第2回 予算執行管理強化に関する諮問委員会(2018年7月9日開催)議事録

国際協力機構

日時

2018年7月9日(月)14:30~16:15

場所

独立行政法人 国際協力機構(JICA)本部(東京都千代田区)会議室

出席者

委員:敬称略

細溝清史、上山隆大、梶川融、座間敏如、園田雅宏、児玉尚剛(冨山和彦委員代理)

JICA

北岡理事長、越川副理事長 加藤(宏)理事、前田(徹)理事、長谷川理事 他

議事要旨

冒頭、JICAより、7月6日に財務省が公表した平成30年度予算執行調査での指摘(独立行政法人国際協力機構が行う技術協力におけるコンサルタント契約等)につき説明(平成18年度予算執行調査での指摘も併せて紹介)。
引き続き、JICAより、JICAの予算要求・編成・配賦のフローに沿って、予算執行管理強化のための課題及び新たに講じることとした改善策について説明。次に、上山委員より、予算執行管理強化のための組織・経営改善の観点から、公的資金のファンディングシステムにつき説明しつつ、JICA技術協力の予算管理に当たっての地域部と課題部の関係につき問題提起を行った。

各委員から示された主な意見は以下のとおり。

根本原因の分析

  • 予算執行管理に係るPDCAサイクルのDo、すなわち予算執行段階に関しては次の4点を分析すべき。1)新規採択のプロセス:相手国との取極めとともに、プロジェクトの内容・期間を定め、総額と予算の大まかな年度割り振りについて、他の進行中案件の今年度負担額の全体調整も考慮しながら如何に決めているのか。2)契約のプロセス:プロジェクトの実施で専門家派遣や研修等の様々な投入と契約に関し、契約総額の見積もり方法とコンサルタント選定の方法、3)実施中の契約管理:様々な事象により契約後に追加投入・変更する場合に、その規模は誰がどう決めているのか。4)契約変更に伴う予算管理:追加投入に伴う当該年度内予算や後年度負担額の変更の全体調整方法。

予算管理体制

  • JICAの資金管理の方法には公的研究資金にかかるファンディングエージェンシーと実施機関の関係に似かよった点が多い。そのような資金提供に関するシンクタンク的なやり方を今後取り入れていかないと、公的資金を扱う主体として早晩信頼を失いかねない。これは、この国の多くの公的資金を扱う機関に共通する課題でもある。例えば米国の競争的資金のファンディングエージェンシーであるNational Science Foundation(NSF)やNational Institute of Health(NIH)は、事業内容と予算の動きを同時に見るプログラムマネージャーを置き、全体方針を見て成果の上がる研究プロジェクトに資金配分されるメカニズムを持っている。
  • 個別事業の企画・実施を担う課題部に対してファンドを配分する地域部が予算の集計単位にとどまるのか、能動的に戦略的な資源配分を行う主体となるのか、位置づけの整理が重要ではないか。

予算管理手法

  • 予算管理にはPMBOK(Project Management Body of Knowledge)やEVM(Earned Value Management)を用いた手法がある。計画値(Planned Value)、実績値(Actual Cost)の他、EV(実現した価値、成果:Earned Value)をモニタリングすることで、投下コストが増えても成果が出ていない等、状況を把握し予兆を掴むことで投入を見直すことができる。受注者にきちんと報告することへのインセンティブの設計とセットで導入すると効果的。
  • 個々のプロジェクトでコストオーバーランを避けるためには、例えば中間成果品の設定等で早めに問題点を可視化し検知できる工夫が重要。
  • JICAの技術協力は、地域別のタテの予算管理と課題別のヨコの事業管理のマトリックスがあり、さらに複数年度の予算を管理する難しさがある。ERP(Enterprise Resources Planning)の導入とIT技術で人とお金の動きを即時に把握し、地域別、課題別の戦略を、資金の流れに落とし込むことが重要。

システム導入と業務標準化

  • 日本の民間企業や官公庁ではITシステム導入が必ずしも効果的に行われていない。原因は、IT戦略の不足、IT人材の不足に加え、業務標準化への覚悟が不足していること。
  • システム導入では、現行業務はパッケージになじまない、あるいはパッケージを今の業務に合わせるにはコストがかかるので、ベンダーに現場に合わせたシステムを発注するという結論になりがちだが、現場の業務をどう標準的な業務に合わせていくか、それにより現場がどう変わっていくかを検討すべき。
  • 業務をパッケージに合わせるべきで、業務標準化なしに生産性は上がらない。

収益化基準

  • 運営費交付金債務の収益化をどの程度の単位で管理するかの整理が重要。業務達成基準を適用しても、収益化の単位がプロジェクトを束にした大きなくくりで、かつ複数年度に跨ると費用進行基準と実質的に変わらず、目的積立金を留保できる独法会計のインセンティブを付与できない。他方、個々のプロジェクト単位で収益化を管理するのは実務的に困難なのか。
  • 中期目標期間の最終年度に運営費交付金債務を繰り越さず全額収益化するという建付け自体に無理があるのではないか。

コンサルタント調達方法

  • 調達に関し、政府はコスト低下と新規参入を促すために一般競争入札の導入を推進してきたが、例えばシステム開発のように経験・知見を要する事業では一概に一般競争入札が適当とは必ずしも言えない。一般競争入札になじむもの、そうでないものの個別判断が重要。

以上