国際協力の夢に彩りを与えてくれたJICA筑波40周年に寄せて(つくば市 金井美紀さん)

2021年3月3日

国際理解教育事業に参加した現役大学生の金井さんが、国際協力に関心をもったきっかけや、JICA筑波での思い出、今後の展望について寄稿してくださいました。

金井美紀(かない みき)さん

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現役大学生の金井さん

茨城県つくば市出身。中学3年のときに社会の教科書で「パレスチナ問題」に触れ、国際問題・国際協力に関心をもつようになる。その後、高校生になり、JICA筑波の国際協力を体験するプログラムに参加。現在は日本大学生物資源科学部3年生として、開発途上国の農業、経済、環境問題などを学んでいる。また、アジアの農業指導者を養成するアジア学院(栃木県那須塩原市)でのボランティア活動や、フェアトレード製品の普及活動などに携わっている。

「ご近所」だったJICA筑波、初めて訪れたのは高校生のとき-国際協力を体験できる「非日常の空間」-

実は、私の自宅はJICA筑波から徒歩圏内と、とても近いのです。いわば「ご近所」の「ジャイカ」という組織のことは、小学生の頃から知ってはいたのですが、実際にJICA筑波を訪れたのは、高校生になってからでした。初めて筑波センターに足を踏み入れたときは、施設訪問プログラムの一環で、スタッフの方にお仕事の内容などをインタビューさせてもらったのですが、皆さんがとても親切に対応してくださったことを覚えています。その日を境に、JICA筑波でイベントや講座が開かれるたびに参加するようになりました。

「高校生国際協力実体験プログラム」(注)では、2015年9月に国連で採択された17の持続可能な開発のためのグローバル目標(Sustainable Development Goals:SDGs)について学びを深め、SDGs達成のための国際協力の1つとして「健康であること、感染症撲滅への取り組み」のテーマで、途上国での衛生問題や清潔なトイレ不足によっておこる病気などを調べて発表しました。その頃の私にとって、JICAは「憧れの存在」であり、JICA筑波は、日常生活にはない「国際協力」という興味ある世界に触れることができる「非日常な空間」であったように思います。

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世界の民族衣装が楽しめるJICA筑波の展示スペース

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金井さんが撮影したカンボジアの子どもたち

そんな私が実際に開発途上国を訪れたのは大学1年生のときです。カンボジアの観光地を訪れた際、お土産品をカゴいっぱいに持った子どもに「1枚1ドル安いよ!」と日本語で話かけられて驚きました。その子どもは、他の国から来たと思われる別の観光客を見つけて、今度は異なる言語で話しかけていました。観光客の出身国をしっかり認識し、懸命に商売をする子どもの姿が今でも忘れられないほど衝撃的でした。

途上国からの研修員に混ざって講義に参加、たくさんの学びがありました

大学の長期休暇期間中は、JICA筑波で行われている市場志向型農業振興(SHEP)(注)に関する研修の運営インターンをさせていただきました。私の仕事は、開発途上国から参加する研修員が実験・実習をするための作物の種蒔きや畑の整備が主でしたが、研修員が受講する野菜栽培に関する講義などに参加することもありました。その講義の中で、研修員が本当に多くの質問をしているのに驚き、彼らが自国の農業問題等をしっかりと認識し、改善しようとしている姿にも感銘を受けました。そして私も彼らを見習い、農作業中や様々な学びの場で今まで以上に質問をするようになりました。同時に、私自身も、開発途上国だけではなく国内の問題についても知ること、そして自分の専門性を高める必要性を痛感しました。

もうひとつ、大学生の時に参加して印象的だったプログラムは「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」(注)です。このプログラムのワークショップでは、アフリカの農村の住民になるという模擬体験をすることで、その立場の人にしか見えないもの、気づかない視点があることに気づかされました。日本人である私たちは、つい「支援する側」であると考えがちですが、国際協力に取り組むうえでとても大切な視点、様々な立場に立って考えることが重要なのだ、ということを学ぶことができました。

新型コロナウイルス感染拡大後も、茨城県内の農家を訪問する農業研修に参加させて頂きました。ここでは、新型コロナウイルスの影響で、県内で農業に従事する外国人材が不足していることをはじめ、農家や市役所、農協の方々が直面している問題をいろいろ伺いました。実際に問題に直面している方々の生の声をお伺いすることで、たくさんの新しい発見がありました。

途上国の現場の生の声を聞きたい、日本や開発途上国の生産者についての見識を深めたい、というのが、私の現在の関心ごとです。今の私にとって、JICA筑波は「憧れ」、「非日常空間」ではなく、もう少し具体的で身近な存在、「夢への気づきを与えてくれる」、「自分がどのような形で国際協力に携わりたいか、考えさせてくれる場所」へと変わってきたように思います。

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ジャガイモの耕起作業

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野菜コース:鉢上げ作業に参加

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国際協力理解講座、研修員との交流

世界を身近に感じられるJICA筑波にぜひ行ってみて!

「国際協力」なんてハードルが高い、と思ってしまう皆さんへ。
友達が助けを必要としているときは、見返りを求めるわけでもなく、当たり前のことのように手を差し伸べるのではないでしょうか。これも「協力」です。東日本大震災の時、開発途上国から日本へ寄付金や応援メッセージが寄せられたことは記憶に新しいですし、私たちの衣食住、日常生活では海外との関わりが不可欠であることもご存じだと思います。グローバル化の進展で、より一層、国と国との助け合い、「協力」が必要となってくるのではないでしょうか。「協力」を身近なこと、日常的なことと考えてもらえれば、と思います。

JICA筑波では、国際協力・交流に関する様々なイベントが企画・開催され、海外協力隊の経験者や開発途上国の研修員の生の声を聞くことができます。本やインターネットでは知り得ない新しい発見が、訪問するたびにあります。私のように、自分の夢の選択肢が広がる場所になるかもしれません。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

参考リンク