\高校生と考える!難民の現状と多文化理解勉強会実施/

6月20日は世界難民の日。難民と多文化共生のテーマ学習を実践している高校生の思いや考えをお伝えします。

2022年6月20日

群馬県・太田市立太田高校での「難民」学習の生徒との出会い

ガーナの子どもたちをテーマにフォトランゲージを実施

高校生の立場から世界の「貧困」についてワークを用いて考えてもらいました

 本勉強会は昨年度、太田市立太田高校の「総合探求」の報告会で「難民」を調べているグループと出会ったことがきっかけで始まりました。「世界の現状を知りたい」という生徒の熱い思いがあり、学校から講座の依頼を受けて、自身のJICA海外協力隊活動先であったガーナでの貧困の実情や、JICAの難民支援活動について紹介しました。

 そもそも太田市立太田高校の生徒たちがどうして「難民」をテーマに学習していたのでしょうか?実は群馬県太田市の近くにある館林市は、日本最大級のロヒンギャ難民の集住地域なのです。講座に参加した生徒はロヒンギャの子どもたちの学習支援にも携わったこともあり、その経験が今回の「難民」テーマ学習、そしてプロジェクト実施に結び付きました。

2022年度には難民・多文化共生ワークショップをスタート! 

「喪失」の疑似体験のワークショップの様子

難民認定審査官の体験は個人の感情や見方で意見が異なる難しさも学んでいます

 生徒から「難民」についてより理解を深めたいとの希望を受け、太田市立太田高校と協働して2022年5月から7月まで計6回の「難民・多文化共生ワークショップ」を開催することとなりました。初回は国連UNHCR協会のパートナー団体である「SOAR」が公開している「いのちの持ち物けんさ」を教材として、生徒は難民の喪失感を疑似体験しました。「難民をはじめとした社会的弱者に対して、思いやりのある世界や雰囲気つくりがこれから大切になってくる」と参加生徒は感想を述べています。
 2回目からはJICA東京センタ-作成の「総合的な学習(探求)の時間のアイディア集」に収録されている「難民と多文化共生」の授業案を教材として、日本の難民認定審査官の疑似体験や難民の実際の生活を理解するための難民すごろくを用いて学習を進めました。「自分が想像しているよりも日本の難民認定が厳しい現状を知って衝撃を受けた」と感想を述べる生徒や、「難民に対して自分のできることはまずは知ることから」と学習を通してそれぞれの参加生徒が難民理解を深めていく様子が伺えました。

実際の難民生活・難民支援体験者とのオンライン交流実施

オンライン交流での記念撮影
左上:アウンティンさん 左下:柴田さん 右下:太田市立太田高校の生徒たち

 在日ビルマロヒンギャ協会・副会長のアウンティンさんと館林市国際交流協会の理事の柴田さんをお招きして、難民の歴史やロヒンギャ難民としての生活、実際の難民支援についてオンラインで代表生徒と交流を実施しました。参加者は2021年度に難民をテーマに学習した生徒や、群馬県館林市に在住しているロヒンギャの子どもの学習支援にも参加したことのある生徒で、これまでの学習に加え難民としての経験談や実際の支援の現状を生の声で聞くことで、さらに難民に関する理解が深まったようでした。
 6月20日は「世界難民の日」。あまり馴染みのない記念日かもしれませんが、参加生徒は今回の学習を通して多くの人たちに「難民」理解を促進したいと熱い思いを語りました。

「これまでのワークショップで難民認定を受けるまでの過程や国外に避難するまでを疑似体験してきた。私にとって難民の避難生活は死と隣り合わせのサバイバルのように思われる。国内、国外 関係なく死がすぐ近くに潜んでいて、難民認定されるまでに長い時間がかかり、難民認定されても母国には戻れないというような過酷な生活である。そのような過酷なサバイバルを生き抜いた 難民の方々には日常を取り戻せることを願うばかりである。」(3年 荒井優那)

「私が難民について調べてきた中で一番印象に残っていることは、難民の方と接してみて身近にいる人たちと全く変わりのないように感じたことです。難民として接することは間違いではないと思いますが、自分と同じ人間なんだということを忘れてはいけないと思いました。私達は経済的な面で支援することはできずとも、心に寄り添うことはできます。これからも学んで拡散することで彼らの笑顔のきっかけになればいいなと思います。」(3年 定方咲)

「私達が難民の方のためにできることは、世界で起きている問題について知り、正しく理解することだと思います。何が原因でどのような人たちが困っているのかを知り、自分なりの考えを深めていくことが大切ではないでしょうか。その情報を周囲の人と共有することが、問題解決への第一歩になるかもしれません。また、難民の方と接する機会を持ったときには、人種など関係なく同じ人間として寄り添う気持ちを大切にしたいです。」(3年 大川桃佳)

「難民問題解決に近づくために高校生の私達ができること、そして大切なことは、難民について知り伝えることだと思います。常に世界の動きに目を向け情報を正しく取り入れ、最初は家族や友人など身近な人に伝えることでいずれ多くの人の理解が深まると思います。私自身もこの先も知ることを止めず、できるだけ多くの人に発信し、共有していきたいです。」(3年 倉橋葵)


 本プロジェクトの担当教員である芦澤先生は今回の難民のテーマ学習をきっかけに、生徒が広く「多文化理解」を深められるようにサポートしたいと話しています。「難民」を知ることからはじめ、太田市立太田高校の生徒たちは今後の多文化共生社会をどのように考えていくのでしょうか。

皆さんも身近な多文化理解の現状を「知る」ことからはじめてみませんか?


<報告>国際協力推進員・JICA群馬デスク 宮田 峻弥