オンライン課題別研修の機会を活用したJICA民間連携事業セミナーの開催!

課題別研修「下水道マネージメント」の研修員等に対して、JICA民間連携事業に参画中の企業による技術紹介セミナーを実施しました!本セミナーには、東北センターが実施する下水道分野の課題別研修からも研修員が参加し、非常に有意義な機会となりました。

2023年2月9日

セミナー開催の目的

課題別研修「下水道マネージメント」は、開発途上国政府の下水道技術者に対して、下水道整備等の計画から実施に関する基本的知識を習得するコースです。(新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、2022年度はオンラインにより実施しました。)

11月28日、この課題別研修の機会を活用し、JICA民間連携事業に参画中の企業2社による技術紹介セミナーを開催しました。本セミナーは、研修員にとっては、下水道技術に関する新たな知見を得、日本や日本企業への関心を高める機会となり、企業にとっては、開発途上国における技術の関心度合いを確認したり、開発途上国とのネットワーク構築の一助となることを目的として実施しました。

セミナー概要

プラスチック製の雨水貯留施設の施工過程で、工員がプラスチックのブロックを組み立てる様子について学ぶ研修員。

セミナーでは、まず、タイで普及・実証・ビジネス化事業を実施中の、秩父ケミカル株式会社(東京都千代田区)にプレゼンをしていただきました。

同社の技術は、設置が簡便で安価な、プラスチック製の雨水貯留施設です。
建物が建っている場所や、駐車場などの水が土の中に浸透しない場所では、雨が下水道や川に直接、放流されます。特に開発途上国においては、ゲリラ豪雨や台風の際、行き場を失った雨があふれ、浸水の原因になることがあります。同社の技術は、こうした浸水・洪水対策への貢献を目指しています。

研修生からは、「目から鱗の技術だと感じました。特に都市部で有効であり、将来的に導入を考える可能性があります。」と関心が寄せられました。

脱水後、圧縮された汚泥の様子について学ぶ研修員

   
次に、メキシコで案件化調査を実施中の富国工業株式会社(東京都葛飾区)に、下水処理後に発生した汚泥を効率的に脱水する「スクリュープレス脱水機」についてプレゼンをしていただきました。

メキシコでの調査は、汚水に含まれるし渣を効率よく分離し取り除く、協栄工業株式会社(埼玉県戸田市)の技術と連携し、汚泥の適正処理を行うもので、汚泥処理が適切になされないことによる周辺地域の水質悪化や生活環境への悪影響の改善に向け、貢献することを目指しています。

研修生からは、脱水を促進するための凝集剤について、といった具体的な質問や、プレゼンで紹介されたスクリュープレス脱水機の紹介動画の中で、脱水工程で生じた水が非常に澄んでいたことが印象的であった、等の感想が寄せられました。

より質の高い研修に向けて~同分野の課題別研修を実施する国内センター間での研修機会の共有

本セミナーには、東北センターが所管する課題別研修「下水道資産の適正管理(アセットマネジメント)」コースからも、複数の研修員がオブザーバー参加しました。
同コースでは、老朽化した下水道施設の状態評価や自然災害に強い施設管理に関する知識や技術を習得します。小規模かつ導入及び維持管理が低コストで行える下水道技術は、下水道施設管理の観点からも貴重なナレッジであり、セミナー開催の意義をより高めることができました。

また、東北センター所管の課題別研修で講師を務める仙台市建設局等の動画教材を、東京センターコースの研修員がオンデマンド受講しました。

課題別研修に参加する研修員は、世界中から様々なニーズを持って参加しており、自国のインフラの状況や課題などは国によって大きく異なっています。また、同じ国からの参加でも、都市部、地方、島しょ部等の地域ごとに背景も異なっており、研修参加者全員のニーズを満たすためには工夫が必要です。

他方、全国にあるJICAの国内拠点では、公的機関、地方自治体、民間企業、NGO等、地域の様々な団体の協力を得て、各地域の特色も活かしながら課題別研修を実施しています。
今回、共通する下水道分野の課題別研修を実施する東北センターと東京センターとの間で、それぞれのコースのカリキュラムや特長について情報や意見の交換を進めてきた中、両コースの研修員の関心やニーズにマッチすると考えられる内容について、相互のコースで研修機会を共有することができれば、より有意義ではないかと考えました。この取り組みは、両コースの高質化を図りつつ、研修員の満足度を高めることに繋がりました。

今後も、研修員のニーズを考慮した、より質の高い研修の実施に向けて、創意工夫を重ねてまいります。