すべての人が必要な保健・医療サービスを受けられる、明るい未来に向けて!

開発途上国の医療・保健分野の未来を担う7名のリーダーたちが、JICAの課題別研修「保健衛生管理 ーリーダーシップ及びガバナンス」に参加し、すべての人の健康を支えるためのヒントを学びました!

2022年7月26日

途上国が抱える様々な保健・医療課題 

【画像】 より良い社会を未来に残すため、世界中の人びとが達成に向けて取り組んでいる『持続可能な開発目標(SDGs)』。そのゴール3には、「すべての人に健康と福祉を」という目標が掲げられています。これは、あらゆる年齢の人びとが必要な保健・医療サービス、薬、そしてワクチンなどを平等に受けられることを目指しています。しかし、開発途上国では多くの人が貧困問題や医療資源の不足などにより、十分な保健・医療サービスを受けられていません。そうした障壁を取り除き、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)※を達成するために必要とされるのが「保健システムの強化」です。

TICAD(Tokyo International Conference on African Development)とは、日本が主導する、アフリカの開発をテーマとする国際会議です。今年8月にチュニジアで行われるTICAD8(第8回アフリカ開発会議)でも、保健・医療分野は重要なテーマになっています。

 そこで、本研修では、将来途上国の医療・保健分野でのかじ取り役が期待されているリーダーを対象に、保健システムの強化に向けた講義とディスカッションを行いました。ウガンダ、ガーナ、コンゴ民主共和国、シエラレオネ、タンザニア、そしてリベリアの6か国から7名の研修員がオンラインで集まり、7/4から一週間、研修に参加しました。

 初日は、研修員が自国の保健・医療政策について発表しました。その際、財政的な問題や、医療関係者の知識・スキル不足を挙げる声が多く聞かれ、国は違えど共通の課題に、他の研修員たちも熱心に耳を傾けていました。また、各国の実情をより深く理解しようと、活発な議論が行われました。


※ユニバーサルヘルスカバレッジ:すべての人が、基本的な保健・医療サービスを、必要な時に、負担可能な費用で受けられる状態。

日本の多彩な医療システムに研修員も驚き!   

 講義では、ユニバーサルヘルスカバレッジの重要性や、医療環境のKAIZEN※に向けた取り組みなどについて学びました。その中でも研修員の強い関心を集めたのが、日本における新型コロナウイルス対応についての講義です。ここでは、日本の感染者の推移や感染拡大防止に向けたさまざまな政策について説明されました。特に、日本の医療システムの紹介では、感染者や医療機関、保健所などがそれぞれの情報を共有するシステム(HER-SYS)や、個人のワクチン接種状況を記録するシステム(VRS)などが取り上げられ、多彩なシステムとその機能の高さに研修員も注目していました。
 講義後、研修員からは、緊急事態宣言下での人々の行動について多くの意見が出され、「自分の国では、緊急事態宣言中に自由に外出ができず生活が大変だったが、日本はどうだったのか」など、自国と日本を比較し、そこから学びを得ようとする姿勢が多く見られました。また、途上国では、新型コロナウイルスに加え、マラリアやHIVといった感染症も深刻な問題となっており、そうした感染症についても議論が及びました。

※KAIZEN:モノづくり大国・日本で発展した、安全性の確保と業務の効率を高めるための取り組み。

途上国の明るい未来に向けて、研修員たちの力強い決意! 

研修員の最終プレゼンの様子。短時間で効率的に資料を作成し、発表し合いました。

 最終日には、研修員一人一人が医療・保健分野に関する政策を考案し、必要な予算や取り組み期間、具体的な活動計画についてプレゼンテーションを行いました。発表では、地方の医療サービスへのアクセス向上や、医療機関における労働環境の改善など、それぞれの国が持つ課題に適した政策が紹介されました。それに対し、周りの研修員からさまざまなコメントや質問が飛び交い、それぞれの政策をより充実させることができました。

 加えて、プレゼンテーションでは研修を通じて得た学びについても発表を行いました。「効果的な保健システムを構築するためには、研修員を含む国のリーダーたちだけではなく、さまざまな人を巻き込み、協力し合いながら進めていく必要がある」といった意見をはじめ、一人一人がここで得た学びを自分なりの言葉で語りました。

 研修の最後には、ウガンダから参加したアグレイさんが研修員を代表して今後の抱負を述べました。アグレイさんは、本研修の関係者へ感謝の言葉を伝えるとともに、「この研修を通じて、私たちは大きな自信を得ることができました。この研修で得た学びを活かせば、私たちは国の医療を変えていくことができます。ぜひ、これから私たちがここで得たものを活かしてどのように国を変えていくのか、見守っていてください。」と力強い決意を表明しました。

本研修での学び・繋がりを大切に、研修員はこれからも途上国の医療・保健分野の改善に取り組んでいきます!

 1週間という短い中での研修でしたが、その密度は非常に濃く、研修員たちも多くの学びや気づきを得られたと思います。また、保健・医療環境の改善に取り組む別の国の仲間と出会えたことは、大きな財産になったのではないでしょうか。研修の最後には、「保健・医療を変えるためにこれからも繋がっていこう!」と研修員同士で連絡先を交換する姿も見られました。
 途上国の保健・医療の未来を担う研修員が、この研修での学びを最大限に活かし、すべての人が十分な保健・医療サービスを得られる社会づくりに貢献することを期待しています。そして、私たちも引き続き研修員の活動をサポートしていきます。