「知識共創」で進化する22年度研修事業

研修員受入事業に関わる機関の方々を対象に、2年目となった遠隔研修の工夫やアイデアについて、事例紹介や意見交換も含めた説明会を4月26、28日に実施しました。

2022年5月16日

2021年度遠隔研修を振返って

 研修員受入事業に関わる機関の方々を対象とした説明会を実施し、昨年度の振り返りや実施方法の説明、実際の事例紹介とディスカッションをオンラインで行いました。2回に亘り開催した説明会には延べ約150名が参加しました。

田中所長からの挨拶

 所長の田中は「コロナ禍が続く中ではあるが、昨年度は遠隔研修を87件実施できた。遠隔研修を通じ知識共創の大切さを実感し、関係機関のご協力に感謝。今後は開発途上国の課題解決に加え国内課題の解決にも資する共創活動をより強化していきたい。」と挨拶しました。
 遠隔研修の振り返りでは、一昨年度から試行錯誤の上実施されてきた各研修の中で蓄えられた知見を踏まえ、どの分野の研修においても応用可能な好事例が共有されました。

遠隔研修の実際 これまでの反省も踏まえた様々な工夫 

 遠隔で課題別研修を実施した3機関からも好事例を紹介いただきました。

●「NIS諸国における中小企業金融を含む金融制度支援策」公益財団法人 国際金融情報センター(北村暁美氏)
 中小企業振興における国内各地で行われている取組の紹介や、海外で活躍する日系ベンチャー企業のオンライン参加等、遠隔研修の利点をフル活用した事例を紹介。遠隔研修では研修員の様子を間近で見ることができないことから、来日研修と比べ理解度や参加意欲を向上させる工夫がより必要になります。その中で関係者の綿密な役割分担による研修員へのサポート体制の充実化が重要であることを教えていただきました。

オンラインでの説明会

●「カイゼンを通じた保健医療サービスの質向上」株式会社フジタプランニング(宮本勝行氏)
 研修の一部としてウェブフォーラムを実施し、遠隔で実施せざるを得ない状況を踏まえその利点を生かす方策を考え過去の研修員の巻き込みを行った事例を紹介。現研修員にとっては、研修で得た学びの活用方法やその過程で直面しうる課題について具体的に想像できる機会になりました。過去の研修員にとっては取組内容の共有と課題解決策をディスカッションでき、加えてネットワーキングの形成にも役立つ場となったようです。研修員それぞれの職場での研修効果の発現についてきめ細やかな指導が感じられました。

●「サイバー攻撃防御演習」トレンドマイクロ株式会社サイバーセキュリティ・イノベーション研究所(安元正和氏)
 PCを用いた演習の実施や時間制限のない復習環境の提供といったオンラインの利点を生かした取組について紹介。Zoomの機能を用いてフォローが必要な研修員への個別サポートも実施し、遠隔でありながら行き届いた指導を提供いただきました。バーチャルツアーやランチセッションを持ち、遠隔研修で不足しがちなコミュニケーションを活性化させる工夫により、研修員同士のネットワークも強固なものになったと思います。

遠隔研修現場での悩みや工夫を共有

遠隔研修の取組についての紹介

 説明会後半には、「研修員の理解度の把握し、その差を埋めるための工夫」や「効果的なオンデマンド教材」といったテーマに分かれ、参加者の皆様一人一人がリソースパーソンとなったグループディスカッションを実施し、遠隔研修の現場で直面した課題について共有し改善に向けたアイデアについて意見交換を行いました。
 参加者からは、「遠隔研修では研修員の理解度の把握が難しいため、毎日振り返りセッションや確認テストを設けた」、「研修員を予めファシリテーターや質問者に任命し、セッションを実施したところ、意見交換が活発化した」、「オンデマンド講義はオンライン講義に比して研修員の満足度が低いため、オンデマンド学習、Q&Aセッションを含むリアルタイム講義の二段構えでの研修実施が有効」、「研修員との研修後も含めた関係構築のため、WhatsAppやFacebook等のSNSを積極的に活用した」など、効果的な遠隔研修の実施のための様々なアイデアや工夫が共有されました。

どのような状況下でも 魅力ある研修づくりに向けて 

 事例紹介やグループディスカッションを通じて、遠隔研修という新しい実施方法に対し、課題に直面しながらも、研修関係者の皆様と様々な工夫で乗り越えながら取り組んできたことを改めて実感しました。
 参加者からは「普段、研修員受入機関同士の交流は全くないため、他の機関はどのように実施しているのかを情報収集することができて大変有意義だった。研修事業全体の質の底上げができる大変良い機会であると思う」との声が寄せられました。
 参加者の皆様のさらによりよい遠隔研修実施に取り組もうとする強い思いが感じられた説明会でしたが、参加者の皆様によって説明会がよりよい遠隔研修実施に向けた知識共創の場となったことに感謝いたします。
 どのような状況下でも、開発途上国側の期待に応える研修を実施していくために、これまでの反省や工夫を生かしつつ、今年度も関係機関の皆様と一緒に魅力ある研修づくりに挑戦していきます。