際のリスクについての不安はありましたか?」などの質問や、 「ICSTの講義を受け、起業する上でどのようなことが重要なのか、どのようにして自分の商品を売り込んでいくのがよいのか、とても勉強になりました。」、「医療は今までなじみのない分野でしたが、お話を伺って医療分野の仕事に関心を持ちました。」 などの感想がありました。

横井さんから学生たちへのメッセージ
・「学生時代の友人関係は一生続くものです。誠心誠意良い付き合いをして、人生の輪と見識を広げてください。人の縁とは不思議なもので、何十年も経過してからまた出会い、共に仕事をすることもあります。」
・「人生の2/3は仕事というものに費やすことになります。同じ仕事をするなら楽しく、社会の役に立ち、自分の足跡が残せるような仕事を行って下さい。そして、失敗を恐れずチャレンジしてください。」
・「全ては循環へとつながります。自分自身が循環の起点となれればよりいいですね!」

今回、人生の先輩から実際に学んだことで、学生たちは今までより起業や働くこと、の具体的イメージを持つことができるようになったのではないでしょうか?
小林教授は、ゼミでの学びを通じて学生たちに、「世界に視野を拡げ、自分や日本のことだけでなく、他人や他国の人々に共感し思いやる心」、「社会貢献に向けた志」を持って成長してほしいと考えています。
この企業訪問が、1人でも多くの学生にとってこのような考えを持ち、社会にでて活躍するきっかけとなれば幸いです。

市民参加協力第一課・高橋瑞樹

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