スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい! -JICA海外協力隊×スポーツ- 第3回後編:松井義美さん(ペルー・陸上競技)

2021年10月14日

「スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい!」
シニア海外協力隊として二度の活動経験のある松井さん。後編は、二度目の派遣国であるペルーでの活動から。そして、日本、トンガ、ペルーと3か国でのスポーツ指導の経験から、「スポーツの力」について、熱く語っていただきました。

ホームステイ先の家族との集合写真。中央が松井さん。

第3回:松井義美(マツイヨシミ)さん(ペルー・陸上競技)

【隊員データ】
隊員区分:シニア海外協力隊
派遣国:ペルー 職種:陸上競技
活動期間:2019年12月~2020年3月
配属先:陸上競技連盟
*世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月下旬より一時帰国となりました。

ペルーでの生活

 シニア海外協力隊として二度目に派遣された国は、南米・ペルー。日系人が多いこともあり、米、うどん、ふりかけ、海苔などは手軽に購入できるそうです。ペルー料理は、ロモ・サルタード(牛肉と野菜の炒め物)やセビーチェ(魚介類のマリネ)が一般的。クリスマスの時期にはパネトン(ケーキ)が箱積みで売られており、これがペルー人は大好きなのだそうです。
 街を歩いていると、アンデス民族(先住民)が町に来て行商をしている姿があり、貧しさを感じる一方で、首都リマでは、巨大ショッピングセンターがあり、高速道路が縦横に走っていたり、パレードをして華やかに盛り上がるイベントがあったりと、生活の豊かさが感じられる面もあり、貧富の格差に驚いたとお話いただきました。

【画像】 

ペルーでの活動

 松井さんの要請内容は、「ペルー陸上競技の強化・普及」でした。12月に派遣され、1~2月はペルー陸上競技連盟が主催する陸上アカデミーにコーチとして指導。会費を支払った方が参加できる制度で、リマ市内の6~18歳の約200名が参加。1~2月は学校では?と日本の感覚で思ってしまったのですが、季節が逆の南米では、この時期が夏休み。その間「運動をしたい」、「体力づくりをしたい」という子どもたちを対象に、月~金曜日の週5回、午前の部・午後の部とそれぞれ2時間指導していました。
 赴任早々から大規模な活動。毎日グループを変え、担当コーチの指導補助をしながら、指導法やスペイン語を覚えたそうです。

【画像】陸上アカデミーでの練習風景

 3月には、棒高跳びの女子選手(15歳)を指導することになり、基本練習や体力づくりを行っていましたが、新型コロナウイルスのためやむを得ず一時帰国となりました。(松井さんの専門は棒高跳び。なんと今回の東京オリンピック日本代表で出場していた棒高跳びの選手は、中学時代に松井さんが指導をしていたそうです。)

【画像】ペルーでナンバーワンの棒高跳びの選手の練習風景

ペルーのスポーツ事情

 サッカー王国、ペルー!ですが、スポーツも多様化しており、VIDENA(ビデナ:ナショナルトレーニングセンター)では、陸上、水泳、自転車、野球、柔道、卓球、体操競技などといったスポーツの総合施設があるのだとか。
 ペルーの陸上指導者は、国際陸上競技連盟の指導者資格を取得している方が多く、指導技術研修や講習会が開催されるなど、指導者を育成する体制も整っているそうです。
 今回の東京オリンピックで、ペルーの陸上競技選手はマラソンと競歩に出場していましたが、今後優秀な指導者が、様々な種目の選手を育成して発展していくことが楽しみですね。

【画像】整備されたVIDENAの陸上競技練習場

 3か国でスポーツ指導をされた松井さん、それぞれの民族や特性に応じたスポーツが盛んだと感じたそうです。トンガであれば、体格の大きさを活かしたラグビーや砲丸投げ。ペルーであれば粘り強さを活かしたマラソン、競歩など。やはり本来もっている力を活かしたスポーツが人気のようですね。

スポーツの力

 「スポーツには人の心を揺さぶる力があり、その力が人の原動力となって、世界を動かし、変える力につながっていく。中高大学生にとって、スポーツは青春をかけ、全力を注げるものになっており、その後の人生に大きく影響する力になる。大人にとっても、スポーツを行い、見て、応援することが、自分の生活を豊かにする原動力となる。障害や病気のある人達にも、スポーツは生きるための目標・手段となり、生命力につながっている。『スポーツの力=人を育てる力』といってもいいのではないか。『スポーツは子どもを大人にし、大人を紳士淑女にする』(デットマール・クラマー氏)という言葉の通りだ」と熱く語ってくださいました。

 中学校の教員を退職した後も、部活動指導員として選手の育成に携わっている松井さん。今後も、自分の持っている技術や指導力を発揮し、経験を子どもたちに伝えながら、陸上競技に関わる活動をしていきたいとお話いただきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 松井さんの派遣国、ペルーは再派遣に向けて進んでいるようです。今後また現地で松井さんがご活躍されることを祈願しております!

 JICA横浜では、企画展「スポーツのチカラ」を開催中。JICA横浜全体もリニューアルし、2021年6月から「楽しみながら知る」、「寛(くつろ)ぎながら見る」ことができる空間に生まれ変わりました。ぜひみなさんも足を運んでみてください!(文責:JICA横浜 仁木)

*インタビューは2021年9月9日にオンライン上で実施しました。