日本の教育現場からの学びを活かして、南アフリカの教育改善を!「初等算数教育における教員の授業実践能力向上研修」

2022年12月22日

南アフリカ共和国では、経済発展を実現していくために、それを支える人材の育成が重要であるとの認識のもと、教育の改善に力を入れています。とりわけ初等教育での算数に課題を抱えており、自国の教員の能力向上のために、日本で用いられている授業実践能力向上のための手法を取り入れたいと考えていることから、JICAではその支援を行っています。
今般、同国のハウテン州及びリンポポ州において、主に学校の先生達を指導する立場で初等算数教育に携わる行政官16名を日本に招聘し、早稲田大学総合研究機構のご協力のもと、約1カ月間の「初等算数教育における教員の授業実践能力向上」に関する研修を実施しました。
この研修では、渋谷区立西原小学校の協力を得て、研修員に、日本の教育現場で採用されている授業実践能力向上のための効果的な手段である「授業研究」を体験してもらいました。その様子をご紹介したいと思います。

まずは、研究授業と授業検討会を見学

研究授業を見学する研修員

研究授業終了後の授業検討会で、日本の先生達の議論に熱心に耳を傾ける研修員

教員の授業実践能力向上の効果的な手段として、日本では「授業研究」が広く実践されています。南アフリカでは、これを取り入れて、教員の能力向上のためのツールとして活用したいと考えており、この授業研究の手法を学ぶ事が、本研修の重要な目的の1つとなっています。今回の研修では、渋谷区立西原小学校において、日本での実際の研究授業やそれに続く授業検討会の様子を見学させていただきました。

研究授業では、可愛らしい児童の様子に研修員も優しい笑顔になりましたが、同時に先生の授業の進め方、児童の反応や理解度はどうか、真剣に観察しました。また、研究授業後に行われる、授業内容改善のための教員間での協議の場である授業検討会では、日本の先生達がどのような議論を交わしているのかを聞き漏らすまいと、どの研修員も熱心に耳を傾けメモを取っていました。研究授業の随所に見られた日本の先生達の工夫や、授業検討会での先生達の議論の内容から、研修員は、授業研究を自国の教育現場に取り入れるための多くのヒントを得ることができたそうです。また日本の学校において、どのように授業研究が実践されているのかを肌で感じる大変良い機会となったようです。

次に、研究授業と授業検討会を自ら実践 

身振り手振りを交えながら、一生懸命に説明をするシルヴィア先生

西原小学校の授業研究(研究授業及び授業検討会)を見学してから2週間後、再度同校を訪問し、今度は研修員による研究授業を実施しました。授業では、6年生の児童に、「立方体ブロックを段状に積み重ねるのに必要なブロックの個数の求め方」について、研修員が準備した立方体のブロックを実際に積み重ねてみたりしながら、考えてもらいました。児童の皆さんは、英語での授業に少し戸惑いもあったかもしれませんが、授業を担当したシルヴィア先生の問いかけにも、「イエス!」、「オッケー!」などと活発に反応してくれて、楽しい授業となりました。

研修員による授業検討会の様子

研究授業の終了後には、授業検討会を実施しました。授業の目標は達成できたか、使用した教材は有効だったか、児童の反応や理解はどうだったかなどを一つ一つ振り返り、さらに改善するにはどうすればよいかについて研修員同士で議論を交わしました。研修員からは、「西原小学校の児童が、クラスメイト同士で教え合うところ、児童がお互いの意見や考えにしっかりと耳を傾けているところが見られてすばらしかった、先生の側でも、児童のそういった良いところをさらに引き出すような工夫ができるとより良かったのではないか」との感想がありました。

なお西原小学校では、折り鶴を一緒に折ったり、鼓笛隊の練習を見学させてもらうなど、算数の授業以外でも児童の皆さんと交流する機会をいただきました。皆さんに温かく迎えていただき、研修員にとって忘れられない思い出となりました。

授業研究の導入による教育現場の改善に期待!

最後に、研修員からは以下のような感想がありました。
〇先生達自身が共に学び合うという授業研究は、先生の能力向上のためのとてもユニークな手法である。これを実践することによって、先生達の自信につながり、指導計画の改善にもつながるはずだと確信した。
〇南アフリカと日本とでは文化が異なるが、取り入れられるものは全て取り入れて、教育現場を改善していきたい。
〇今回研修に参加して、授業研究の導入によって教育現場をきっと改善できるはず!と手応えを感じることができた。

研修員は日本の先生や児童から多くの刺激を受け、授業研究の導入に手応えを感じたようです。ハウテン州、リンポポ州のどちらにおいても、帰国後すぐに準備を開始し、来年中には一部の学校で、授業研究の試行を開始することを計画しています。日本で吸収した授業研究の手法を活かして、両州における教員の能力が向上することを期待しています!