1月24日「教育の国際デー」にあらためて考える、子どもたちにとっての教育の大切さ

1月24日は国連で制定された「教育の国際デー」。 すべての人が、教育を受ける権利をもっていますが、世界ではいまだに2.4億人以上(日本の人口の2倍…!)もの子どもや若者が就学の機会を得られていません。JICA東京で行っている幼児教育についての取組のご紹介を通じて、子どもたちにとっての教育の大切さについて、あらためて考える機会となればと思います。

2023年1月24日

読み書き計算よりも、もっと大事なことって・・・?

幼稚園・保育園時代を思い出すと、園庭で駆け回ったり、お絵かきや工作、おままごと遊びに夢中になったりと、たくさん遊んだ思い出がよみがえってくる方が多いのではと思います。日本ではそうした多くの遊びを通じて子どもたち自らが様々なこと(他者とのコミュニケーション、役割分担など)を主体的に学ぶことが重視されています。ですが、世界の国々を見ると、幼児教育を専門とする先生が少なく、小学校の先生が幼稚園の先生を兼任していたり、一方的に読み書きを教え込むスタイルだったりと、必ずしも幼児期の特性を踏まえた教育が行われていないのが現状です。

浜松市の幼稚園を視察するカンボジアのパートナーたち

野菜を使ったスタンプづくりの活動を体験

   
このような課題を抱えるカンボジアで、2020年9月から開始された草の根技術協力事業「幼児教育カリキュラムに基づく『遊びや環境を通した学び』」実践のための基盤構築事業」(実施団体:シャンティ国際ボランティア会)では、遊びを通じた学びの重要性理解、そしてその実践のためのサポートを行っています。

その一環として、2022年12月にカンボジアの事業パートナーである教育省幼児教育局、州教育局、教員養成校、幼稚園の関係者を日本に招へいし、約1週間の研修を行いました。本事業の協力団体である社会福祉法人・天竜厚生会(静岡県)の幼稚園・保育園の先生方が「チーム・カンボジア」を結成し、研修を全面的にサポートされ、コロナ禍の困難な時期でありながら、幼稚園の見学や保育士とのディスカッションなどを含む実り多いプログラムが実現しました。

来日したメンバー

写真付きの保育エピソード記録を作成しました

   
日本の先生方が、常に子どもに着目し、子ども主体の遊びを通じた学びを大切にしている姿勢を目の当たりにし、カンボジアのメンバーは多くを学んだ様子でした。
他方、受け入れた日本の先生方からは「カンボジアからの研修受入を通じて、保育の仕事の原点に関わる質問をいただきそれに答える中で様々な気付きを得たり、多くを学ばせてもらっています」とのコメントがあり、本事業を通じて日本・カンボジア双方が学びを深めていることがうかがえました。
   

研修での学びを活かし、世界で大活躍しています! 

JICA東京では、昨年11月~12月に「乳幼児ケアと就学前教育」研修を実施し、アフリカ・中東地域の5か国から7名の教育関係者がオンラインで参加しました。このコースでは、研修員が日本の幼児教育の特徴である子ども中心の保育や遊びを通した学びについて理解することを目指しています。

2021年度研修員のファトマさん(事務所にて)

2006年に始まった本研修は途上国からの関心が非常に高く、これまでに168名の研修員が参加してきました。彼らは研修での学びを活かし、各国の教育分野で活躍しています。2021年度研修員のファトマさん(エジプト)は、現在、特別活動を中心とした日本式教育モデルをエジプトで発展・普及させるプロジェクトにおいて、幼児教育部門のコーディネーターとして働いています。また、2018年度研修員のネリさん(マラウイ)は、ジェンダー・コミュニティ開発・社会福祉省で就学前教育を担当し、研修での学びを活かして指導ガイドラインの改訂に取り組んでいます。今回はファトマさんとネリさんの協力を得て、2022年度研修員と意見交換を行いました。お二人からは研修での学びをどのように日々の業務の中で実践しているか詳しくお話しいただき、ファトマさんからは「この研修で学んだ最も重要なことのひとつは、先生を中心とした学習ではなく、子どもたちやそのライフスキルの活性化に焦点を当てることであり、さまざまな研修で幼稚園の先生たちにそれを伝えるようにしています」とお話がありました。 本研修のコースリーダーであるお茶の水女子大学の浜野隆教授からは、お二人に対して「研修で学んだことをよく覚えて応用している」との講評がありました。日本での学びが様々な国で活かされ、世界の幼児教育の改善につながっていることを実感しました。お二人の今後の活躍がますます楽しみです。
 今後も、本研修の参加者が日本の幼児教育の経験や特徴を学ぶだけでなく、より多様な国々の研修員と意見を交わし「共創」し合うことで理解を深め、乳幼児期の子どもたちの健やかな育ちが促進されることを期待します。