JICA留学生へのインタビュー(モロッコ出身Ms.Zineb、立教大学卒業)

2022年9月、立教大学大学院にて経営学の修士号(MBA)を取得。現在、日本企業でインターンシップ中のモロッコ出身の長期研修員Zinebさんにインタビュー! コロナ禍での東京での留学生活を通じてZinebさんが感じたこと、そして、2022年FIFAワールドカップで活躍したモロッコチームへの想いも率直に語っていただきました!

2023年1月16日

ABEイニシアティブプログラムへの応募のきっかけ~来日まで

コロナ禍で苦労の末、卒業式を迎えたZinebさん。大学内でモロッコの国旗とともに記念写真を撮影しました。

氏名:KHAITER Zineb Nasrineさん
出身国:モロッコ
留学先:立教大学大学院 経営学研究科 修士課程
JICAコース:ABEイニシアティブプログラム
研修期間:2020年9月~2023年3月

私が日本に興味を持ったのは、11-12歳の時です。モロッコでは、周りの多くの人が日本のアニメなどに関心があり日本語を学んでいたため、自分も日本への興味を持つようになり日本語を学びはじめました。15歳の時(2012年)には2週間、日本での語学研修にも参加し、その頃からいつか日本に来て勉強したいと思っていました。
来日前、モロッコの大学では国際ビジネスを学びました。大学には青年海外協力隊の日本語教師がいたため、日本語は大学でも学びました。私の通っていた大学は5年制だったため、ABEイニシアティブプログラムに応募できるタイミングまで少し時間がかかりました。このように若い時から日本や日本語に馴染んできたため、自分の国モロッコと日本の橋渡しをして、両国に何か貢献したいとの想いがあり、また日本企業の経営視点も学びたかったのでABEイニシアティブプログラムに応募しました。

コロナ禍での来日、そして東京での大学院生活

【研究生活】
2020年9月、立教大学大学院経営学研究科修士課程に入学しました。私の最終研究プロジェクトは「日本企業と外国企業とのM&A事例」でした。実際には、私の来日はCOVID-19感染拡大の影響を大きく受け、最初はオンライン授業からスタートしました。ようやく来日が叶ったのは2021年6月末です。前回2012年に初めて日本に滞在した時には、語学学校での授業もとても楽しく、食事など東京での生活を楽しみ、出会った日本の方々もオープンな印象でした。しかし、コロナ禍での来日ではまるで状況が異なり、人々も閉塞的に感じ、正直なところ困惑しました。
来日が遅れたことから、来日後すぐに大学の試験期間が始まったため、アパート探しを急いで行いました。気に入ったアパートではなかったのですが、なんとか適応して生活に慣れました。なかなかクラスメートと会うこともできず、精神的にも辛かったです。
ただ、せっかく日本に来ることが出来たのだから、この経験を無駄にはしたくない、という想いで学び続け、なんとか卒業まで辿り着きました。

浴衣姿のZinebさん

   
【日本での生活】
大学院での勉強のほか、文化イベントにいくつか参加しました。一番印象的だったのは能の舞台です。私はもともと日本の文化・芸術が好きでしたし、能はとても美しく、とても感動しました。

そのほか、「まえばしカラオケワールドカップ」にも出場しました。当日、幸運にも浴衣を着付けてもらうチャンスがありました。

母国を思い出した沖縄旅行、海辺にて。

   
日本国内で印象的だったのは、沖縄です。
私は日本の他の地域とも異なる沖縄に魅了され、特に椰子の木を見て母国モロッコを思い出し、嬉しい気持ちになりました。

大学院修了後のインターンシップ~今、そしてこれからの進路について

現在、日本企業で約半年間のインターンシップに参加しています。オンラインと対面が半々の割合です。私が学んで来た経営学を活かしつ、直近では、デジタルマーケティングについて情報収集、トレンド比較などを行っています。また、他のインターン生が提案した内容の精査やアドバイスも行っています。実際の企業での活動は難しいですが、やりがいがあります。
今、インターンをしながら、帰国後の就職活動も行っています。子どもの頃からの夢、日本とモロッコを繋ぐようなお仕事をしたいと考えています。

これから日本で学ぶ長期研修員に向けたメッセージ

一つメッセージとしてお伝えできることがあるとすれば、日本に来る前にもう少し日本のことを具体的に調べておくと良いと思います。私が来日した時は、水際対策措置による隔離が必要であったり、対面でのコミュニケーションの場が少ないなど、特殊な環境だったことは確かです。しかし、例えコロナ禍ではなかったとしても、日本人や日本の文化について、印象だけではなくより詳細に理解しておくことをお薦めします。
日本と聞くと、「アニメ」や「コスプレ」を想像する人が多いと思いますが、日本人の全員がアニメのコスプレをやっている訳ではありません。日本にはもっと特別な伝統文化もありますし、日本人の特性など知っておくべきことがあります。例えば人との距離感です。自分の国では挨拶でハグをしますが、日本は挨拶でお辞儀をします(挨拶する時にも人との間で距離を取ります)。ハグをしないと自分のことを好きではないと感じたり、がっかりするかもしれませんが、そうではないのです。こうした日本ならではの文化・作法を調べておくことで、来日前と来日後のイメージのギャップが少し狭まり、日本での生活をより楽しめるようになると思います。

サッカーワールドカップについて

2022年12月のサッカーワールドカップの3位決定戦は、日本在住のモロッコ人の仲間やフランス人と一緒に観戦しました。今回モロッコチームは負けてしまい、フランスとは歴史的な背景もあるため、残念に思ったことは事実です。けれども、今回のワールドカップでは、至るところでアラブの世界が表現され、アラブ社会の考え方が多くの映像に残っていることが非常に良かったと思っています。例えば、試合後にモロッコの選手は必ず「お母さん、今までありがとう。」と言っていて、これが画面にも映し出されていました。これは、親への感謝の気持ち、特に母親を大事にするアラブの世界の考え方が表現されていると感じました。また、選手たちは自分たちのお陰ではなく、神様のお陰というイスラム教における謙虚な価値観が示されていました。映像がたくさん残っているので良かったら見てくださいね!

長期研修課 今沢 優子