途上国の未来と発展を担うJICA留学生を北岡理事長が激励:第1回留学生合同プログラムを開催

2020年9月25日

開発途上国の未来と発展を担うリーダーの育成に向け、JICAは途上国から留学生を受け入れています。留学生たちは、大学院で保健、教育、工学、農業、公共政策など、さまざまな分野で学んでいます。そんな留学生たちに日本への理解を深めてもらい、さらに留学生間のネットワークを構築することを目的として、8月末に3日間の日程で2019年度に来日した留学生を対象にオンライン形式による合同でのプログラムが開催されました。参加した留学生約200名に向け、北岡伸一JICA理事長から、熱いエールが送られました。

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合同セッションでプレゼンテーションをする留学生代表のシンプソン・シャーリー・ビクトリア(ガーナ)さん(左)とソホーン・ソペアック(カンボジア)さん(右)

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留学生と意見交換をする北岡理事長(左)。合同セッションの進行は萱島理事(右)が務めました

「コロナ危機をチャンスに」:北岡理事長から留学生にメッセージ

「留学生の皆さんをJICAファミリーの一員として歓迎します」。プログラム冒頭の挨拶で、北岡理事長は留学生たちにそう語りかけました。「留学は個人のキャリアにとっても、母国の発展にとっても大切なことです。岩倉使節団に随行した津田梅子や金子堅太郎などの若者が、米国で学んだ経験は、日本の近代化や外交の進展に大きく貢献しました」と、海外、特に異なる文化圏で学ぶことの重要性について述べ、留学生たちを激励しました。

そして、「新型コロナウイルスの影響が続いていますが、何か心配なことがあれば私やJICA担当者にいつでも連絡してください」と留学生をねぎらったうえで、「JICAはこの危機をチャンスに変えていきます。開発途上国の病院を核とする強靭な保健医療システムを拡充し、世界の安定化のために最善を尽くしていきます」と話し、新たな決意を表しました。

留学生が母国でのコロナウイルスの影響を語る

長崎大学の研究室で実習するシンプソン・シャーリー・ビクトリアさん

続いて「ポストコロナを見据えた途上国における挑戦とJICAとの連携~JICA留学生の視点から~」をテーマとしたセッションで留学生2名が代表してプレゼンテーションを行いました。一人目は、現在、感染症対策のグローバルリーダーを目指すプログラムに参加し、長崎大学の医歯薬学総合研究科で学ぶガーナ出身のシンプソン・シャーリー・ビクトリアさんです。

シンプソンさんはJICAの協力で設立された「ガーナ野口記念医学研究所」の職員。2019年には同研究所に「先端感染症研究センター」が建設され、現在、ガーナの新型コロナ対策の最前線となっています。母国での新型コロナウイルスへの対応について、検査機材や人材の不足など課題もあるなか、今後はさらに、日本の多くの専門家と協力して感染症対策への戦略を考えていきたいと語りました。

広島大学で学ぶソホーン・ソペアックさん

また、広島大学の国際協力研究科で子どもの学びの改善のために研究するカンボジア出身のソホーン・ソペアックさんは、母国の教育現場における新型コロナウイルスの影響について述べました。各国同様、カンボジアでもオンライン授業が行われているものの、学生側のオンライン環境により、十分な学習ができていないこと、教える側もまだノウハウが足りないなどの現状を訴えます。

このような状況に対応するには、デジタル教育環境を改善し、効果的な教育が行えるようにするなどの対策が必要と語り、JICAに対しては、今後、教員の能力開発のための協力や、デジタル教育へのサポートなどを期待するとスピーチを結びました。

北岡理事長はセッションの最後に留学生に向け、「今後、途上国のトップクラスの大学に日本研究を行う“JICA Chair”を設置することを考えています。講師を派遣したり、日本に関する英語の書籍を提供したりすることで、学生の皆さんに日本の近代化の歴史や試行錯誤の経験から学んでほしいと思います」と語りました。

先輩のJICA留学生からのアドバイス

プレゼンテーションに続いて、留学生たちが日本で円滑に学んでいけるよう、臨床心理士が異文化理解のための講義を行い、ロールプレイの実施や、指導教員などとの関係性構築のためのアドバイスのほか、各種ハラスメントについても話をしました。先輩留学生3名からは(ABEイニシアティブ、公共政策トップリーダー、P-LEADS)、わからないことがあれば遠慮せずに指導教員など周りの人に相談すること、そして、学業に励みながら、積極的に日本の社会や文化、日本語学習を楽しむようアドバイスがありました。

イノベーションやリーダーシップについて学ぶ

法政大学米倉誠一郎教授

2日目のセッションでは、法政大学米倉誠一郎教授が「イノベーション」をテーマに、さまざまな格差を解消するイノベーションの可能性について講義。留学生たちはグループワークで、①日本のどのようなサービス、テクノロジー、マインドセットを母国に持ち帰りたいか、②日本がJICA留学生の出身国から学ぶべきこと、③上記①②を踏まえ、どのようなグローバルコラボレーションがなされるべきか、について熱い議論を繰り広げました。

政策研究大学院大学堀江正弘名誉教授

また、政策研究大学院大学堀江正弘名誉教授(グローバルリーダー育成センター所長)による「リーダーシップ」に関する講義では、多様なリーダーシップのスタイル、特に上級レベルのリーダーに求められる資質・能力等や、今回の新型コロナウウイルス感染拡大や災害時といった緊急事態下において、リーダーに求められる役割について講義があり、留学生からは自国や自身の所属先での業務を踏まえた多くの質問が寄せられました。

最終日にはアフリカ、中東、南アジア地域の留学生を対象に、JICAの協力プロジェクトの紹介のほか、それぞれの国を担当するJICAの職員とのネットワーク構築に向けたプログラムが実施され、3日間のセッションが終了しました。

JICAは留学生とのネットワーク構築や、留学生たちの日本理解の促進、また留学生活を順調に遅れるよう、今後も今回のような合同プログラムを開催していく予定です。