第3回 予算執行管理強化に関する諮問委員会(2018年7月23日開催)議事録

国際協力機構

日時

2018年7月23日(月)13:00~15:15

場所

独立行政法人 国際協力機構(JICA)本部(東京都千代田区)会議室

出席者

委員:敬称略

細溝清史、上山隆大、梶川融、座間敏如、園田雅宏、冨山和彦

JICA

北岡理事長、越川副理事長、加藤(宏)理事、長谷川理事 他

議事要旨

JICAより、運営費交付金の予算執行段階のプロセス及び予算管理状況を説明。次に、冨山委員より、予算執行管理強化のための組織・経営改善の観点から、非営利組織におけるマネジメントコントロールについて説明し、統制管理の強化だけではなく、担当者が自律的に予算管理できる仕組み整備と動機づけの重要性を提案した。

各委員から示された主な意見は以下のとおり。

投入と成果のモニタリング

  • 予算執行段階において、計画額の変動要因として、達成目標自体の変更に伴う投入量の変動と、達成目標到達のために必要な投入量の変動の二つがある。非営利組織の場合、達成目標が定性的なので必要な投入量は測り難いことが多いが、計画変更を判断する際には、これら二つの要因を掴むという意識が必要。
  • 追加投入すべきか、あるいは達成目標を下げてプロジェクトを打ち切るかといった経営判断には、プロジェクトの達成度と支出の関係が分かる情報が必要。
  • 技術協力プロジェクトの場合は、アウトプットはある程度定量的に計測できるとしても、達成目標への到達度(アウトカム)の計測は難しい。成果ベースのKPI(Key Performance Indicator)的な指標はどのように設定・モニタリングし、追加投入に係る意思決定に活用しているのか。
  • 官公庁のプロジェクトでも、予算要求段階では格好の良い達成目標を掲げていたものが、評価段階ではモニタリングの計測が難しいなどの理由をつけて実際の活動成果が良く分からないままにされるケースがある。JICAの場合は、事業事前評価表にあるKPIやKGIをしっかり書き込み、実施している活動が当初の達成目標に合致しているかをモニタリングすべき。
  • 最終成果が、当初の達成目標のどこにつながっているものかを明確にすべき。最初の計画から最後の成果まできちんと追いかけることで、公的資金の使い方を常に効率化していくことが求められる。
  • 達成目標に対する投入の管理・変更は、現場を知らなければ意思決定できないものである。現行の予算管理フローでは地域部が予算統制するとなっているが、達成度は主管部の中で考えているのか。

複数年度に跨る予算管理

  • 要望調査段階での複数年度に跨る事業総額については、その後の予算執行段階で、当該年度の予算執行管理に加え、後年度負担を含めた総額の修正・管理をしっかり行うことが重要。

JICAの組織経営の特性

  • JICAの事業は、非営利事業としての特性から成果が定性的で把握が難しいうえ、民間企業のように利益の最大化が目的にもならないことから、難易度の高い予算管理と言える。
  • プロジェクトの性質が大きく異なり、プロジェクト数が膨大なもとでは、管理限界から直属の上司や非執行部門による牽制に頼るのは困難。

自律的な予算管理

  • 予算執行管理を強化するためには、統制的なコントロールには限界があり、組織文化や人事評価などによるインセンティブ付け等により、自律的な予算管理の動機付けと仕組みを整備する必要がある。
  • 動機づけの例として、コンピテンシー評価(行動評価)における予算管理能力の重視、全社・部門業績評価における予算管理実績の重視等が挙げられる。現在の人事評価は担当案件総体として評価されているが、プロジェクト1件ずつ評価することも大切。予算管理を含む総合能力が高い職員に対する重要プロジェクトの割り当ても動機付けになる。
  • 予算管理のような「組織の能力」の強化に係る問題は、組織図を変更しただけで一朝一夕に改善するものではない。社員一人一人の行動様式を変えるためには、5年、10年続け、一貫した評価基準を示し、その基準に従うことで、より昇進できるという期待を醸成することが、継続的・持続的な組織文化・行動様式につながる。
  • 予算編成・配分時の積み上げが甘く、また、予算と実行の乖離といった事は、独立行政法人化に伴うもの。独法制度の良いところは活かしつつも、国の予算を扱う以上、締めるべきところは締めてきちんと管理すべき。組織文化を変えるには時間がかかるが、予算管理の巧拙を人事評価に反映する等の方策を検討する必要がある。

根本原因の分析

  • 次回会合では、予算執行管理に係るPDCAサイクルのCheck、すなわち予算の執行状況の評価に関して次の点を分析すべき。1)プロジェクトの開始~終了、その後に至るまでの各段階での評価がどのように行われ、どのような判断が下されるのか、2)中期計画に係る評価ではプロジェクト群としてどのように評価しているのか。

以上