【レポート】日本のモノづくり企業と行く、カンボジア国ビジネススタディツアー(中小企業・SDGsビジネス支援事業)

カンボジア企業を10社以上訪問し、見えてきたビジネスチャンスとは?

2023年3月10日

プノンペン市内には高層ビルが立ち並んでいる

JICAカンボジア事務所、JETROプノンペン事務所との面談

   
JICA東京は、2023年2月12日(日)~18日(土)の7日間にわたって、新潟県の企業3社(金属加工業2社、アパレル業1社)と第四北越銀行と共にカンボジアにてビジネススタディツアーを実施しました。本視察は、第四北越銀行と当センターによる中小企業の海外展開支援にかかる業務連携に基づき、同銀行の協力を得て企画・実施されました。参加企業は、自社の製品技術に対するニーズを調査し、カンボジア進出の可能性と中小企業・SDGsビジネス支援事業の活用の可能性について検討しました。

※JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」は、日本の企業が開発途上国で自社の技術・製品・サービスを活かし、開発途上国の現地課題解決に貢献するビジネスモデルづくりを支援するスキームです。

   
カンボジアは「インドシナ半島のへそ」としてタイ・ラオス・ベトナムと接し、交通インフラ建設にて経済・産業の発展が見込まれています。しかし、過去の内戦の影響で平均年齢は25歳と若く、基幹産業における熟練の技術者世代が不在のため、他国からの技術支援が必要とされている状況です。

プノンペン経済特区(PPSEZ)の正門ゲート。同経済特区では日本企業を含む多くの製造工場が稼働している。

このような状況を受け、カンボジアでは一部の禁止業種を除き、外国企業からの投資に対して開放的で様々な優遇税制を設けています。これにより、外資系企業が参入する際のハードルが低く、最近では新規産業の参入により産業分野が拡大しつつあります(例:自動車組み立て、電子機器部品等)。
一方で、地場の金属加工は技術・設備が未発達な状況にあり、縫製業は輸出における基幹産業ですが、その多くが外資系企業に頼らざるを得ない状況となっています。

KURATA PEPPERの倉田社長との面談

   
視察では、JICAカンボジア事務所やJETROなど現地開発課題や産業状況に知見がある機関のほか、カンボジア日本人材開発センター(CJCC)、カンボジア元日本留学生協会(JAC)など日本とカンボジアの両国に深い関わりがある機関を訪問しました。また、現地企業や日系企業など計13社を訪問しました。
現地企業からは「優れたものづくり技術を持つ日本の企業にぜひ進出してほしい」という声があり、参加企業の製品技術を活用したアイディア出しが行われるなど、参加企業の製品や技術に対するニーズを確認することができました。
内戦後の農業の再生と住民の経済的自立を支援するため、かつて「世界一美味しい胡椒」と呼ばれたカンボジア産胡椒の栽培・加工・販売を行っているKURATA PEPPERの倉田社長からは、「質の良い胡椒を美味しく食べてもらうためには『胡椒用ミル』が重要だが、丈夫で質の良いミル刃を作れる企業が現地にはいない。優れた金属加工技術を持つ新潟企業にぜひカンボジアへ来てほしい」という声がありました。

視察ツアーを終えて

カンボジア日本人材開発センター(CJCC)では、多くの現地企業、日本企業の情報が紹介されている

現地の金属加工場の様子
同社長「とても情熱があって将来が楽しみな若者が経営する金属加工場と出会えたことも大きな収穫。今後、ぜひとも連携していきたい。」

    
【参加企業①(金属加工業)の社長】
   
カンボジアが大好きで、これまで10年以上にわたり訪問しており、自社にて技能実習生4名を受け入れて金属の熱処理加工技術を教えてきた。また、自社のカンボジア進出を視野に入れて、独自でのリサーチを続けてきた。今までの独自調査では一人で考えてモヤモヤしていたが、今回の視察で様々な関係者と対話し情報を収集したことで視界が開け、具体的な進出のイメージを持つことができた。今後、より具体的なプランでビジネス進出を検討したく、その際には中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用することを考えている。
また、CJCC実施のカンボジア人材と日本企業を繋ぐ就職フェアも活用してきたい。

現地のオゾン関連企業を訪問
同社長「オゾン関連企業と知り合えたことは嬉しい。問題は故障した時のメンテナンス。修理業者の指導なども検討したい」

KURATA PEPPER訪問
社長「カンボジアでもオーガニックへの関心が高まっており、農薬を使えない有機農家にとってオゾン水の殺菌作用が有用とのアドバイスをもらい、自社製品に対するニーズがあることを確認できた。」

    
【参加企業②(金属加工業)社長】

日頃付き合いのある第四北越銀行からの誘いを受け、最初は軽い気持ちで参加した。でも、本視察を通しJICAや他団体の取り組みを初めて知り、ビジネスに一生懸命に取り組んでいる日本の方々、現地の方々と沢山出会ったことで、大きな刺激を受け気持ちが引き締まった。当社はオゾン水発生機を開発製造しているが、オゾン水に対しプールや地方給水の浄化、有機野菜の殺菌など潜在的な需要があることを確認出来たことは収穫であった。チャンスがあることが分かったので、今後はターゲット層の選定を考えていきたい。今回のツアーは受け身で終わってしまったが、これから色々な人の話を聞いて、足元から今後のビジネスについて改めて考え直したい。

現地のアパレル業界の団体、および縫製専門の職業訓練校を視察

大規模な工場では、大量のオーダーに対応するためのハイテクなシステムが導入されていた

      
【参加企業③(肌着製造、販売)社長】

当社はフィリピンや中国に製造工場を持つが、今回の視察を通じて次に生産拠点を考えるならカンボジアも有力な候補となると感じた。視察に来たことで、首都プノンペンの発展具合にとても驚いた。縫製工場を視察して気付いたことは、こちらでは幅広い商品が望まれているということ。今回訪問した工場は、大規模な工場で新しいシステムを導入しており、外国からの大口オーダーを受けていた。シンプルかつ小中規模の生産オーダーである当社の肌着製品の製造拠点としては連携が難しいと思われるが、プノンペン市外にも縫製工場が多く存在していることが分かったので、今後は地方部でも連携先を探していきたい。

現地銀行を訪問。日本語対応可能なジャパンデスクが2名常駐しており、日本企業の進出における相談対応を行っている。

【第四北越銀行】

カンボジアはインフラや基幹産業が発展途上であること等の課題があるものの、インドシナ半島の中心に位置する地理的条件、若年層が多い人口構成、安価な人件費等、メリットも多く、日本企業の進出先として大変有望な国であると感じた。
カンボジア進出に際しては、事前調査および現地の人脈や現地関係機関との連携が特に重要であり、弊行のお客様が進出を検討する際には、今回の視察で得た情報を十分に活用し、JICAや他の関係機関とも連携して積極的に支援していきたい。

JACメンバーとの意見交換。日本とカンボジアの両国を知る現地若手人材と様々な角度から話をすることが出来た。

      
【JICA東京センター】

この視察で、カンボジアの課題、日本企業が進出する際のメリットや気を付けるべきことも見えてきました。それらを、今後、日本国内の企業の皆さまに伝え、カンボジアの課題解決と日本企業のビジネス進出に役立てていきます。