【千葉県松戸市】草の根技術協力インタビュー part2

亜熱帯ドミニカ共和国で日本梨を育てる奇跡のプロジェクト!現地と日本の「農家」の違いとは!?

2023年1月30日

帰国直後にインタビュー!

2021年からJICA草の根技術協力事業でドミニカ共和国にて「日本梨をラ・クラタ地区の特産品にする産地形成プロジェクト」を行っている松戸市のインタビューpart2。
ちょうどインタビューの数日前に帰国された、ドミニカ共和国現地で実際に栽培指導を行っている出沼大輔さんと、東洋梨育種研究家の田中茂さんのお二人に、プロジェクトの現場でのお話を聞かせていただきました。

【画像】   
草の根技術協力を担当する松戸市 経済振興部 国際推進課のメンバーと、中村課長(左から2番目)、現地調整員の出沼さん(左から3番目)、日本梨専門家である田中さん(左から4番目)、通訳の米崎さん(一番右)

亜熱帯で日本梨を栽培するための「農家」との取り組み

JICA千葉デスク・木村(以下、木村):
お二人はドミニカ共和国から帰国されたばかりですよね。どのくらいの期間現地に滞在していたのですか?

田中さん:
私は定期的に短期間で現地に行って状況確認や栽培指導をしており、今回は8日間の渡航で、現地で実際に指導できたのは4日間でした。今回は行きや帰りでの飛行機でのトラブルなどが大変でした…。

出沼さん:
私は現地調整員として今年の5月から、現地に3か月滞在して一時帰国するのを繰り返し、2回目が終わったところです。現地で農地庁に所属する栽培普及員や農家さんと一緒に梨栽培や指導をしています。

木村:
現地ではどのような場所で、どのような方々と一緒にプロジェクトを進めているのですか?

農地庁コンスタンサ支所の試験場の様子

出沼さん:
ドミニカ共和国は基本的には暑い国なのですが、私たちが今後梨栽培をするラ・クラタ地区は、1,700mの高地にあって冬期は気温が0度にもなるので、現地では一番梨栽培に適している場所なのです。ラ・クラタ地区はコンスタンサという街の一部なのですが、コンスタンサに住んでいるお金持ちの農家がラ・クラタ地区に農地を持っていて、人夫(農業作業員)を雇って自分の農地で農作業をさせています。農家自身は作業をしないので、日本の「農家」とは違うスタイルですね。人夫はハイチ人が多く、彼らはとても真面目で言われたことを守って作業をします。今は4組の農家(と人夫たち)が私たちのプロジェクトで梨の木を栽培しています。松戸市とのやり取りとしては、首都サント・ドミンゴやコンスタンサの農地庁の方も関わっています。

2022年の実

木村:
農家のスタイル一つとっても、日本とは随分と違いますね。そして、ドミニカ共和国でも気温が0度になる場所があるなんて驚きです。

田中さん:
はい。ただ、そうはいっても難しい場所です。日本の梨は冬の間に葉を落とし、芽の状態で眠ることで、夏に実がなります。でも、ドミニカ共和国では自然に葉が落ちるほどの寒さが足りない。だから、人間の手で葉を落として眠らせています。また、私たちが持って行った「秋のほほえみ」と「秋ゴールド」という品種は同じ実からとれたタネでできた兄弟なので、ほとんど受粉ができません。少ない確率で梨がなってもタネができないので実が小さいのです。

木村:
そうなのですね、それでもこれまで実がなってきたのはすごいですね!今年はどうでしたか?

田中さん:
2022年は10個、実がなりました。でも、収穫できたのは1個です。私たちの農地は他の農家も出入りができてしまうので、誰かに取られてしまったようです。実がなったことは誰にも言わず、大きくなるまで葉で隠していたのに...!

梨の専門家による接ぎ木指導

木村:
そんなこともあるのですね!!次回は別の対策を取らねばならないですね。2023年は新たな取り組みもあるのでしょうか?

出沼さん:
実は、現地で中華系の梨と洋梨は見つけたので、今度は他花受粉できるはずです。また、コンスタンサの圃場には2019年に日本からドミニカ共和国に植樹した大きな梨の木があるので、さらに大きな梨の収穫が期待できます。

木村:
おお~、楽しみですね!

奇跡のメンバーによる奇跡のプロジェクト!?

木村:
ちなみに、出沼さんは元々JICA海外協力隊でドミニカ共和国に派遣されていて、松戸市の職員というわけではないそうですが、どのようにこのプロジェクトに関わり始めたのですか?

出沼さん:
私は、協力隊で野菜栽培の職種でドミニカ共和国に派遣されていたのですが、果物が特に大好きで、国内の果物についても調べたり育てたりイベントに参加したりしていました。すると、帰国後しばらくして、松戸市に関わりのある先輩隊員がこのプロジェクトのことを知り、「ドミニカ共和国、果物、と言えば…」と私に連絡してくれたのです。偶然ですが、私は松戸市の隣の市に住んでいますし、ドミニカ共和国での経験も生かせると思い、ドミニカ共和国での現地調整員としてプロジェクトに参加させていただくことにしました。隊員活動中に「果物好き」の印象を周りに与えていたことが今の取り組みに繋がっているので、奇跡ですね!

木村:
現地の農業にも精通していて、言葉もわかり、日本でも近くに住んでいる出沼さんと、このプロジェクトの出会いは本当に奇跡のようですね!

田中さん:
そうなんです。しかも、出沼さんだけでなく、今回現地に栽培指導に行くときの通訳やコーディネートをしてくれた方も、2週間前に偶然出沼さんが現地で知り合って、メンバーに参加してもらえたんです。奇跡ですよ!メンバーを見たら、草の根どころか、頑丈な雑木です!しかも、プロジェクトとしても、亜熱帯のドミニカ共和国で日本梨をならせるなんて、成功するとは思われていなかった。でも、実がなっている。これは、本当に奇跡のプロジェクトなんです!

木村:
奇跡のメンバーが亜熱帯に日本梨を栽培するという「奇跡のプロジェクト」、今後も期待大ですね!お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
続いて、part3ではドミニカ共和国側で松戸市と一緒にプロジェクトを進めている方々のお話を聞かせていただきましょう。

【画像】苗木の植樹(左から出沼さん、農地庁ルスさん、現地農家ロンドンさん、田中さん、通訳の米崎さん、カレリンさん)