20年の歴史を持つ日本の貢献~全ての人に健康を届けるために~

「全ての人が平等に医療を受けられる」。日本では当たり前のことが、世界ではまだまだ当たり前ではありません。開発途上国にいる全ての人に健康を届けるために、JICAが行っている研修を紹介します。

2023年3月15日

日本の医療って凄い!!

JICAはSDGsゴール3の中で掲げられている「UHC」の達成に向けて様々な活動を行っています

皆さん、「UHC」という言葉を聞いたことがありますか?UHCとは、「Universal Health Coverage」の略で、「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指します。
 日本は世界の中でも長寿国として有名ですが、その理由は質の高い「UHC」を維持している点にあります。日本は戦前から保健所の設置による結核への対策や母子保健の改善など、国を上げて公衆衛生の課題に取り組んできました。1961年には国民皆保険制度を実現し、今ではいつでもどこでも、そして誰でも医療サービスが適切な価格で受けることができています。一方、世界に目を向けると、世界人口の半分である35億人もの人が、健康を守るための質の高い基礎的サービスにいまだアクセスできていないと言われています。こうした中で、日本の取り組みは世界に共有し得る経験であり、UHCに関する日本の協力は、医療サービスの提供に課題を抱えている途上国からも大きな期待が寄せられています。

約20年続く、世界のUHC達成に向けた日本の取り組み

今回紹介する研修「UHCに向けた保健衛生政策の策定及び実践-日本の成果と課題の共有」は、2002年から続く歴史の長い研修であり、国立保健医療科学院の協力を得て実施しています。自国の保健政策の意思決定に深く携わる重要な地位にいる行政官が参加しているため、研修での学びが自国の政策に直結しやすい点が大きな特徴の1つです。今回はモンゴル、ガーナ、ルワンダ、ウガンダから5名の研修員が参加しました。

研修最終日には研修員1人1人が本研修での学びを発表しました

 本研修は全5日間、オンラインで実施されました。安全で安心な医療を提供するための環境整備や新型コロナウィルスに対する政府の対応方針など様々なテーマで議論がされる中、特に保健医療・公衆衛生の重要な柱である母子保健について、自治体や地域住民が一体となって母子の健康をサポートするという日本の体制に研修員は高い関心を示していました。さらに研修員同士が自国の状況について共有し合い、そこから気づきを得る姿も多く見られ、最終日には「○○(研修員の国名)の事例から~~を学んだ」という発表が相次ぎました。加えて研修員とのディスカッションでは、各国の経験から日本側が学ぶことも多く、まさに「共創」の場となりました。研修員が今回得た学びを活かし、自国の状況に適した効果的な保健政策を策定してくれることを期待しています。
新型コロナウィルスのパンデミックを経験したことで、途上国の脆弱な医療体制に対する危機感がより一層高まっています。JICAはこれからも、全ての人が健康な生活を送ることができる世界の実現に向けて活動していきます。

モンゴルからの研修員、ガンゾリグ・ドルダゴヴァさんにインタビューしました!

最後に、本研修の参加者でモンゴル保健省の政策課に所属するガンゾリグ・ドルダゴヴァさんにインタビューしました。モンゴルが抱える保健分野の課題や本研修での学びなど、研修員の生の声をご紹介します。

モンゴルの議会で法案について議論するガンゾリグさん(中央)

1.モンゴルが直面している保健分野の課題について教えてください。
モンゴルでは、保健事業における予算の運用に課題があり、これまで健康保険基金に十分な財源が確保されていませんでした。そこで2021年から制度改革を進めています。これは、全ての人が平等に医療サービスを享受できる、まさにUHCを達成するために非常に重要な取り組みです。

2.本研修における最も大きな学びは何ですか?
日本は早い段階から政府が保健分野における政策や制度を整備し、それを実際に運用するなかで改善、発展させてきました。日本が生み出したUHCの達成に効果的な政策や制度は、多くの途上国でも実践されています。私が本研修で学んだことは、日本の政策や制度がこれまでに大きな効果を発揮することができたのは、全ての人々がこうした政策や制度を尊重し、着実に実行してきたからだということです。加えて、一部の人ではなく、全ての人が利益を享受できるような政策を立案していかなければならないということも改めて痛感しました。

研修の中でも積極的にディスカッションを行っていました

3.本研修で学んだことを活かし、これからどんなことに挑戦していきたいですか?
この研修で気づいたことは、私の母国であるモンゴルには、全ての人に医療サービスを届けるための制度が十分に備わっていないということです。よって、今後はUHCを達成している国の知見や経験を参考に、そうした国々とモンゴルとの間にあるギャップを埋めていきたいと思います。特に、お年寄りへの長期的な医療サポートや、医療従事者を守るための制度、また、長引く感染症や公衆衛生上の緊急事態に迅速に対応できるような制度の構築については早急に取り組んでいく必要があると考えています。

研修最終日に、研修員を代表して今回の学びや今後の抱負をスピーチしてくださったガンゾリグさん。今後の活躍がとても楽しみです。JICAとしても、引き続き研修員の活動をサポートしていきます!