ブレッドフルーツから学ぶ食品ロス問題!

南太平洋に位置するトンガ王国で伝統的に作られ、主食として食べられてきた「ブレッドフルーツ(パンの実)」ですが、保存がきかないため大量に廃棄されてしまっています。現在トンガで行われている草の根技術協力事業では、廃棄問題を解決しつつ、実は優れた健康食品であるブレッドフルーツの魅力に着目し、人々の健康・より良い暮らしを支援しています。 9月29日は食品ロス・廃棄啓発のための国際デーです。今日は食品ロスや廃棄について一緒に考えてみませんか?

2022年9月29日

ブレッドフルーツという果実を知っていますか? 

ブレッドフルーツ

本プロジェクトが対象とするブレッドフルーツは、太平洋島嶼国やカリブ海諸国で主食の一つとして長く利用されてきた果実です。しかし、ブレッドフルーツは栽培時期が限られることや保存性が低いことから、収穫期には食べきれず全体の7~8割が廃棄されてしまいます。
トンガでは、輸入食料への依存度が高まる中で、国民の食生活パターンが大きく変化しました。根菜類やブレッドフルーツなどのでん粉質食料を基本としたものから、肉・脂質・砂糖などを多用した高カロリー食へと転換したのです。その結果、肥満と成人病の割合が急速に高まり、国民全体で肥満と成人病を抱える人々の割合は、国際的にもワーストクラスとなっています。

ブレッドフルーツの有効活用でつくるより良い暮らし

育苗ハウスで栽培中のブレッドフルーツの苗

このような状況をふまえて本草の根事業は、以下の活動に取り組んでいます。
①伝統的食料作物であるブレッドフルーツの有用性を広くアピールする
②良質のブレッドフルーツを安定的に収穫するための苗木生産技術を開発する
③収穫作業の効率化やサイクロンによる被害を軽減する低木栽培を可能とする剪定技術を開発する
④高所に実をつけるブレッドフルーツの安全かつ果実へのダメージを軽減する収穫用の器具を開発する
⑤収穫期に大量廃棄されているブレッドフルーツの有効活用を図るため、加工食品の開発に挑戦する
(加工事業は、コミュニティと民間セクターとの協働活動として展開)
⑥加工品の国内販売に加えて輸出を目指し、国際的な衛生基準を満たした品質の高い製品を開発する
⑦加工品開発と併行して、その利用方法(レシピ)を開発し、販売活動に活用する

活動開始から5年半・・・得られた成果がこちら!↓

ニュージーランドに輸出しているブレッドフルーツ粉

プロジェクトで開発した収穫用具

2017年3月に始まった本事業は、5年半を経過して、次のような多くの成果を上げています。

①ブレッドフルーツの健康機能(食物繊維が多いため肥満を抑制する)が評価され、トンガ最大の病院で給食に活用されるようになった。
②伝統的な挿し木法に加えて、種子栽培、取り木などの技術を組み合わせて苗木を生産し、コミュニティに提供している。
③低木栽培のための剪定技術の研修を行った結果、樹高約3mでクリスマスツリー型の樹形に整えることができるようになった。
④ブレッドフルーツの実を、傷つけることなく安全に収穫する用具を開発した。
⑤加工品として、冷凍ブレッドフルーツとブレッドフルーツ粉を開発した。いずれも国内市場だけでなくニュージーランドの海外市場にも輸出が開始されている。
⑥ブレッドフルーツの実や加工品のレシピを、専門家(栄養士・調理師など)の協力を得て数多く開発した。上記病院食の他、地元のレストランやカフェでのメニューにも取り入れられている。

ブレッドフルーツ加工事業の展開によって、トンガ国内で農産物加工への関心が高まったことも大きな成果です。さらにその関心は、販売だけでなく、自家消費や保存を念頭に置いたコミュニティベースでの活動にも広がっています。こうした関心の高まりを受けて、コミュニティの女性リーダーを対象にクッキングワークショップを推進してきており、今後は、その参加者がコミュニティでの農産物加工推進のリーダーになってくれるものと期待しています。